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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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四百

時間になり、リラとシィスルは、隣のベルフルールに戻っていった。失敗した海苔巻きをいくつか持って帰っていったので、昼ご飯に食べるのだろう。


その後、マリーゴールドと午前の用意を終わらせ、お昼ご飯の準備をしていると、ユメとソウが帰ってきた。


「ただいまにゃ!海苔巻き喜んでたにゃ!」

「ただいまー。王宮に納品行ってきたよ」

「おかえりなさーい。もう少しでご飯になるわ」


今日のお昼ご飯は、巻きに失敗した太巻きと、鶏のさっぱり煮と切り昆布のサラダだ。

マーレイとイリスもちょうど来たので、皆で食べ始めた。


マリーゴールドが、切り昆布のサラダを見つめ、ユリに質問してきた。


「ユリ様、このサラダのようなものは、何でございますか?」

出汁(だし)に使う昆布はわかる?」

「はい」

「あれは乾燥させてあるけど、これは乾燥してない昆布を茹でて切ったものよ。乗ってるのはツナマヨ。(まぐろ)のオイル煮にマヨネーズを和えたものね。元の国に、生昆布を茹でて切ってあるのが売っていてね。それをよく洗って、食べやすい長さに切ってあるだけよ」

「少し変わっていますが、歯応えもあってとても美味しいと思います」

「お店で出すには、説明が面倒そうだから出さないけどね」

「確かに、面倒そうですね」


相手が理解できないものを説明するのは本当に大変なのだ。ましてや材料が手に入り(にく)いものは、殊更(ことさら)(むずか)しい。


「リラさんは食べたことがありますか?」

「無いと思うわよ。切り昆布は向こうで買って来たからね。でも、グンジョーなら、材料を用意できるかもしれないわね」


その後、マリーゴールドは何かを考え込んでいるようだった。


「休憩が終わったら、今日は、節分ということで、全ての食べていくお客さんに、切った太巻きをつけます」

「豆まきはしないのにゃ?」

「豆まきは、お店が終わってからしようと思います」


ユリは店に居ると、どうしても何かしてしまうので、休憩時間は部屋に引き上げることに、最近はしている。少し横になり、体を休めた。



開店前に戻ると、既に全員いて、外おやつ用の温かいほうじ茶を用意してくれていた。

ユリは、午前中に作った外おやつ用の、半分に切った細巻きの海苔巻きを持って、夏板と一緒に置いてきた。細巻きの中身は、ツナマヨと、鶏肉のそぼろで、好きな方を食べられるように、透明な蓋のケースに入れ、分けて置いてある。


「さあ、皆さん頑張ってください」


無告知のサービスが付くときは、質問の嵐になるが、イリスによると「ユリ様の故郷の風習だそうです」という言葉で、大体納得してもらえるそうで、あとは中身の質問くらいになるらしい。


一度帰った客が再度訪ねてきて、外おやつについて聞きに来たらしく、イリスがユリに助けを求めに来た。


「ユリ様、外おやつの中身や販売についての質問をされているお客様がいらっしゃいまして」

「あー、私が行くわ。マリーゴールドちゃん、こっち、ちょっとよろしくね」

「はい」


店に顔を出すと、やはり騒がれたが、質問している相手が非常に興奮して話しているため、周りはむしろ冷静に見守っているようだった。


「ハナノ様、外の細いおにぎり?でしたか、あれを販売する予定は無いのですか? 注文は受け付けないのですか? 私の口に入るにはどうしたらよろしいですか? どうしても食べたいのです! どうにかなりませんか?」

「食べてはいないのですか?」

「はい。つれてきた御者が、とても美味しかったと話しておりまして、他の家の従者が、ツナマヨと話していました。ツナマヨと言えば、幻の『黒猫様のお弁当』のおにぎりの名前、是非、私も食してみたいのです!!」


捲し立てる相手に圧倒されたが、ユリは気を取り直した。


「まず先に、外のおやつは『海苔巻き』です。中身が、ツナマヨと鶏肉のそぼろです。食べたいのは、ツナマヨの方ですね。お一人だけ差し上げると不公平になりますので、お一つ200(スター)でお売りしましょう。それでよろしいですか?」

「はい!! ハナノ様、ありがとうございます!!!」


その後、予想の範疇ではあるが、持ち帰りでツナマヨ海苔巻きの注文が、あとをたたないのだった。


「マリーゴールドちゃん、リラちゃんは、ツナマヨ出してないの?」

「リラさんのお話で伺っただけでございますが、パープル侯爵邸で作ってみたときは、オイル煮に失敗したそうで、先頃教わった作り方でお店で作りましたが、手間と価格で、家内用にしか使っていないようでございます」

「そうなのね。ありがとう。リラちゃんに材料を提供したら、売り出してくれるかしら?」

「おそらく、喜ぶと思います」


ユリは、業務用ミキサーで作るマヨネーズと、ツナ缶を用意するつもりでいた。


14時過ぎ、リラがフラッと現れた。ベルフルールの休み時間なのだろう。


「ユリ様、ツナマヨ巻き、持ち帰り用を作ってるんですか?」

「どうしても食べたいと言い出した人がいてね。作ることになったわ」

「ベルフルールでも、ツナマヨおにぎりを作れないか聞かれたことがありましたが、手間の多さに断りました。オイル煮もマヨネーズも手間がかかって、しかも入荷が不定期で、売るほど作れませんでした」


リラは、ユリに交渉しようと思って来たのだった。


「あ、その事なんだけどね。うちでマヨネーズ作って、缶詰のツナ使って、リラちゃんの所でも出さない?」

「え! 良いのですか?」

「食事系だから、ベルフルールでも出したら良いと思うのよ」

「ありがとうございます!!!」

「形状は、おにぎりでも海苔巻きでもサラダに使っても良いわよ。どうせ毎日来てるんだから、朝、ミキサーでマヨネーズ作って行ったら良いと思うわ」

「早速今作っても良いですか?」

「私は構わないけど、休み時間じゃないの?」

「頑張るのはミキサーですから!」


リラは早速、卓上ミキサーでマヨネーズを作り、ユリからツナ缶を渡され、ホクホク顔で帰っていった。頼もうと思っていたのに、ユリから先に言われたのだ、それは笑顔にもなる。


「マリーゴールドちゃん、お店でマヨネーズは作ってないの?」

「サラダのドレッシング用に作っておりますが、大量に作るのはやはり無理がございますので、冬箱に保存して2~3日使っております」


冬箱と言えば、魔力は増えたのかしら?


「魔力は増えた?」

「はい! 大分増えたと思います! 真冬箱に充填しても、かなり楽になりました!」

「それはよかったわ」


真冬箱は最低でも300pは必要なので、全く増強していない人では、フル充填できないのだ。



ユメに黒猫クッキーを頼み、キボウに世界樹様のクッキーの時送りを頼み、予定の仕事はなんとか終わったが、結局、海苔の在庫がなくなるまで、ユリとマリーゴールドは、ツナマヨ巻きを作り続けたのだった。


「海苔が無くなったから海苔巻き売り切れだわ」

「海苔巻き専門店の如く、たくさん巻きました」


本当に疲れたと二人で息を吐いた。


「リラちゃんは、どうするのかしら?」

「おにぎりだと思います」


マリーゴールドが即答した。


「なぜ?」

「この、巻く器具がございませんので」

「え!ベルフルールに巻き()無いの!?」


どうやらリラは、初めて作った巻物が、国旗の細工巻きだったらしい。驚愕である。


「夕飯、海苔無いからちらし寿司にしましょうか」

「恵方巻き、食べないのにゃ?」

「海苔使いきってしまったわ」

「無いのが海苔だけなら、海苔、買ってこようか?」


ソウが海苔を買ってきてくれると言うので頼んだ。もうお店の分は作らないので、おかずの用意を始めた。肉じゃがと、ほうれん草の胡麻(ごま)()えの予定だ。


肉じゃがは、ほぼ煮えているので、とろ火にしてある。ほうれん草を茹で、冷水にとり、向きを揃えてからしっかり絞り、水気を切って、揃えた長さに切り、胡麻和えにした。


戻ってきたソウから海苔を受け取り、薔薇巻きなどの海鮮巻きを作り、綺麗にカットした。


店内の客が全て帰り、外おやつの残りは最後の客の従者に渡した。3つしか残っていなかったので、外おやつの作った数もちょうどよかったようだ。


恵方巻きは、食べる前に黙って願い事を唱え、それから皆で食べた。今年の恵方?方向音痴のユリにわかるはずもない。


「豆まきするにゃー」

「炒り大豆用意してあるわよ」


ユリは、升に入った炒り大豆をユメに渡した。


「キボーは? キボーは?」

「はい。キボウ君の分よ」


キボウにも升に入った炒り大豆を渡した。

ユメは「鬼は外、福は内」と、豆を投げていたけど、キボウはそのまま豆を食べていた。


ソウが「あーあ」と言って、嘆いていたけど、ユリとマリーゴールドは笑っていた。


ユメは階段を上がって2階にも撒くらしいので、マリーゴールドと、マーレイとイリスが、帰っていった。



「なあ、ユメ。ユメは何粒食べるんだ?」

「にゃ!?」

「あら、ユメちゃん、何粒食べるの?」


ユメが困っていると、キボウがユリに尋ねてきた。


「なーにー?」

「節分の炒り大豆はね、年の数だけ食べるものなのよ」


するとキボウは升を見て、ユリに訴えた。


「たりなーい」

「キボウ君、何粒必要? 何歳なの?」

「よんひゃくこー! 4さい!」

「ぶは!」「え!」「やっぱりにゃ」


「飲んでもいない飲み物を吹き出したよ!」

「私はユメとして1歳にゃ!」

「私も女王として1歳くらいね!」

「あ、俺も生まれ変わって1歳くらいだな!」


結局、撒いた炒り大豆はユリが拾い集め、炒り直してからミルミキサーで きな粉にし、きな粉棒を作った。

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