合鍵
ソウの心変わり
転移でホシミ家に戻ると、珍しく養父母が来ていた。
この家はほぼ俺専用で、鍵こそ持ってはいるが、養父母は引っ越して以降この家に来るのはまれである。
「ソウ、元気でやってるか?」
「ちゃんと食べてるの?」
「元気でやってるし、ユリの作った食事だから大丈夫だよ!それより、迷惑かけてごめん」
「ユリちゃんも頑張ってるのね。よろしく伝えてね」
「うん!お袋とユリ仲良かったもんな」
「お前が元気ならこっちは心配しなくて良いぞ」
「おやじ、ツキミの家からなんか言われたら、勘当した息子など知らん。とか言って無視してくれな」
「お前を勘当などせんよ。まあ、我々は大丈夫だから、お前はお前のことを頑張りなさい」
「うん!ありがとう!おやじ、お袋、俺を引き取ってくれて本当にありがとう」
「なんだ、今さらそんなこと、お前は俺たちの子供だよ」
「そうよ。あなたは私達の子供よ」
「うん。ありがとう。俺、ホシミの家の子で、本当によかった」
ピンポーン
インターフォンが鳴る。
「おそらく、カエン様だろう」
「カエンのやつ、まだ来てるのか!?」
「我々の家に行って居なかったから、こちらに来たのだろう」
「おやじ達の家にも来るのか?」
「そうね。カエン様はお立場が難しいみたいね」
「そうなのか?カエンは長を次いで・・・ちょっと見てくる」
玄関を開けると、肩を落とし歩いていくカエンの後ろ姿が見えた。
「カエン!」
「お兄様!!」
ばっと振り返り叫ぶと、カエンは走ってきた。
「こちらにいらしていたのですね!」
「お前、大変なのか?」
「はい?」
「とりあえず家に入ろうか」
「はい」
カエンから色々聞いたところ、現在屋敷には、俺の産みの母親や父親は居らず、本家筋の長老どもがのさばっているらしい。
カエンの母親と異父弟の父親がいるが、力がないので長老どもを退けられず、異父弟は両親揃っているのに、誰も異父弟を守れないらしい。
カエンは異父弟の事ばかりで、自分が大変だとは一言も言わなかった。
俺はカエンの我儘だとばかり決めつけていたが、違ったらしい。
俺は合鍵をひとつカエンに渡した。
「お兄様これは?」
「お前を助けてはやれないが、辛いときは弟をつれてここに来ても良いぞ。俺は居ないことの方が多いけど、逃げる場所くらいは必要だろう」
「お兄様・・・」
「ホシミの両親には迷惑かけないでくれ」
「わかりました。お兄様ありがとうございます」
カエンは少し落ち着いたようで、おとなしく帰っていった。
俺は養父母にカエンのことを聞いた。
カエンの母親はカエンを守ってはくれないらしい。かといって、弟を守る力もなく、ただカエンに無理ばかり言っているそうだ。
俺には素晴らしいホシミの両親がいるが、カエンにはマトモな片親すらいないのか。
次会ったら少しは親切にしてやるかな。




