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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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卒倒

「あ!領主様御一行がお見えだ!」


どこかの店の店員が叫ぶと、見渡す限りの店員や客たちが、頭を下げ、手を低く合わせ、中腰のような低い姿勢をとった。

ソウとユメが、慌ててユリのそばに来た。


「ユリ、一応結界張って」

「はーい」


立ったままのユリを心配して、店員の男の子が声をかけてきた。


「お嬢さん、腰をおとして、お貴族様の顔を見たらダメだよ!」

「ありがとう。大丈夫よ」


ぞろぞろ連なっていた一人が近くまで来た。


「そこの女、なぜ立ったままでいる、領主様のお成りであるぞ!」


領主本人らしき人物も、こちらにやって来た。


「何をもめている?」

「この者が、わきまえずに居りますので、」


説明をした供の者を制止し、領主はユリを覗き込んだ。


「不思議な服のお嬢さん、ん? どこかで?」

「私に会ったことがあるなら、2週間くらい前かしらね」


ユリの事が分からなくても、ユリの横のテントの影に立っているソウに、気がついたらしい。


「ソウ・ホシミ様!? ま、さ、か、ユリ・ハナノ様?」

「はい。ユリ・ハナノです」

「お前たち、頭が高い、皆の者、控えなさい!」


慌てて、貴族たちが片ひざを立て、頭を下げて(ひざまづ)いた。


「特に控えなくて構いません。公式訪問ではないので、働く人の妨げになることはしないでください」

「かしこまりました」

「私に構わず、ご自分のお仕事を続けてください」

「かしこまりました。御前(ごぜん)、失礼致します」


領主一行が通りすぎると、ユリに助言をした店員が尋ねてきた。


「お嬢さん、いったい何者なんだい?」

「本職は、パープル領で、アルストロメリアという、軽食とおやつのお店を経営しています。それと、たまに女王の仕事もします」

「え? 女王陛下!?」


慌てて回りの者が、領主一行がしたように(ひざまづ)こうとするのを、ユリは止めた。


「かしこまらないでください。女王は、お城にいる時と、女王の服を着ている時だけです」


おずおずと顔を上げ、店主である年配の男性が、遠慮ぎみに質問してきた。


「あの、もしや、陶器の木は、女王陛下御用達(ごようたし)でございますか?」


古ぼけた置物ではなく、新しいものに取り替えられないかと店主は質問したのだ。


「あー、さっきの陶器の木の置物は、世界樹様の所に持って行ったと思うわ」

「は? ・・・え?・・・あの汚れた置物を、世界樹様に?」

「ええ、幼木(ようぼく)のキボウ君が持って行くと言っていたので」


バタンと、話していた店の店主が白目をむいて倒れてしまった。許容範囲を越えてしまったようだ。


ユリが慌てて起こそうとしたが、ユリは小さいので大柄な男性を起こすのは叶わず、ソウが回りの人を呼んで、数人で、寝かせられる場所まで運んだ。休憩用のテントらしい。



「ユメちゃん、私が魔力を注いだら起きるかしら?」

「気を失っただけだと思うにゃ。起きてどこか痛いと言ったら治すと良いにゃ」

「うん」


ユリは心配で、そのままテントに待っていた。


「あの、オヤジさんは大丈夫だと思いますので、どうかお気になさらないでください」

「もう少しだけ」


店員の男の子が、気を使っ声をかけてきたが、ユリは残っていた。


少しすると、店主の年配の男性は気がついたらしく、目の前の店員の男の子を見て話し始めた。


「イヤー、エライ夢見たよ! 女王様と、世界樹様の御使(みつか)い様が、うちの店に買い物に来たんだよ!」

「オヤジさん、それ夢じゃなくて」

「え?」


ユリが、反対側から声をかける。


「あのー、どこか痛いところはありませんか?」

「え? ・・・女王陛下!?」


振り返り、唖然としていた。


「ユリ・ハナノです」

「ハナノ様と呼ぶと良いにゃ」


ユメが助言した。


「は、は、はい。ハ、ハ、ハナノ様!」

「驚かせるつもりだったわけではないんですが、倒れたときに、どこか打ちませんでしたか?」

「え? あ、そういえば、頭の後ろが」


後頭部がコブになっていたため、横向きに寝かされていた。そのため、反対側のユリに気がつかなかったのだ。


「少しさわります」


ユリは頭の後ろにそっと触れ、治るように願いながら魔力を流した。


「あれ? 痛みが消えた!」

「怪我が治って良かったです」

「確か、新女王様は聖女様だったって、噂で聞いたけど、本当だったんだ・・・」


店員の男の子が呟いた。


「ワシのために、聖女様の治療を!?」

「ユリ、そろそろ行くよ」

「はーい。痛みが出るようだったら連絡してくださいねー」


テントを出るとき、後ろから声が聞こえた。


「ハナノ様、どうもありがとうございます!!」

「はーい」


「ユリ、お腹すいたにゃ」

「ソウ、どこか食べる場所ある?」

「少し離れた温室に行くか」


ソウにつかまって移動し、花を育てている温室に来た。ソウによると、王家の持ち物らしく、勝手に入っても問題ないらしい。

中にはテーブルと椅子があり、お茶を楽しめるようになっていた。


「こんな所が有ったのにゃ」


南国系の花がたくさん咲いている。


「雨でも花が見たい時に良いわね」

「この奥には池があって、睡蓮(スイレン)が咲いていると思うよ」

「食べたら、見に行きましょ」


ユリがサンドイッチを並べると、ご飯以外のお弁当にユメが驚いていた。


「キボウはどうするにゃ?」

「キボウ君には、2人前を渡してあるわ」


用意したのは、食べやすいようにロール状のサンドイッチだ。種類は、ツナマヨ、玉子、ハムとキュウリ、ハムとチーズ、ブルーベリージャムだ。


「どうぞ、ロールイッチよ」

「パンの海苔巻きみたいにゃ!」

「具がこぼれなくて食べやすいな」

「少し多めに作ったから、好きなだけ食べてね」


ユメにものすごく好評で、ユリは、ユメちゃんの時代にはなかったのかしら? と少し不思議に思っていた。


食べ終わったあとは、温室を見学し、家に帰ってきた。

毎日大量の誤字報告、とてもありがたく思っております。

今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

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