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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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窯元

2月になった。

窯元から手紙が来て、イリスが作った分が出来上がったから、取りに来てほしいと書いてあった。


「明日、水曜日(みずのひ)でお休みだから、明日取りに行きましょう!」

「俺が今日取りに行って来ても良いけど、一緒に行く?」

「明日、みんなで行きましょう」



昨日の昼、手紙をもらってそんな話をしたのだ。ちょっとしたピクニック気分で、窯元まで出掛けることにした。

珍しく、サンドイッチのお弁当を作り、ユリが作ったお揃いのカーデガンを着て、ユメが起きてから出発した。


転移すると、先月来たときよりも賑わっていた。何かあるのかとキョロキョロしてみると、掘り出し物市的なものを開催しているようだ。


「こんにちは!ホシミです」

「これはこれは、ホシミ様! よくお越しくださいました。こちらへどうぞ」


ソウが顔見知りらしい人に声をかけると、工房長が待つエリアに案内してくれた。歩いている間キョロキョロ辺りを見ていたが、色々な工房のより集まりのようで、殆どの店が青空市状態だった。


「帰りに少し見たいにゃ」

「みたーい、みたーい」

「よし、帰りに見て回るか」


ユメとキボウが喜んでいるのがわかった。


「ユメちゃん、何か良さそうなものがあったら、先に見に行った方が良いわよ?」

「なら、みんなは先に見に行ってくると良いよ」


ソウが一人で受け取りに行くと言って、ユメとキボウとは、その場で別れた。


「私はソウについて行くわ」

「ユリ、ありがとう」


更に少し歩き、案内の人が「こちらでお待ちください」と言った場所で待っていると、工房長が、一人で現れた。先ほどの案内人と持ち場を交代してきたらしい。


「ホシミ様、お越しくださりありがとうございます。良い人材が多いのですな。羨ましい限りです」

「絵を描いた二人は、母子(おやこ)なんだよ」


工房長は、リラとイリスをとても誉めていた。

ユリは、身内を誉められたことがとても嬉しくて、後でリラとイリスをきちんと誉めようと考えていた。


焼き物が置いてある場所まで移動し、マグカップ5つと、絵皿を受け取った。マグカップは、野菜、ドングリ、花の多い鈴蘭のような植物、アヤメ、そして、マーレイの似顔絵だった。皿には、リラ、マーレイ、イリス、レギュム、クララ、グラン、シィスル、マリーゴールドの似顔絵が描いてあった。


「へえ、クララって、花の多い鈴蘭みたいな感じなんだな」

「間違って食べると、クラクラするほど苦いからクララって言うらしいわよ。基本は毒草ね」

「日本語なんだ、その名前!」


受け取ったカップや皿をソウの鞄にしまった。


「是非とも、またお越しくださいな」

「また何か作りに来るよ!」

「お待ちしておりますでな」


ユリとソウは、ユメとキボウを探すことにした。


『ユリです、どの辺にいますか?』

『ユメにゃ!さっきの別れたそばにいるにゃ!』


「ソウ、ユメちゃんに聞いたら、さっき別れたそばにいるそうよ」

「以心伝心で聞いたのか。人が多いから離れるなよ?」

「はーい」


ユリは、もしも迷子になったら、そのまま家に帰る気でいた。この人混みで誰かを探すなど、背の低いユリには無理である。


「ユリ、手を繋ごう」

「う、うん」


ソウに手を引かれ、ユメとキボウがいるらしい場所に戻ってきた。


「ユメ、見当たらないな」

「あ!あそこにいるわ! キボウ君の帽子が見えるわ!」


チョロチョロと動き回るキボウを、ユメが疲れたように言い聞かせているようだった。

すぐにそばまで歩き、合流した。


「ユメ、お待たせ」

「ソウ、もう受け取ったのにゃ?」


「キボー、ほしいー!」

「キボウ君、何か欲しいの?」

「ユリー、きー、キボー、ほしいー」


キボウが指した先には、陶器でできた、キボウと変わらぬサイズの木の形のオブジェがあった。


「キボウ君、買っても良いけど、どこに置くの?」

「かみさまー!」

「あー、持って行くのね? なら、私が買ってくるわ」


ユリは店に行き、店員の男の子に声をかけた。


「こちらの『木』は、おいくらですか?」

「あ、それ、売り物じゃないんです」

「そうなのですか。注文したら、作ることができますか?」

「ちょっと聞いてきます」


店員は、臨時の店番だったようで、誰かに聞きに行ってしまった。

店員がいなくなり、キボウは心配らしく、珍しく弱気になってユリに聞いてきた。


「ユリー、かえない?」

「まだ分からないわ。買えると良いわね」


店員が、年配の男性をつれ戻ってきた。この店の店主らしい。


「あー、店の看板を買いたいってのはおまえさんか?」

「はい。欲しがっているのは、このキボウ君ですが、お支払は私がします」

「売るのは構わないんだが、これは、かなり汚れているし、古いから、動かせないんだよ」

「配送はこちらでしますので、売っていただけるだけで構いません」

「それで良いなら、1万(スター)で良いよ」

「どうもありがとうございます」


キボウが心配そうにユリを見ていた。


「ユリー?」

「買えたわよ。良かったわね」

「ユリ、ありがとー! キボー、ありがとしたー!」

「キボウ君、届けたら、家に直接帰ってきてね」

「わかったー」


ユリがお弁当のサンドイッチをキボウに分けると、受け取ったキボウがニコニコと木のオブジェの周りを回っていた。


「売っといて何だけど、どうやって運ぶつもりなんだい?」

「魔法で。うふふ」

「え?」


キボウが、木のオブジェと共に、転移で消えた。


「たまげたー! 魔法は昔話だけだと思っとったわ!」

「近いうちに、みんなが簡単な魔法を使えるようになりますよ。うふふ」

「そうなのか?」


そんな話をしていると、対面から、伴をぞろぞろ引き連れた貴族らしい男性が歩いてきた。

毎日大量の誤字脱字報告、誠にありがとうございます。

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