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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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送迎

登場すると、この国ではあまり見たことのない民族衣装に、みんなの感嘆の声が漏れる。画家一同が、一心不乱に絵を描いていく。

気を使って、挨拶の後も少し長く立ったまま留まったが、一番速描きらしいフードの画家が描き上げたようなので、席につくことにした。


再び挨拶が始まった。最初の頃よりだいぶ短い持ち時間らしく、お祝いのみを述べ、離れてから感激して震えている人や、おののいている人が多かった。


ちらっと聞こえた声のいくつかに、「ホシミ様の笑顔を初めて見た」というのがあり、ユリも心配したが、同じく聞こえたらしい、実母の 月見エリカが心配しているようだった。ユリの前では比較的何時も笑顔なので、そんなにも何時も怖いと思われているソウが気の毒になり、大丈夫かしらとソウを見てしまった。


「ユリ、どうしたの?」

「何でもないわ。ソウは幸せ?」

「勿論!!」


更に輝かしい笑顔になったソウに、挨拶に来ていた男性陣はうろたえ、給仕やメイドを含む女性たちは失神しかけていた。

この後、イトウとサエキが販売した写真もあり、非公式のソウのファンクラブが結成されるのだった。


予定されていた挨拶が終了し、パウローニア国王からのお祝いの言葉で、「披露宴ぽいもの」は、終了した。


メイプルから、王族代表として書類を渡された。

なんだろうとパラパラと見ると、献上品の一覧だった。食品や花などの生物は、時を止めるタンスモドキにしまってあるらしい。参加者全員が、地元の名産品を持ってきているそうで、時間があるときに引き取りに来てほしいと頼まれた。


メイプルはソウに話があるらしく、みんなから少し離れて内緒話をしていた。


「ソウ、結局、何て言って射止めたんだ?」

「聞いてないのか。・・・ユリから言われた」

「え!! あんなに相談に乗ったのに!!」


メイプルの驚いた声で、全員が振り返った。


「メイプルうるさい!」

「ハナノ様、ソウをよろしくお願いします」

「はい。もちろんです」

「何でメイプルが言うんだよ!」

「ソウは言えないかと思って」


いつもの仕返しらしく、メイプルとソウがじゃれていた。仕事がらみでなければ、仲良しらしい。


「あーもう、引き上げるよ!」

「ソウ、一度家に寄るのにゃ」


すると、遠くから早足で歩き、ユリを呼ぶ人がいた。


「ユリ様ー!」

「あら、リラちゃん。お迎えに来てくれたの? どうやって来たの?」

「最初からずっといました!」

「え?」


ユリは何となく感じていた違和感を思い出した。

速描きしていた画家が、色々不思議だった事を。


「もしかして、フードの画家さん?」

「正解です! 国を回って料理指導したときの報奨で、参加させていただきました!」

「ハイドランジアさんの手配なのね」

「あれ、リラだったのか! だからフード被ってたのか」

「はい! でも回りの人に、すぐばれてしまいました」

「みんな下描きだけしてるのに、色まで塗ったらばれるのにゃ」


絵の具は色々な臭いがするので、普通食事の場では、色までは塗らないのだ。

リラは、ユリから貰った水彩色鉛筆を使っているので、臭いもせず持ち物も軽く、色まで塗っていたのだった。


「全員連れて家まで行けば良いの?」

「キボウが送迎してくれるにゃ」

「つかまってー、つかまってー、リラだっこー」


リラがキボウを抱き上げ、ユリとソウとユメ以外の10人を連れ、転移して行った。それを見て慌ててユリたちも転移した。


家につくと、マーレイとイリスとレギュムとクララとグランが、食事を用意して待っていてくれた。


「作ったのは、シィスルさんとマリーゴールド様なので、安心してお召し上がりください」


イリスの言葉に、少し笑ってしまった。


軽く食事をしたあと、ソウは、家の中を簡単に案内し、衣装のままだと動きにくいと言いながら戻ってきた。

カエンとユメとキボウは着替えたらしく、ユメとキボウはいつもの服、カエンは最初に着ていた和装に戻していた。ユメとキボウの和装は、カエンが用意したものだった。



「ソウビさん、すぐ帰られますか? 少しイトウさんかサエキさんの所に、泊まったりなさいますか?」

「良いのか!? 出来るなら、明日か、明後日 帰りたい」

「いつでも良いですよ。帰る時ここまでお越し下さい。あと、体調不良などがありましたら、早めにお声がけくださいね」

「恩に着る」


「おじさま、おばさま、いえ、お義父様、お義母様、すぐ帰られますか?少しお泊まりになられますか?」

「ものすごく泊まりたいけど、明日仕事があるから今日は帰るよ」

「私も仕事と報告があるのよ。百合ちゃん、うちにも泊まりに来てね」

「はい」


「月見のお義父様、お義母様、すぐ帰られますか?少しお泊まりになられますか?」

「ユリさん、ありがとう。今日は帰ります。また呼んでください」

「ユリさん、今日は帰ります。是非また呼んでください。色々ありがとう」

「はい。必ず」


「カエンちゃんと(よう)君はどうする?」

「わたくしは帰りますが、タキビ、いえ、(よう)は泊まって行っても良いのよ?」

「姉上が来るとき、一緒に来たいと思います」


「では、ソウ、一人送ってください。あとの方は、私につかまってください」


ソウは、タキビ改め (よう)に話があるらしく、手を引いていた。


月見家にユリが先に転移し、ソウが来る前に部屋を移動して、着替えを始めた。


「若奥様」

「え! あ、はい。慣れないわぁ」

「ソウ様は、凛々しかったですか?」

「はい。とっても。写真を撮っていた人がいるので、出来たら見せに伺いますね」

「まあ! ありがとうございます。カエン様は着替えられたのですか?」

「カエンちゃんは、あちらに行くと名誉国民だから、巫女さんである必要があるみたいです」

「そういう事情なのですね」


脱いだ振り袖は、洗い張りをしてくれるというので、任せた。もう着る機会はないかもしれないけど、大切な振り袖だ。

来るときに着ていたワンピースに着替え、ソウを待っていると、着替えたソウが迎えに来た。


ユリは、いつものように、パウンドケーキをたくさん取りだし、魔力の無い人もいるだろうと、色々なお菓子も取り出した。

洗い張りと、ユメとキボウに借りた振り袖と子供用の紋付き袴と、4人分の着付けの代金として、物納した。その中では、猫型ラスクが一番人気だった。


よくお礼を言って、ソウと二人で家に帰ってきた。

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