御祝
昼ご飯の用意が終わり、まだかなり早いが昼ご飯を食べることにした。ソウとマーレイが来たので全員集合したからだ。
「ユリ、あと残ってる仕事は?」
「休み明けの分の生チョコかな」
「それだけなの?」
「あとは、クッキーの開発的なものくらいね」
「クッキーの開発って、何するの?」
「リラちゃんたちは、新しいレシピを考えているみたいだけど、イリスさんとユメちゃんは、新しいデザインを考えているわね」
「凄いのを作る予定にゃ!」
「へえ、俺も何か考えてみようかな」
「あら、良いわね。期待してます」
ユリに期待していると言われたソウは、当然作業部屋のお菓子の本を見に行ったのだった。
何か良いデザインでも考えたらユリが喜ぶかなと思ったのだ。
昼食後、営業開始までかなりあるので、各自が自己責任で休み時間を確保すると約束させ、自由時間とした。
少しすると、花の図鑑を見に来たシィスルとマリーゴールドが、本日の予定の紙を見て、知らない単語を聞いてきた。
「ユリ様、予定に書いてあるラング・ド・シャ、フロランタン、チュイール、ビスコッティ、スノーボールとはなんですか?」
「教えたことがないクッキーの種類よ。時間があったら教えるから、見に来るか、リラちゃんに聞くと良いわ」
「お邪魔でなければ、見学したいので教えて下さい」
「良いわよ。午後の手が空いた時にね」
「ありがとうございます!」「ありがとう存じます」
「二人とも、好きな飲み物を自分で作ってね。私は少し休んできます」
ユリは珍しく、しっかり休もうかと階段を上がりかけたとき、訪問者があった。店で図鑑を広げていたシィスルが、取り次いでくれたようだ。
「ユリ様、お客様がお見えです」
誰だろうと思いながら店に行くと、ハヤシとコバヤシだった。
「ハナノさん、ご結婚されるそうで、これ、転移組からのお祝いです」
「え?」
バサッと、大きな包みをほどいて現れたのは、ガラスドームのケースに入ったプリザーブドフラワーだった。
青い薔薇や白い百合を組んだ豪華なキャスケードブーケだ。
「どうしたんですか、これ?」
「私が組みました」
ハヤシが作ったらしい。ユリも作り方は知っているが、作ったことはない。尊敬の眼差してハヤシを見上げた。
「え、凄い!」
「材料として、ホシミさんに運んでもらいましたよ」
「そうなんですか?」
そこへ、慌てた様子のソウが来た。
「ユリ?」
「ソウ!皆さんがお祝いをくださったのよ!」
「え、お祝い・・・」
「ホシミさん、ハナノさん、ご結婚おめでとうございます。一足早いですが、お祝いをお持ちしました」
「あ、そのブーケ、お祝いなんだ。ありがとう、なのかな?」
「素敵なお祝いどうもありがとうございます!」
ユリは嬉しそうに、ガラスドームの周りを回るように花を見ていた。
ユリが喜んでいるので、ソウは何やら落ち着いたらしい。
開店前で忙しいでしょうからと言って、ハヤシとコバヤシは早々に引き上げていった。
店の方を振り替えると、ユメ、リラ、シィスル、マリーゴールドが、少し心配そうに扉の影から覗いているのが見えた。
「ユリ、俺が運んでおくよ」
「ソウ、ありがとう。どこに飾ろうかしら。うふふ」
上機嫌に歩くユリの後ろから、少し疲れた様子でガラスドームを持つソウに、ユメとマリーゴールドが、何か謝っていた。




