打掛
「お待ちしておりました」
「カエンちゃん、迎えに来たわ」
「美容部が、沸いております」
「え?」
「わたくしが和装を断ったので、用意していたチームが落胆しておりましたが、ユリ御姉様がこちらで着替えることを伝えましたところ、とても張り切っておりまして、」
「あー、カエンの担当美容部って、お袋たちか!」
「はい。ホシミのおば様が参加者側なので、なおさら、美容部メンバーが気合いを入れているようでして」
「私の着替えも見てくれるの!?」
「むしろ喜んで! ユリ御姉様は、一人でこちらに来られますので、白無垢もご用意が可能でございますが、どうされますか?」
「え! 白無垢着られるの?」
ユリは、結婚式自体に興味が無さすぎて、式2日前になってやっと悩むのだった。
「写真に残したい気持ちはあるけど、顔が見えないのは向こうではダメかも」
「でしたら、写真だけ撮りましょう」
あれよあれよと言う間に、着替えさせられて、白無垢の嫁入り写真を撮ることになった。
基本的に、食事が終わってからカエンを迎えに来る約束なのだが、今日は早めに来て欲しいと言われていた。どうやら、最初からユリの白無垢写真を撮る予定だったらしい。
いつのまにか着替えさせられたらしいソウは、黒い紋付き袴で、かなり凛々しく固い雰囲気だったが、ユリを見たとたん、押さえられない笑顔で笑うので、全く怖くは見えなかった。
「ユリ、とても似合っていて、綺麗だ」
「ありがとう。ソウもとても素敵よ。怖くなんて見えないわよ?」
白無垢と色打掛の写真を撮り、美容部員たちは、「当日は何時にいらしても髪結いと着付けをします!」と意気込んで約束してくれた。
出来上がった 大伸ばしにした2枚と、スナップショット複数枚を渡されると、あとから来た人に、額を2つと、新しいアルバムを渡された。これに入れるのだろう。
ソウと一枚ずつ額に納め、スナップショットをアルバムに貼りつけた。
さあ行こうと思ったら、カエンは結構な大荷物で、ユリとソウが気遣ったが、これはわたくしが持っていきますと譲らなかった。
転移して家に戻ってくると、ユメとキボウが待っていた。
「ただいまー」
「お帰りなのにゃ」「おかえりー、おかえりー」
「ユメちゃん、ちょっとお話がございます」
「何にゃ?」
なぜかカエンは、ユメと一緒にリビングを出ていった。ユメの部屋に行くらしい。
「何かユメちゃんへのプレゼントだったのかしら?」
「成る程、(魔道具の)鞄に入れると中身がわかるからな」
ソウが城へ行き、ユリが食事の支度を終わらせる頃、ユメとカエンは戻ってきた。ユメがとても嬉しそうにしていたので、やっぱり何かプレゼントだったのかな?とユリはほほえましく思っていた。
「ただいま! 最終的な段取り聞いてきた。前日からユリは城入り、俺は当日朝8~9時に向こうに行って送迎、参加者は12時までに会場入り、カエンはどうする?」
「神事用の巫女服で参加致しますので、当日参りたいと思います」
「ユメとキボウはどうする?」
「当日9時頃、自分で行くにゃ」
「ユメいっしょー、ユメいっしょー」
キボウはユメと一緒に行動するらしい。
「ごはん食べちゃいましょ」
ユリが声をかけると、全員が食事を運び、食べ始めた。
「ユリ御姉様、お持ちした物がございますので、あとでお時間いただけますか?」
「寝る前で良い?」
「はい」
カエンの荷物は、ユリの物もあったらしい。
片付けを終わらせ、カエンがいる作業部屋を訪ねると、カエンはすぐに出てきた。
「ユリ御姉様、お待ちしておりました」
「ご用はなあに?」
「こちらをお持ちください」
カエンが渡してきたのは、かなり踵の高い白いハイヒールの入った箱だった。
「これどうしたの?」
「ユリ御姉様が戴冠式の時に、歩きにくいとおっしゃっていたと、お兄様からうかがいました。こちら、新素材で足にフィットする上に、疲れませんので、最適かと思われます」
「お借りして良いの?」
「いえ、差し上げます。お祝いにお受け取りください」
「カエンちゃん、どうもありがとう!」
新素材の履き物は、ユリも草履を持っていた。足に馴染んで、足が痛くならないが、とても高価で、鼻緒の裏と前坪に使っているだけでも結構な価格がする素材なのだ。
「あ、ユリ御姉様、お返しは要りません。ですが、どうしても返されるなら、パウンドケーキでお願い致します」
「どうしても返したいから、帰りに渡すわね」
ユリは自力でも多少探したが、足が小さいので、なかなか良いハイヒールが見つからず、戴冠式の時は歩きにくくて大変だったのだ。
部屋に戻り履いてみると、とても足に馴染み、かなり目線が高くなり、楽しかった。15cm高くなるらしい。




