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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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千倍

「ただいまー!」

「ユリ、お帰り」

「お腹空いたわね。冴木さんも何か召し上がりますか?」

「私は、帰りますが、」

「あ、ユリ、ハヤシ君と、コバヤシ君が食べに来ると思う。帰っても何もないだろうから」

「それって、馬車で寄るのよね?」

「そうだね」

「御者の方は、何人になるの?」

「多くて3人かな」

「7人前用意すれば良いのかしら?」

「ユメとキボウは昼戻らないの?」

「お城でおやつ時間までいる予定よ」


「ソウ君、ここって、パープル邸への通り道で全員通るから、全員寄るんじゃないのか?」

「そうなの?」

「俺が頼まれたのは、ハヤシ君とコバヤシ君だけだよ」

「残っても困らないから、20人前作るわ」

「手伝うよ」

「カナデ、急ぐんだろ? 残らなくて良いよ」

「ソウ、悪いな。花野さん、申し訳ないが、お先に失礼します」

「はーい。お気を付けてー」


カナデ・サエキが帰り、ユリはソウに手伝ってもらい、急いで20人前のランチを作った。

ランチ営業を()めるので、材料がないはずだったが、メイプルたちのおやつを作る予定で、多少の野菜などがあり、明日の家内用に頼んであった鶏肉を使い、パンプキングラタンを作ったのだった。

牛乳やバターは、お菓子を作るのでたくさんある。


「こんにちはー」

「はーい。何人ですか?」

「えーと、6人と、御者が、1、2、3、7人!」


ハヤシとコバヤシは、客車付きの馬車1台と、荷馬車を1台ずつ借りていて、御者が3人で、他のメンバー4人は、小型の幌馬車で、御者は4人らしい。


「グラタンでよければ、ご馳走しますよ」

「ありがたい!」


店内に入ってくると、鏡餅を見て思い出したらしい。


「せっかく帰ったけど、友人宅を泊まり歩いていたからそう言えば、餅食べられなかった!」

「去年は、焼き鳥屋のハナダさんが、餅分けてくれたんだけど、今年は向こうに行くから断ったんだよ。なのに、むしろ食べられなかった!」


王都組の料理人二人が騒いでいた。


「その鏡餅は、ハナダさんたちと一緒に作りましたよ。全部で16升つきました」


16升?すげーな。と話しているのが聞こえた。


「ハナノさん、餅、残ってない?」

「桜花餅なら少しあります」

「オーカ餅?」

「桜の花の桜花(おうか)です。塩漬けの桜が入っています」

「それ、食べさせてもらえるの?」

「グラタンの前に出しましょう」


王都組は四人席に座り、ハヤシとコバヤシは、二人席に座り、カウンターと4人席のひとつに、御者の人たちが座った。


ジンジャエールを飲むか聞くと、全員飲むと言うので、ソウに作ってもらって提供した。

ユリは桜花餅を焼き、海苔を巻いて提供した。


「うわ!なんだこれ! 妙に旨いな!」

「ハナノさん、これ売ってるの?」

「これは家内用に作ったので、売ってないです。亡くなった母の味なんです」

「こんなに旨いんだから、売れば良いのに」

「塩味が安定しないので、難しいんです」

「あー、桜の塩抜きか。僕も桜ジェラート作ったとき、失敗したなぁ」

「塩抜き加減は、食べてみるしかないんですよね。竹の子でよく食べてみてます」

「そろそろグラタンが焼けると思うので、持ってきます」


ソウが手伝い15人前を運び、ユリとソウも席につき、全員食べはじめた。


「ハナノさん、年明けの営業、いつからしてるの?」


気軽な感じで焼肉屋のハヤシが聞いてきた。


火曜日(かようび)、じゃなかった。火曜日(かえんのひ)からの予定なんですが、明日並ばれたら、明日からします」

「あ、これ、営業外か! グラタンありがとう!休みなのに作らせてしまって悪かった」


ラーメン屋のコバヤシが気づいて謝ってきた。


「私も、不在から戻ったとき、食べるものがなくて困りましたのでお互い様です」


リラがご飯を用意してくれて助かったのを思い出す。冷蔵庫の干からびた材料と、冷凍庫の凍りすぎて霜だらけでなんだかわからなくなった物しかなかったのだ。


「今日は、猫娘(ねこむすめ)ちゃんは居ないんですか?」

「えーと、」

「僕は、ピザとジェラートを売ってるダイゴ・サカキバラです」

「サカキバラさん、ユメちゃんに会ったこと有りましたっけ?」

「ずっと前、イクラ丼を届けてくれました」

「あー!成る程、ユメちゃんは今日は出掛けています。この後迎えに行く予定です」


あのイクラ丼は美味しかったよな。と、みんなが口々に語りだした。


「あ! そうか! あのイクラ丼を作ったのは、ハナノさんか!」

「そうですが・・・」

「ハナノさんて、この国の女王で、料理人なの?」

「まあ、そうですね」

「どういう基準で女王に?」

「魔力量ですかね?」

「魔力量って、いくつなんですか?」

「推定30万pです」

「は?」「え?」「30」「?」「千倍?」「?」


「ちなみに、ホシミさんは?」

「ソウは、9万か10万pだと思います」

「二人とも桁違い・・・」

「皆さんも、増やせば1万pくらいまでは増えますよ?」

「どういう事?」


そして又、魔法教室を開催し、手の上に灯り玉を作る「灯火」を教え、里帰りの時に習わなかった人にも「以心伝心」を教え、300pの魔力がない人は、呪文を唱えて送る以心伝心以外使わないように言い含めた。


「あと、医療従事者のタイキ・マツモトさん、600p有りますよね? 興味があるなら、自己治癒を教えます。カイト・サトウさんは、教えた魔法で500pを越えたら試すなり、習いに来るなりしてください」


ユリが話していると、以心伝心で予想通り倒れる人がいて、ソウがパウンドケーキを口に突っ込んでいた。ユリが名前を認識していないので、王都組の誰かだ。

お好み焼き屋のススム・タケシタである。


「睡眠不足や、体力は回復しませんので、自己治癒をしても、休息はしっかりとってください。使用は100pですが、慣れないと400~500p使うようです。軽い怪我などがあると効果が分かりやすいのですが」

「あ、打ち身とかで良いですか?」

「はい。では、魔鉱石に魔力を注ぐときのように、魔力の流れを意識して、悪いところに集中させるイメージをします。痛みが軽減するように願いながら、魔力を集中させます」


漢方薬師のタイキ・マツモトが、ユリに習って実践した。


「おーー! 痛みがなくなった!」

「割りと明確なイメージができれば、すぐ効果があると思います。このイメージが難しいようで、慣れるまでは400~500p使うようです」


バタっと、精神科医のカイト・サトウが倒れた。ユリの忠告を聞かず試したらしい。

やはりソウがパウンドケーキを口に突っ込んでいた。


「ハナノさん、そのパウンドケーキは売ってもらえるのだろうか?」

「良いですよ。女神の慈愛・パウンドケーキ 1本5万☆、1切れ5000☆です。1切れで、魔力フル回復です」

「それって、行きに貰った菓子か!」

「向こうで買い取りたいって言われて50万円で売ったよ」

「俺食べちゃって、半分しかないって言ったのに、20万円でって言われたよ」

「あちらでの流通価格は、1本、60~240万円だそうですよ」


結局、御者を含めた全員が1~3本お買い上げで、帰っていった。


時間も良い頃なので、城にユメとキボウを迎えに行った。

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