出迎
正午に集合なので、ユリとソウは早めに転移し、画材店に来ていた。
スケッチブック、色鉛筆、水性色鉛筆、自然に優しい絵の具、パレット、絵筆、筆洗、クレヨン、水性マジックセット、油性マジックセット、折り紙、糊、折り紙の本、ハサミ等を購入し、魔道具の鞄に入れ、ソウの家で着替えてから、転移ポイントに登場した。
すでにトラックや観光バスのような乗り物から荷物も下ろされ、転移ポイントの舞台のそばに並べてあった。
ユリが姿を見せると、持てるものは手で持って舞台に上げ、台車や、荷車も急いで上げていた。
「重たいものはこちらで乗せましょう」
ユリとソウで手分けして、人の手で楽には上がらない荷物は転移を使って舞台に上げた。
これ、向こうについてから、どうやって運ぶつもりなのかしら?
ユリはソウの元上司に、対価としてパウンドケーキを支払い、3~6か月を目処に、又買い物につれてきたいと話した。
「その度に、パウンドケーキをいただけるのなら、いつでもお引き受けいたします!」
即答での了解だった。
少し考えたユリは、怖いもの見たさで聞いてみた。
「このパウンドケーキって、いくらで取引されているのですか?」
「5~20万円です」
「あ、そんなに(利益を)乗せていないんですね」
「一切れが」
「え?」
女神の慈愛パウンドケーキは、12カット分の1本が、60~240万円らしい。
カエンが、1本10万円で引き取っているとは知っていたが、販売の最低価格が、60万円とは知らなかった。
「ソ、ソウデスカ・・・」
そりゃ、毎度20本渡せば、1200~4800万円だ。即答で了承されるはずである。
「荷物は全て検疫済みです」
「ありがとうございます」
「星見君から聞いている内容でチェックしてあります」
「外されたものがあるのですか?」
「電子機器と、充電池等です」
一時帰宅は料理人が4人、医療従事者が2人で、ユリが真っ先に思い当たったのが秤だった。
「それって、電子秤ですか?」
「それもありましたが、違うものもあります」
「電子秤は調理用なら容認します。薬剤用は、ソウと相談してください」
「了解です」
外したと言う物も全て預かった。名前付きのシリコン製の袋に分けて入れてあった。
ソウが、メンバーと会話し、入れ替わりなどがないことも確認した。
「ソウの元上司さん、お名前を存じ上げないので呼んで良いお名前を教えてください」
「ははは。星見君は律儀に守っているんだな。私は、ソウビです」
「では、ソウビさん。フルネームのどこかに、植物名を含みますか?」
「・・・含みますよ」
「もしよろしければ、私達の結婚式に参列しませんか?」
「え? ご招待いただけるという事ですか?」
「はい。カエンちゃんたちとご一緒にいかがですか?」
「ありがとうございます。調整が必要なので、即答できなく申し訳ないが、前向きに検討いたします」
「返事はソウに、お願いしますね。それでは、転移を始めます」
ユリは辺りを見回し、転移すべきメンバー全員が舞台に乗っていることをソウと確認した。
ユリが舞台に上がり、声をかけた。
「飛びますよ!」
注意を促し、呪文を早口で唱えた。
「イタアシアヘク・イルバヰアッケキ・オデイナクヌュス」
ふわっと、澄んだ空気に包まれた。辺りを見渡すと、迎えの馬車や荷馬車が多数待機していた。
元案内人のカナデ・サエキが、こちら側をまとめていてくれていた。
サエキが言うには、空で行って荷を積んで帰る予定の馬車に、行きだけ乗って帰りは乗らないと言ったら、喜んで半額で乗せてくれたそうだ。
ユリの予想通り、乗りきらない荷があった。
これ以上は、馬が引けませんと断られ、途方にくれているので、ユリが引き受けた。重さよりも、バランスの問題らしい。
ここから一時間弱の移動で又積み直しなので、分けて良いものと不味いものが難しいらしい。
「預かった荷は、城に置いてきます。料金的なものは、ソウと相談してください」
全ての荷が積み終わり、人も馬車に乗ったので、ユリとソウは、サエキをつれ一旦家の前に転移し、ユリだけ城まで転移した。
城についたユリは、預かった荷物を転移の間の係りに渡し、すぐに帰ってきた。




