鉄板
ユリは、小麦粉、卵、牛乳、砂糖、ベーキングパウダー、バターを用意した。
混ぜた生地を、バターを薄くひいて温めた銅製のフライパンで、焼き始めた。
「生地に、このくらい穴が開いてきたら、ひっくり返します」
フライ返しを使わずにフライパンを振ってホットケーキをひっくり返すと、どよめいた。
「おおー!」「凄いにゃ!」「さすがユリ様!」
あれ? と振り返ると、ソウが戻ってきていた。
「ソウも食べる?」
「勿論!」
「ユメちゃん、リラちゃん、バター、はあったわね。メープルシロップと、ホイップクリーム用意してくれる?」
「わかったにゃ!」「はい!!」
リラが生クリームを泡立てている間、ユメは、メープルシロップと、皿とカトラリーを用意してくれた。言わずとも、7.5%のグラニュー糖をいれ泡立ててくれる。
ユリは出来上がったものを、先にリラに出したが、さすがに遠慮したのか、ソウに差し出していた。
ソウの指示通りにリラが飾り付け、一足先にソウが食べはじめた。
「旨いなー!久し振りだな」
「ホシミ様、これ、売るときに少しフルーツを飾ったら、ダメですか?」
「そういうのもあるよ。リラ、ホットケーキ売るの?」
「材料が揃いやすそうなので、売ってみたいなと思います」
ユリがもう一皿出すと、リラはユメに渡していた。ユメにも、頼まれた通りに飾り付け、リラは満足そうだった。
いよいよリラの分を渡すと、半分に切って、更に半分に切って、1/4ずつを、そのまま、メープルシロップ、バター、生クリームと、分けて食べていた。
ユリが自分の分を焼いていると、キボウが戻ってきて、それはキボウに提供し、リラが飾り付けてくれた。
更にもう一枚焼いて、自分の分を作ると、リラが余った生地を焼いてみたいと言い出し、器具を渡した。
ユリは自分で飾り付けた。
「あ、おかわりはリラちゃんに頼んだら良いわ」
「はい!作ります」
「さっき聞こえたけど、お店で売る気なの?」
「はい!」
「商売で作るなら、フライパンではなく、銅製の鉄板が良いわよ。一度に焼けるから」
「銅製の鉄板あります! ラベンダー様から教わって、鮎作りました!」
すでに持っていたのね。
「あの鮎の生地を丸く焼いて、間にあんこを挟むと、どら焼きになるわ」
「なんですか!それも教えてください」
「はいはい。まずは、今日のメープルクッキーからね」
ユリは、メープルクッキーと、ホットケーキの配合を書いた紙を渡した。簡単な作り方も書いてある。
「まだ作る? 私、食べ終わったから、代わるわよ?」
「もう少し作らせてください。火加減結構難しいですね」
「銅は、熱伝導率が良いから均一に温まるけど、弱火にしないと焦げるわね」
ユリは、みんなに冷たい牛乳を提供した。
キボウは、お茶が良いというので冷茶を渡した。
「ユリ、缶詰開けて良い?」
「フルーツ缶なら何開けても大丈夫よ。缶詰以外に、冷凍フルーツもあるわよ?」
「あー、ダイスカットイチゴにしよう!」
「りんごジャムもあるわよ」
「ユリ、キボウがチョコ乗せるって言ってるにゃ!」
「ユメちゃん、ナイフで削って乗せれば良いわ」
「緑がほしいな」
「ソウ、外に生えているミントを飾ったら良いわ」
「ユリ様、交代していただけますか?」
「はいはい。リラちゃんは飾りを練習するのね」
フルーツを豪華に飾り、一人3~4枚食べ、落ち着いたらしい。
ユリは残りの生地も全て焼き、冷凍した。
「そう言えば、シィスルちゃんと、マリーゴールドちゃんは、いつ帰ってくるの?」
「今日か、明日です」
「リラちゃん、あなた自分のお店に居なくて良いの?」
「向こう見て居なければ、こちらに来てるとわかると思います」
リラよ、ベルフルールの店主として、それで良いのか?
全員が思ったのだった。
「リラちゃん、私は明日の日中ここに居ないからね」
「お出掛けですか?」
「強いて言うなら、女王の仕事ね」
「行ってらっしゃいませ」
シィスルと、マリーゴールドは、この日の遅くに戻ってきたらしい。




