策略
昨日迎えに行ったカエンは、部屋から出るときにドアに足の小指をぶつけたのに、ヘラヘラしていた。
作業部屋に寝かせたけど、ちゃんと起きてくるだろうか?
まあ、気になっていた人と実は両思いだったなんて、うかれてもしかたない。
「おはようございます。昨日は大変失礼いたしました」
「カエンちゃん、おはよう。良く眠れた?」
「はい。ありがとうございます」
「朝ご飯食べられる?」
「ありがとうございます。いただきます」
今日はいつものカエンに戻っていた。一晩たって、冷静になったのかもしれない。
ソウも起きてきて、ご飯を用意すると、キボウも起きてきた。キボウはいつもご飯が揃ったタイミングで起きてくる。
さあ、食べようと思ったら、ユメも起きてきた。
「おはようにゃ!」
全員揃って朝ご飯になった。
「ユリ、今日の予定は?」
「シューを焼こうかなって思ってるわ」
「ユリ、仕事するのにゃ?」
「出掛ける予定のある人は出掛けて大丈夫よ」
「何のシュー作るにゃ?」
「クレーンシューの予定よ!」
「クレーンシューにゃ?」「クレーンシュー?」
「丹頂鶴ぽいシューを、お正月スペシャルとして出そうかと思ってね」
「いつ、出されるのですか?」
「10日か、11日ね」
「次は、12日に参りますので、購入の予約をさせていただけますでしょうか?」
「買わなくても、食べたいなら残しておくわよ。いくつあれば良いの?」
「2つ、いえ、3つお願い致します」
「はーい。残しておきまーす」
食べ終わったカエンをソウが屋敷まで送って行った。
◇◇◇◇◇
(カエンの屋敷)
「御兄様、御父様と母上様にホシミのおじさまたちがお伝えしましたところ、とても喜んでいらっしゃいました。体重は、全員65kg以下だそうでございます」
「お、ありがとう! あと、当日、タキビも招待するよ」
「ありがとうございます。あの、わたくしは、巫女服の方がよろしいでしょうか?」
「振り袖でも良いと思うよ。ユリの訪問着と振り袖を王妃が喜んでいたし」
「和装がよろしいのですか?」
「俺にも紋付き袴を着てほしいって言われて、断ったから」
「なぜお断りを?」
「成人式の時、ダークスーツ着たら経済ヤクザって言われて、紋付き袴着たらジャパニーズマフィアって言われて、それ以来寒色系は着ないことにしてる」
「あーあーあー・・・御兄様、結婚式はどうなさるのですか?」
「白っぽい騎士服だから問題なし」
「似合いそうですわね」
「なにもなければまた来週迎えに来るよ」
「はいお願い致します」
◇◇◇◇◇
「ただいま!」
「ソウ、おかえりなさい」
「ユメとキボウは?」
「なんか、リラちゃんの家に忘れ物したって取りに行ったわ」
「ユリ、丹頂シュー手伝うことある?」
「そうね、どうしてもなら計量くらいかしら?」
「なら、俺出掛けてくる」
「はい。行ってらっしゃい」
ユリが朝ご飯の片付けを終わらせ、コックコートを着て厨房へ行くと、すまなそうなユメの後ろに、リラがニコニコと立っていた。
「あら、リラちゃんどうしたの?」
「仕事開始がいつからか聞きに来ました!」
「10日よ、お店は11日からの予定よ」
私、言わなかったかしら?
「ユリ様はなぜ白衣をお召しに?」
「ちょっと作ろうと思ったものがあってね」
「見学して良いですか? 」
「構わないけど」
リラは何故か白衣に着替えはじめた。
「見学じゃないの?」
「普通の服だと、そばで覗き込めないですし」
やたらニコニコとリラが答えていた。
「ユリー、キボー、てつだう?」
「キボウ君ありがとう。フリーズドライイチゴは、わかる?」
「わかるー!」
「持ってきてください」
「わかったー!」
「ユリ、なにか手伝うにゃ?」
「ユメちゃんありがとう。計量か、天板の用意をお願いします」
「わかったにゃ」
「ユリ様ー、なにか手伝いありませんか?」
「・・・リラちゃん、せっかく休みなのに、休まないの?」
「えー!ここは、キボウ様とユメちゃんと同じように、仕事を振り分けるところですよー!」
「わかったわ」
そんなことだろうとユリも思っていたので、早々に諦めた。
「シューの用意とブラックココアを使います」
「かしこまりましたー!」
リラは、揚々とシューの用意をはじめた。
勝手がわかっているので、言わなくても必要なものが用意されていく。
シューは、生地の状態が重要なので、一回でまとめては作りきれない。なので、リラが手伝ってくれるのは非常にありがたいのだが、ユリとしては、なんと言うか、こう、釈然としないのである。




