年始
朝ご飯を食べ終わってからソウに聞かれた。
「ユリ、お店っていつからだっけ?」
「営業は11日火曜日からよ。作るのは、前日の10日月曜日ね」
「やっぱりそうだよな」
「どうかしたの?」
「ユリ、年末の営業最終日に、客に聞かれて何て言ってある?」
何か言ったかしら?と良く考えてみた。
『年明けはいつから始められるのですか?』
『9日までお休みで、11日から営業します』
思い出しても、問題はなさそうだった。
「11日からと言ったわ」
「休みを聞かれてなんか言った?」
「9日までお休みで、11日から営業します。と言ったわ」
「それか」
「え?」
「9日まで休みしか伝わってないっぽい」
「んー、以前と違ってランチ出さないから、10日からでも良いけど、みんな来るのかしら?」
「並ぶ勢いで来ると思うぞ?」
「お正月っぽいもの出した方が良い?」
「持ち帰りだけ売れば良いんじゃないか?」
「三色胡桃餅でも売る?」
「スワンシューとかの方が良いんじゃないか?」
「んー、頭赤くして、鶴として売りましょうか」
「良いんじゃないか」
「鶴って、英語でなんて言うの?」
「クレーンかな」
「なら、クレーンシューね!」
売るものが決まったので、ユリは詳細をつめるべく、図鑑を持ってきた。
頭が赤いだけじゃなく、首と尻尾の先が黒いのね。
首は、ブラックココアを混ぜて焼きましょうか。頭に赤いチョコをつけて、クリームは、桃味とかどうかしら?
(ユリにしか理解できない)絵を描きながら、クレーンシューの構想を練った。
そういえば、 ひとつ用の箱はまだ有るのかしら?
心配になり探しに行くと、ちょっと驚く数の在庫があった。
ソウがひとつ上の単位で購入してきたのだ。
いっぱい買ってきたようなことは言っていたけど、2~3倍買ったって意味だと思っていたわ。
だから何度かに分けて運んでいたのね。
予想以上に箱の在庫があったので、思う存分売りましょう!とユリは考えたのだった。
不足するものを確認し、再開の予定もたてたので、少しゆっくりしましょう。と、部屋に戻り、ベッドにのびて思い出した。
カエンちゃん、今日も来るかしら?
ソウの部屋に行き、聞きに行った。
「ソウ、カエンちゃん、今日も来るかしら?」
「来るとは思うけど、正月だからどうだろうな?」
「ちょっと行って、予定聞いてこようと思うの」
「俺も行くよ」
そのままソウの部屋から転移して、カエンの屋敷に行った。
「御兄様、ユリお姉さま、すぐに参りましょう!」
「え?」
遠くから、呼んでいる声が聞こえた。
「カエン様ー!カエン様ー!」「月姫様ー!」
「呼んでるけど良いの?」
「良いのです。さ、早く」
扉を開けて、カエンの弟のタキビが入ってきた。
「姉上ー!」
「タキビ!おじさまたちは?」
「反対方向を教えておきました」
「ありがとう!」
「ユリ、カエンを頼む」
「はーい」
ソウとタキビを残し、カエンをつれて転移した。
◇◇◇◇◇◇
(ソウとタキビ)
「ソウ様、姉上をよろしくお願い致します」
「言おうと思ってたんだけど、ソウ様じゃなくて、兄でも良いぞ。でも名前で呼ぶなら、様じゃなくて、さん付けにしておいてくれ」
タキビは輝くような笑顔でソウを呼んだ。
「はい!ソウ兄上!」
「ま、いっか。カエンから聞いたけど、結界張れるんだって?」
「結界しか張れませんが」
「いや、結界張れるやつの方が少ないんだぞ?」
「姉上やソウ兄上のように、凄い術が使えません」
「いや、だから、結界は凄い術なんだって」
バタバタと走り回っている音が聞こえる。
「カエン様ー!」「カエン様ー!」「月姫様ー!」
「捜索が来ますので、ソウ兄上は帰られた方が」
「そうだな。じゃ、また来るから」
「姉上をよろしくお願い致します」
◇◇◇◇◇
ソウも戻ってきた。
「で、何でカエンは逃げてたんだ?」
「・・・だって、嫌だったんですもの」
「何が嫌だったんだよ?」




