挨拶
みんなで朝ご飯を食べ終わった頃、訪問者があった。
「誰か来た。マーレイかな?」
「見てくるにゃー!」
「キボーも!キボーも!」
ユリは北側の窓から下を覗いてみた。すると、普段と違った服装のマーレイとイリスが見えた。普段より豪華な感じの服を着ているように見える。
ユリも階段を降り、外へ顔を出した。後ろからソウもついてきた。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
そう言ったマーレイとイリスから何か渡された。
「明けましておめでとう。えっと? ごめんなさい。作法が分からないわ。教えて下さい」
「ユリ、ごめん! 言うの忘れてた。4日には、挨拶がくるんだよ。向こうで言う、お年玉を渡さないといけない」
「え! 何を渡せば良いの?」
「商家なら商品、貴族なら領地経営していれば特産品、していなければ手作りの物とか」
「うちは? お菓子で良いの?」
「マーレイ、何がほしい?」
「選んで良いのですか?」
「選んでくれた方がユリは助かると思う」
「はい。助かります」
「では、ジンジャエールをいただきたいです」
「ポテロンのようなお菓子をいただきたいです」
「ジンジャエールは、了解。ポテロンは在庫がないからすぐ出せるのは、ティラミスか、イチゴムースか、ヨーグルトゼリーかな」
「イチゴムースが良いです!」
ユリは、イチゴムースと、すぐ飲むジンジャエールと、強炭酸とジンジャエールの素を渡した。
「ありがとうございます」「ありがとうございます」
マーレイとイリスは、すぐに帰っていった。
「もしかして、他にもたくさん来るってこと?」
「分かりやすく言うとお年玉だからな」
「簡単に言って、誰まで来るの?」
「予想がつかないな。王宮のメンバーは来ないと思うけど、来ないとも言い切れないと言うか、なんと言うか」
「ご近所さんも来たりする?」
「子供は来るかも。いや、うちの場合大人もか?」
「時送ってない世界樹様のクッキー、黒猫クッキー、普通のパウンドケーキとかで良い?」
「ベストだと思う」
「ちょっと作るわ」
「ユリ、本当にごめん。すっかり失念してた」
「そんなに謝らなくて良いわよ。あれ?もしかして、これからリラちゃんも来る感じ?」
「おそらく」
リラが来たら、手伝う!と言って大変そうだとユリは思った。
「さっさと作ってしまいましょー!」
「手伝うにゃー」
「キボーも!キボーも!」
「俺も手伝うよ」
「みんな、ありがとう!」
普通のパウンドケーキを作りながらソウに聞いたところによると、今日は、お世話になった自分より上の人を、回れるだけ回る日らしい。
マーレイとイリスが来たのに、リラがすぐ来ないのは、パープル侯爵の所に先に行っているのかもしれないとのことだった。
パウンドケーキが作り終わった頃、レギュムとクララが来た。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
そう言った、レギュムとクララからも何か渡された。
「マーレイさんとイリスさんには、欲しいものを聞いたのよ。レギュムさんとクララさんもリクエストしてもらえる?」
「よろしいのですか?」
「その方が助かるわ」
「では、何か焼き菓子ではないお菓子があれはいただきたいです」
「すぐ出せるのは、ティラミスか、イチゴムースか、ヨーグルトゼリーだわ。あとは、生チョコね」
「生チョコをお願いします」
「私はティラミスが良いです」
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます」「ありがとうございます」
レギュムとクララも、すぐに帰っていった。
「時送ってない世界樹様のクッキー作るわー!」
ほとんど同時進行で黒猫クッキーも仕込んだ。
キボウに、今日はスタンプを押さないと説明すると、残念そうだった。
時送りしていない世界樹様のクッキーを作り終わる頃、グランが来た。
グランは時送りした世界樹様のクッキーがほしいと言うので、渡した。やはりすぐ帰っていった。
ユメの鞄のご飯を昼食にし、少し休んだ後、黒猫クッキーを作り始めた。
午後一番に来たのは、なんと、パープル夫妻だった。
屋敷に居なくて良いのだろうか?
やはり手紙のようなものを渡された。
他の人に貰った物も開いてみたが、独特な模様が書いてあるだけで、文書ではなかった。
少し心配なユリは聞いてみた。
「これって、王族も来るんですか?」
「基本的には、領内もしくは移動できる範囲だけでございます。そうしなければ、すべての貴族が王宮に挨拶にうかがいますので、誰一人領地に残ることができなくなります」
「成る程! では、いっぱいは来ないんですね」
良かったー。とほっとするユリに、少し考えたパープル侯爵が言った。
「あと、大物で来るとすれば、レッド公爵家かと」
「あー。来ますよね。確実に。うふふふふ」
パープル侯爵と、ローズマリーには、女神の慈愛パウンドケーキを1本ずつ渡した。
ちなみに、パープル侯爵邸には、息子のトリヤとスノードロップがいるので、問題ないらしい。
ユリが認識できる人には欲しいものを聞いたりしたが、良く来る常連さんには、一律、今日作った3つから選んで貰った。
「ユリ、少し出掛けてくるにゃ」
「どこに行くの?」
「城に顔出してくるにゃ」
「わかったわ」
夕方、ユメは出掛けていった。
馬車の音がして、誰か来たなと思った。
そもそもこういう日に、馬車でまで来るような人は少ない。
「ユリ様ーー!」
ユリが戸を開けると飛び付かれた。
ラベンダーだった。なんと後ろにリラもいる。
「どうして一緒なの?」
「はい。おじいちゃんに挨拶に来て、プチフールに帰る元番頭さんに乗せていただいてレッド領に伺い、ラベンダー様をお訪ねし、領主様のお屋敷まで行かれるラベンダー様に送っていただくのが毎年の流れになってまして」
「ユリ様、こちらを」
やはり紙を渡された。
ラベンダーには、女神の慈愛パウンドケーキを渡し、リラからは、マシュマロがほしいと言われた。
「申し訳ないんだけど、この紙って受け取ったあと、どうしたら良いの?」
「ユリ様は今年が初めてございますね。何かと取り替えたあとの紙は、商店なら店に貼り出したり、貴族なら、門の前に貼り出したり、枚数を誇ります」
「へぇ。いつ貼り出すの?」
「お店再開の日でも、仕事始めでも来客の目に留まる日なら大丈夫でございます」
「私がお手伝いします!」
リラが手伝ってくれるらしいので、紙の件は任せることにした。
「リラちゃん、あなたはお店にいなくて良かったの?」
「おじいちゃんたちか、お兄ちゃんが居るはずなので大丈夫です!」
「成る程、それでみんなバラバラに来るのね」
すぐに帰るのが習わしらしく、ラベンダーもリラも、ユリの質問に答えるとすぐに帰っていった。
出掛けていたユメも戻ってきて食事の時間になり、やっと落ち着いた。




