立体
総勢で行ったため、メイプル夫妻を呼び出したのに、メイプル夫妻の他、国王、王妃、王女ら大人全員が来た。
こちらは、ユリ、ソウ、ユメ、キボウの順に並び座っている。
向かいの相手は話す都合上、メイプル、アネモネ、国王、王妃、王女の順だ。
めんどくさそうに、メイプル以外を無視して話すソウに、ユリが慌てた。
「ソウ? 皆さんには説明しないの?」
「え? 聞かないと不味いのは、メイプル夫妻だけだしと思って」
「シッスルー、シッスルー」
キボウが養育係りを呼んでいた。
そばに控えていたのか、養育係りのシッスルは、すぐに連れてこられた。
キボウがなにか必死に訴えかけると、すぐに理解し、解説してくれた。
「キボウ様がお持ちになった物に、魔鉱石を乗せてお使いになると、皆様でご覧になれるようでございます」
「シッスルー、ありがとにゃ」
どうやらユメが手配したらしい。
魔鉱石を持ってきてもらい、ユリが充填した。それをキボウに渡すと、誰もいない広い床に葉っぱを置き、文字の上に魔鉱石を置き、キボウは離れた。
先程見た映像が、現実より少し小さめの立体映像になって現れた。
「うわー!」「おー!」「凄いにゃ!」
王族は、全員絶句していた。
映像が始まり、まずキッチンが映り、リスが出てきた辺りで、王族がざわざわしだした。
「ユリ様?」
「お髪の色が?」
「もしや、リス様!?」
「とりあえず最後まで見てくれ!」
ソウが言うと、全員おとなしくなり、食い入るように見ていた。
でもやはり、木の実から料理が出てきたところで大騒ぎになり、木の実を埋めたところで絶句していた。
映像が終わり、興奮冷めやらぬ状態で、質問が山盛りだった。
「俺に聞くなー。俺もさっき初めて見て、今ここに来てるから、質問はキボウにしてくれ」
キボウに質問することを躊躇しているようなので、ユリが話すことにした。
「料理を教えるよりも、色々な料理を持って行った方が良いと思うんです。魔道具の鞄に詰めて置けば、時間が経ちませんし、好きな食べ物を用意していった方が良いと思うんです。教わるべきは、せいぜいお茶をいれる方法とか、切り分ける方法とか、そういったものじゃないかと思います」
「な、なるほど、給仕を習うのが必要なのですね」
メイプルが理解したのか、ユリに同意していた。
切り方は兎も角、ユリでは上級の給仕は教えられないので、お付きの侍女にでも教わってもらおうと思う。
「ということで、私に依頼したい料理やお菓子を考えてください。多くは、食べ慣れたものが良いと思うので、いつも食事を作る人に頼んだ方が良いかと思われます。パウンドケーキは持ってきます」
「ユリ様、ありがとうございます。今、刺繍以外の簡単な裁縫を習っておりまして、メイプル様は、剣や歴史の復習をされていらっしゃいます。他に必要な技術等、思い付くことがおありでしたら、ご教授願えますでしょうか?」
「掃除とか洗濯は出来そうですか?」
「王宮の者ほどはできかねますが、下の者を知るということで、嫁ぐ前の若かりし頃に一通り体験したことがございます」
メイプルもアネモネも、色々習得したり復習したり頑張っているようだった。
「プラタナスが遊ぶための物も持って行った方が良いぞ?」
「成る程、左様でございますね」
ソウの助言に、アネモネが感心していた。
ユメがソウに何か言っていた。
「紙と画材は、俺から餞別を渡すよ」
「ソウ、かたじけない」
キボウが騒いで、ユメがキボウに何か言っておとなしくさせていた。
「何か私が用意するものを思い付いたらお知らせください」
「ハナノ様、ありがとうございます」
方向性が決まり、家に帰ってきた。
「良い時間だから、タコ焼き食べるか!」
「食べるにゃー!」
「たべるー、たべるー」
「飲み物でも用意するわ」
最初はすべてタコで作ったタコ焼きも、2度目はみんな好きなものをいれて、焼くのはソウだった。
キボウもタコのままのタコ焼きを食べていた。
美味しそうに食べている人がいれば、食べることにしたらしい。
キボウがニコニコしながらジャムの瓶を持ってきた。
責任持って食べるなら何入れても良いとは言ったけど、ジャムは合わないと思うわよ?とユリが止めた。キボウとしては、餃子の皮で出来たから、タコ焼きでも出来ると思ったらしい。
「それなら、こうしましょう」
ユリはソウに断って、ホットケーキの生地を作ってきた。
「これなら、ソーセージでもハムでもジャムでもチョコでも合うと思うわ」
型の油を良く拭き取り、バターを溶かして、ホットケーキの生地を入れ、好きな具を入れ、同じように丸く焼いた。
タコ焼きよりしっかりしているので、焼けたものを竹串に刺すと、キボウが喜んで受け取った。
もう一度タコ焼きに戻り、生地を流し入れると、ユメが作りたいと言い出した。
「私でも作れるにゃ?」
「少し慣れれば丸く出来るようになるぞ」
ソウが場所を代わり、ユメがタコ焼き器の前に座り、頑張ってひっくり返していた。
「丸くならないにゃ」
少しつぶれた形で、真ん丸にならないことが残念らしく、とても悔しがっていた。




