晩餐
「ユリ・ハナノ様、宜しければお食事はいかがですか?」
「え、ソウがよければ」
「かまわないよ」
「では、お招きにあずかります」
じつは、ちょっと期待してたの。
ここに来て、他人が作ったものをまだ食べたことがないので食べてみたかったのよね。
流石に割烹着は脱いだけど、平服で良いのかしら?
貴族の屋敷だとは思っていたから、動ける範囲で良いワンピースは着てきたけどね。
みなさんも着替えないようなので良いかな。
お茶をした部屋よりも更に高そうな飾り物がある部屋へ案内され、違和感無く寛ぐソウと、緊張したユリと、総勢10人の食事会だった。
見た目豪華な食事が提供される。
こういう盛り方は勉強になるなぁ。
お味の方は、良く言えば、素材をいかした味だった。
うん、自分で作った方が美味しい。
デザートは果物だった。苺と夏みかんのような感じだ。
果物は美味しい。ちょっと酸味が強めだけど。
そうか、こういう感じなのね。
味は濃いけど酸味の強い果物に、素材系料理。
色々改良前って感じなのね。
「ユリ・ハナノ様、いかがでしたでしょうか?」
ローズマリーに聞かれた。
「えっと、素材の味が生きていて美味しかったです」
「お気に召しませんでしたか?」
なんと答えるべきかと迷っていると、パープル侯爵が助け船を出してくれた。
「ローズマリー、プロの方に失礼だ」
「あ、あの、この国の決まりごとが良くわかりませんが、もしよかったら、今度食べに来てください」
「よろしいのですか?、伺ってもよろしいのですか?」
なにか無謀なお誘いをしてしまったのだろうかと、ユリは焦り、返答に困ってソウを見ると代わりに答えてくれた。
「侯爵がここにいるんだから、今、行くって言えば侯爵は許可するしかないよね」
「「お父様!」」
ローズマリー、ラベンダー、マーガレットが、侯爵を見つめる。
「ホシミ様がおっしゃるのだから行ってくると良い。くれぐれもご迷惑をお掛けしないように」
パールホワイト家とスカイブルー家の四人がうなだれる。
ソウがすかさず声をかける。
「そちらのお嬢さん達も、俺に誘われたと言えば来られるでしょ?」
「私達もよろしいのですか!?」
「パールホワイト伯爵とスカイブルー伯爵には、私からも話をしておくとしよう」
パープル侯爵が約束してくれた。
でも流石に、相席は無理そうなので、お店が休みの日に来ることになった。
一週間後の予定だ。
平和に食事会が終わり、帰り際、重さの有る小さな布袋を渡された。
なんだろうと中を見ると、小金貨が7枚入っていた。
7万☆?
教室代だとしても多すぎると思って返そうとしたら、他から依頼があったときに困るからそのまま受けとるようにとソウに言われた。




