贈物
朝起きてリビングにいくと、メモと一緒に巾着袋が置いてあった。
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ユリとソウとキボウへ。
贈り物を作りたくて頑張りました。
あまり上手に作れなかったけれど、
良かったら貰ってください。
ユメ
◇ーーーーー◇
青っぽい花柄の巾着袋、金糸の入った黒い巾着袋、葉っぱの模様の巾着袋。
私のはきっとこれね。と、ユリは青い花柄の巾着袋を取った。
最初の作品から見ると、天と地ほどの差がありそうな立派な巾着袋だった。ユリの片手を広げたくらいのサイズで、使い勝手が良さそうだ。
「何を入れようかしら。そうだわ!」
ユリは、ソウから貰った青い宝石「夢の瞳」の指輪をケースに入れ、巾着袋にしまい、部屋のベッドの頭側にある台に置いた。
魔道具の指輪は、普段 首から下げているが、宝石がついた指輪はケースにしまっている。昨日、一昨日は、外出するときには身に付けていたが、和服に宝石つきの指輪はかなりリスクがある。袖口の縫い目に引っ掛かってしまうのだ。
それでも、青い宝石の指輪は、ソウが婚約指輪としてくれたのだと思い、正装の時は使用していた。
あれ? そういえば、私から結婚を言い出したのだから、私もソウに何か贈るべきかしら?
ソウの身内ではない人で、相談できる人が思い付かず、あとで考えましょ!と思考を放棄した。
部屋から再びリビングに戻ると、ソウとキボウが起きていた。
「ユリ、ユメが作った袋貰った?」
「うん。青い花柄のを、私のかな?って思って貰ったわ」
「そうか。キボウ、欲しい方を先に取って良いぞ」
するとキボウは、ユリとソウの予想外に、金糸の入った黒い巾着袋を取った。
予想外だ!と思っていると、キボウがソウに渡して言った。
「ソウ、ユメとおなじクロネコいろー!」
すぐに、葉っぱの柄の巾着袋を取って、部屋をぐるぐる走り回っていた。
「結構文章喋ってたな」
「あ、うん。そうね。色々と意外だったわよね」
ソウは受け取った巾着袋を見て、感心していた。
「教わったばかりで、作れるものなんだな」
「飲み込みが早いわよね。私も感心したわ」
見るとキボウは、ユリが渡した木鈴と、ソウが渡した木の車をユメが作った巾着袋にしまっていた。ユリはなんだか、とても嬉しかった。
「お雑煮食べる? トーストが良い?」
「あるなら雑煮、わざわざ作るならトーストで」
「キボー、きなこー」
「キボウ君は、草餅をきなこで食べるという意味かしら?」
「あたりー!」
「ソウ、お雑煮はまだ少しあるから、お餅で良い?」
「あるなら、餅が良いな。草餅もまだある?」
「桜花餅以外はまだあるわよ。あ、でも、作るなら、2枚ある桜花餅も食べても良いけど」
餅つき機を借りてきたのだ。
「上手にできてから、食べようか?」
「あはは、確かにそうね」
しょっぱすぎたり、味がなかったり、作ってみないと分からない。
「おはようにゃ!」
「あら、ユメちゃん早いわね。おはよう」
「なんだか、目が覚めたのにゃ」
ユメはテーブルの上を確認すると、少しほっとした顔をした。
「ユメちゃん、巾着袋をありがとう! 青い花柄の袋をいただいたわ」
「俺は黒い袋を貰ったぞ!ありがとな!」
「キボー、もらったー! ユメー、ありがとう!」
「みんなが貰ってくれて良かったにゃ」
「とても上手に出来ていたわよ」
「驚いたよ」
「じょーずー、じょーずー」
ユメはとても嬉しそうにニコニコしていた。
「ユメちゃん、朝ご飯、今からなんだけど、食べられる?」
「何食べるのにゃ?」
「お餅を食べようと話していたのよ」
「桜の、あるにゃ?」
「ユメちゃん用に2枚残してあるわ」
「ありがとにゃ! それ食べるにゃ!」
三が日は、おせち料理とお餅を食べた。
夕飯は団らん系のメニューにしていた。
今日は何にしようかしら。カレーかしら?
すき焼きは、キボウが食べられなさそうで、バーベキューも、キボウが食べられなさそうで、肉食は、無理そうだ。
鍋物は、海産多めだから、やっぱりキボウが食べられなさそうで、ユリが悩んでいるとソウから提案された。




