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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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縫物

城から戻り、みんなでお昼ご飯を食べたあと、昨日約束した針仕事を教えることになった。


ユメが試しに縫ったと言う袋(?)は、縫い目が荒く、布同士がかなりずれてしまっていた。


「まったくできなかったにゃ」

「そうでもないわ。初めてなんでしょ? 針に糸を通せただけでもすごいわよ。私が初めて縫ったときは、糸は通してもらって、その上で、これよりもっとずっと酷かったわよ」

「練習したらユリみたいに上手になるのにゃ?」

「ユメちゃん、私が手縫いしたものは見たことがないでしょ? エプロンはミシンで作ったし、カーデガンは編み機だし、私も手縫いはそんなに上手ではないわよ?」

「にゃ! そうなのにゃ?」

「母がね、裁縫がプロ級に上手だったのよ。それで、上手過ぎて、絶対敵わないのが悔しくて、小学校に入る前にミシン覚えちゃったから、いまだに手縫いはあまり上手くないのよね。うふふ」

「ユリ、負けず嫌いだったのにゃ?」

「そうかもしれないわね。私の技術レベルは大したことないけど、知っていることは教えるわね」

「頼むのにゃ!」


ユメから話を聞いて、最大の原因は、長糸だとわかった。


「昔から『下手(へた)長糸(ながいと)上手(じょうず)小糸(こいと)』とか『下手の長糸上手のまち針』とか言ってね、長すぎる糸は絡まったり引っ掛かったり、上手に出来ないのよ。ほどほどの長さにして、仕付(しつ)けやまち針を使うのが良いわ」

「しつけってなんにゃ?」

「仕付け糸という、すぐに切れる糸で、仮縫いに使うのよ」


ユリは裁縫道具の中から、糸の束を持ってきた。


「これは、東京糸といって、普通の縫い糸」


白と黒の糸を見せた。


「こちらは、糸の()りが緩い、仕付け糸」


生成(きなり)色、桃色、黄色、水色の糸を見せた。


「この仕付け糸で、大まかに縫ってから、普通の糸で綺麗な目で縫うと、出来上がりがきれいになるのよ」

「なんでいっぱい色があるのにゃ?」

「例えば、いずれかで仮縫いして、もう少し大きくとか小さくとか変更するときに、違う色で縫えば、取り除くときに間違えないでしょ?」

「なるほどにゃー」

「普段は、まち針に刺さるのが嫌で仮押さえで適当に縫ってるから、そんな繊細な使い方は実際したことないけどね。主にミシンで縫う前に、仮押さえを仕付け糸で縫っているわ」

「ミシンの方が簡単なのにゃ?」

「まっすぐを大量に縫うならミシンが楽よ。細かいものを縫うなら手縫いの方が良いかな」


ユメはミシンを見つめていた。


「他にはコツはあるにゃ?」

「型紙をしっかり布に写すことかな。チャコや、チャコペンや、消えるマーカーで書くと良いわよ」

「そんなのがあるのにゃ」

「ミシンが使いたいなら教えるわよ」

「良いのにゃ!」

「ミシン出すから、端切れを出しておいてくれる?」

「わかったにゃ!」


ユリがミシンをセットし、糸をかけるだけにした。


「糸かけを覚えてね」

「頑張るにゃ!」

「番号の通りだから、間違いようはないけど、間違えると動きません」


ユリが糸をかけるのをユメはじっと見つめていた。


「大丈夫そう?」

「大丈夫そうにゃ!」

「一度外すから、かけてみてね」


ユリは、さっと糸を引き抜いた。

ユメはしっかり糸をかけられた。


「大丈夫そうね。次は下糸よ。これは、ボビン、これがボビンケース、この中にはめて、ミシンにセットします」


ボビンケースにボビンをはめて、ミシンにセットして見せた。


「そうしたら、ミシンを手で回して、下糸を出します。糸が上下揃ったら、縫い始められます。さあ、やってみて」


ユリは、ボビンケースを外しユメに渡した。

下糸も問題なくユメはセットした。


「ミシンのセットができたので、まずは端切れで糸の調子を見ます」


少し動かし縫って見せた。


「凄いにゃ! 最新にゃ!」

「これでも、かなり旧型なのよ。おばあちゃんのミシンなの。持ってくるつもりはなかったのに、捨てられなくて、間違って送る荷物に紛れちゃってたのよ」

「間違っても紛れてよかったのにゃ」

「本当にそうね。それでね。縫ってみた糸を見て、上糸と下糸の強さが釣り合うように、ここで調整します。ここまで覚えれば、およそ出来ると思うわ。下糸がなくなったら、また教えるわね」


ユリは調整を教えながらユメに席を譲った。

ユメは、ユリがいるうちに試し縫いをして、使えることを確認した。


「まち針で押さえるか、仕付け糸で大まかに縫ってからミシンで縫うと、失敗しないわよ。おすすめは、仕付け糸よ」

「ユリ、ありがとにゃ!」

「布は、どれを使っても良いけど、厚すぎるのと薄いのは扱いにくいからね。頑張ってね」


夕飯まで、ユメの自由にさせることにした。


「ユメは何か作れそうか?」

「ミシン教えたから、何かは作れると思うわよ」

「へぇ」


ソウが心配して聞いてきた。


「ご飯でも作りましょうか」

「そうだな」

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