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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

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牡蛎

「ユメちゃん寝ちゃったから、どうしようかしら」

「キボー、ユメみるー、キボー、ユメみるー」

「キボウ君、ユメちゃん見ていてくれるの?」

「あたりー!」


「まだ19時くらいだな。なにか予定有る?」

「お稲荷(いなり)さんを作るのと、保存している牡蛎(かき)をフライにしたいなぁと思ってるわ」

「それ手伝うよ。キボウ、ユメを頼んだぞ」

「わかったー」


ユリはソウと一緒に、寝るユメにうるさくならないようにと、2階のキッチンではなく店の厨房で、稲荷寿司とカキフライの準備をし、雑煮(ぞうに)を作りながら、ユメの事を話した。


「カエンちゃんによると、ユメちゃんの記憶は、一気になくなる訳じゃなく、だんだん失われるそうよ。私たち二人の事は最後まで覚えているけど、最後の頃には、カエンちゃんの事はわからなくなるって言っていたわ」

「付き合いの長さか?」

「そうみたい」

「すると、マーレイの事はわかるけど、イリスやリラの事はわからなくなるかもしれないのか」

「そうかもしれないわね」


ユメが一番認識するリラは、13歳の頃のリラではないかと思われる。

雑煮が煮るだけになり、カキフライに衣がついた頃、炊飯器のご飯が炊けた。


「ユリ、ご飯炊けたぞ」

「ボールにあけるわ」

「どうやって揚げに詰めるんだ?」

「ご飯の方を長細いおにぎりにしてから、入れるのよ」


油揚げを煮た出汁をご飯に合え、いりごまを加えてから、ちょうど良い大きさにまとめた。


「俺が詰めておくよ」

「ありがとう。お願いするわ」


稲荷寿司をソウに頼み、フライを揚げ始めた。

先に味をつけた大豆ミートのフライを作り、次にカキフライを揚げる。

ある程度揚がったら、皿に乗せ鞄にしまっていき、全て揚げ終わる頃、ソウの稲荷寿司も出来上がった。


「ソウ、カキフライ少し食べてみる?」

「食べる食べる!」


ソウにカキフライを提供し、ユリは片付けを始めた。


「カキフライ旨いな!」

「それは、良かったわ」

「他で食べるカキフライと何が違うんだ?」

「衣の厚みじゃないかしら?」

「衣の厚み?」

「商業的に作るフライって、小麦粉、卵、パン粉、じゃなくて、小麦粉を溶いたもの、パン粉、の衣で作るから衣が分厚いのよね」

「手間の問題なのか」

「私は衣が薄い方が好きだから、好みの問題じゃない?」

「俺もこっちが良いな!」

「好みが一緒で良かったわ」


雑煮以外を鞄にしまい、稲荷寿司は、半分をソウの鞄にしまった。


「カキフライも貰ったらダメ?」

「構わないけど、みんなで食べる頃に飽きちゃうわよ?」

「なら、少しで良いよ!」


ソウは、諦めないらしい。

ユリは仕方なく、ソウにカキフライも少し渡した。


「なら、5個ね」

「ありがとう!」

「あとは、屋根に上がるなら、温かい服装が良いわよね。ユメちゃんが羽織るものを用意しておくわ」

「そうだな。俺は屋根を見てくるよ。ソーラーシステムも乗ってるから、上がりやすい場所を見繕(みつくろ)っておくよ」

「あ、そうよね。上がれないかもしれない?」

「三角の屋根じゃないから、大丈夫だよ」


ユリは何となく、三角屋根の天辺に、みんなで跨いで並んでいる絵を思い描いていた。

そういえば、屋根がどうなっているかなんて、考えたことがなかったと思い至った。どうやら屋根は平ららしいと聞き、一人で安堵した。

転移前サーチをすれば、見えるのだが、ユリは思い付かなかった。


部屋に戻り、綿入り半纏(はんてん)を用意した。

そういえば、キボウの服はどうしようとキボウを探すと、リビングでコロコロと転がっていた。


「キボウ君、何してるの?」

「あそんでるー!」

「そ、そう。キボウ君、屋根に上ると寒いと思うんだけど、どんなものなら着る?」

「さむい? キボー、さむい?」

「寒いの平気だったりする?」

「あたりー!」


もしかして帽子とカーデガンは余計だったのかしら?とユリは心配したのだが、キボウは、ユリに貰った帽子とカーデガンがあるから大丈夫と言いたかったようだ。


「ユリ、屋根見てきたよ。東側にちょうど良い空間があるからそこで見よう」

「キボウ君が落ちたりしない?」

「ソーラーシステムが外から見えないように、70cmくらいの壁に囲まれているから、大丈夫だよ」


東側は店の入り口があるため、少し空間を開けてソーラーシステムを設置したのだ。


「寺がないから除夜の鐘もないし、明日のためにそろそろ寝るか」

「あ! そうね。除夜の鐘、無いのよね」

「明日は、6時半までに起きてくれ」

「はーい。おやすみなさーい」

「おやすみ」

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