冬箱
ソウを困らせるつもりはないので、その場では聞かなかったけど、とても興味があった。
欲しい訳じゃなく、持っていても不自然じゃないかが知りたかった。
ローズマリーが話しかけてきた。
「ユリ・ハナノ様、冬箱にご興味が有るのでしたら、もうひとつ、夏箱というのもございます」
「え?夏箱?」
「はい、40~60度位で保存できますのよ」
「それは、40~60度なのですか?それとも40度と60度で使用できるですか?」
ローズマリーがチラッとメイドを見ると素早くメイドか何かを告げた。
「40度と50度と60度で使えるようですわ」
「そういうのがあるのですね。大変勉強になります」
「お役に立てたのなら大変光栄ですわ」
他にも魔力家電があるのかしら?
今日は思わぬ収穫があったわ。
「次回はどうしますか?」
「次回もお付き合いいただけるのですか!?」
「え?他にも知りたいお菓子があるかと思ったのですが・・・」
「ございます、ございます!沢山ございます」
「何が良いですか?」
何と言われても、皆はお菓子が思い付かない。
お土産で食べたことがあるものしかわからないからだが、ユリは気がつかなかった。
「あのー宜しいですか?」
「はい、えーと、カメリアさん」
「先日、私達の兄が、魚の形をしたお菓子を持ち帰りまして、1つ頂きましたらとても美味しかったのです。あのお菓子は教えていただけますか?」
「あ、うーん。ローズマリーさん、メイドさんと話しても良いですか?」
「かまいませんが・・・、サリーこちらへ」
「かしこまりました」
さっきの服が違うメイドさんだ。
サリーさんというのね。
「サリーさん、お嬢様達が使える鉄板って用意できますか?今日の感じだと、火の周りはダメなのかなと思って」
「ご用意は可能ですが、お怪我される可能性があるものは難しいかもしれません」
「わかりましたありがとう」
「ローズマリーさん、ありがとうございます。カメリアさん、鉄板を使うのでやけどの恐れがあります。教えるのはかまいませんが、鍋をかけられる火があるところ、鉄板をおける火があるところが必要です」
「料理人の厨房のような場所でしょうか?」
「はい、そのものです」
「わかりました。ありがとうございます」
「お店で出したことはないですが、冷やす箱があるなら、冷たいお菓子を作りませんか?」
「冷たいお菓子ですか?どのようなものでしょうか?」
「果汁などをプルンと柔らかく固めたゼリーや、クリームで作ったミルクセーキに空気を含ませて凍らせたアイスクリームなど、色々あります」
「全く想像つきませんが、それらは体力は使いますでしょうか?」
あー、相当お疲れなのね。
「ゼリーは、子供でも作れると思います」
なんか、みんなの目がキラッと光った気がした。
「是非!ゼリーをお願いしますわ!」
「用意するものは、好きな果汁、グラニュー糖、ゼラチンです。器具は、秤、小ボール、小鍋、熱源、固める容器、冬箱です。ゼラチンは持ち込みます。果汁は、お茶や牛乳でも可能です。ほんの少しお酒を足すと風味が良くなります」
「あ、もう一度おねがいします」
「書いて渡します」
「ありがとうございます」
◇ーーーーー◇
牛乳(果汁など)
グラニュー糖
ゼラチン
ゼラチンの水
果実系の酒
火を通した果実など
秤
小ボール
大ボール
こし網
小鍋
熱源
レードル
ゴムベラ
固める容器
冬箱
◇ーーーーー◇
メイドさんが来て、パウンドケーキが焼けたと言っていた。
試食は私が作ったものでして、自分で作ったものは持ち帰るように言うと、少しざわめいた。
それでも試食は1つをカットしたもので足りるので、もうひとつある。
ローズマリーに小声で断って、サリーに渡した。
「足りないとは思いますが、皆さんでどうぞ」
目を見開いたまま固まってしまった。
直ぐに再起動したサリーが恭しく受け取った。
サリーがチラッと振り返ると、
「どうもありがとうございます!」
揃った声でメイド全員が挨拶した。
ちょっと驚いた。
次回の予定も決まり、帰ろうかと思ったら食事に誘われた。




