宿泊
ソウがカエンをつれて戻ってきた。
カエンは手土産を持っていた。普通の寿司折り4人前と、野菜寿司2人前。
「こんにちはー。差し入れでございます」
「いらっしゃい。これ、もしかして野菜寿司?」
「はい。ちょっとした伝から。うふふ。ユリ御姉様が召し上がるならそれで、要らないのならわたくしがいただきます」
「聞いたことがあって、食べてみたかったのよ。私がいただいても良い?」
「はい」
本物のお寿司にそっくりに野菜(植物)で作ったお寿司で、持ちかえりができない高級店のメニューだった。
「キボウ君、カエンちゃんがキボウ君も食べられるお寿司を持ってきてくれたわよ」
「キボー、たべるー?」
「全部野菜でできているのよ」
「たべるー、たべるー」
リラがちょうど戻ってきた。
「家に誰もいなかったので、書き置きしてきました」
「リラちゃん、お寿司持ってきましたよ」
「あ!カエン様、お寿司ですか!ありがとうございます!」
「せっかくだから、すぐにいただきましょう」
蓋を開けると、見た目は完全に普通の寿司だった。
「このイクラっぽいもの何かしら?」
「タピオカの だし醤油漬けらしいです」
「結構、イクラね。うふふふふ」
色の薄い醤油と、出汁と、赤い天然色素が入っているらしい。他に、みりんや、何かの油が入っている味がする。
「この漬け鮪っぽいのは?」
「なんと、ドラゴンフルーツの皮らしいです」
「え? あ!、そういえば聞いたことがあるわ! 茹でると食べられるって」
ドラゴンフルーツの皮を茹でて山葵醤油に漬けると漬け鮪っぽくなるらしい。
また、漬けたものを揚げ物にしても美味しいらしいのだ。
「この、鰻だか穴子だかに見えるものは?」
「お豆腐と海苔らしいです」
これは昔から有る精進料理のメニューだ。
「この、烏賊に見えるものは?」
「甘くないナタデココらしいですよ」
甘くない大きなナタデココは、見た目も烏賊みたいだ。
「この、貝類っぽいのは?」
「キノコらしいです」
「この海老っぽいものは?」
「ソフトグミらしいです」
甘くないと、お菓子感がなくなる。
「この卵焼きは?」
「湯葉と小麦粉だか片栗粉だかを合わせたものらしいです」
「この鰤っぽい切り身は?」
「それ、ビックリなんですけど、甘くないチョコレートの加工品らしいです」
「カカオバターで作った甘味の無い生チョコみたいな感じかしら?」
持ちかえり不可の理由が、これかもしれない。時間を置くと、温度でダレてしまうのだろう。
全体的にとても良くできていると思った。
でも、食べるのは一度で良いかな。慣れもあるかもしれないけれど、本物のほうがやっぱり美味しいと思う。
そりゃ、本物より美味しかったら、今ごろこちらのほうが流行っていることだろう。
「いかがでしたか?」
「とても勉強になったわ。どうもありがとう」
「おいしかったー、おいしかったー」
「キボウ君が美味しかったのでしたら、持ってきた甲斐がございます」
「カエン様、ありがとうございます! 私いただくばかりで何もお礼できませんが、私にできることがありましたら、何でもおっしゃってください!」
「何でもですの?」
「はい。私にできることならば」
「では、私にも 作っていただけるかしら?」
カエンは、リラの耳元で、内緒話で話したようだ。
「えっと、場所がわからないのですが」
「私が連れていくにゃ。いつなら良いにゃ?」
ユメには聞こえたらしく、ユメが介入していた。
「ホシミ様にうかがってみないと、あちらの都合がわかりません」
何やら、ユメとリラで、ソウに相談をしていたが、ユリには聞こえなかった。
サプライズか何かなのだろうと、ユリはあまり気にしなかった。
リラが帰り、作業室に布団を敷き、カエンは予定通り泊まることになった。
魔力を使わなければ意味がないので、溜めてきたらしい占いの仕事をしながらパウンドケーキを食べると言っていた。
使いきるレベルまで、魔法を使って魔力を減らすと、最大1/4ほど増える。魔鉱石に充填等は、最低限の容量までは増えるが、植物に関連する名前一つにつき、150p⇒300pになる程度である。世界樹様に守られた範囲で魔法を使わなければ、ほぼ300p以上にはならない。
ユリはミルクティーをだし、夜食におにぎりを食べるなら今渡します。トーストの朝ご飯を食べるなら8時までに、昼ご飯から食べるなら12時までに起きてね。と伝えた。




