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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

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草花

「ユリ、あれって」

「え? あ!本当だわ!」

「何があるのにゃ? 見えないにゃ」

「なにー? なにー?」


ソウが示した方向には、細い木の幹に絡まる蔦のような緑に青い花が見えた。

そばまで行くと、野生で咲いているらしいバタフライピーだった。


「さすが暑い地方だとまだ咲いているのね」

「日本列島よりも南だからな」

「あ、プルメリアかしら」

「白くて、中心が黄色いのにゃ?」

「それよ。あ、極楽鳥花!」

「ユリ、色々知ってるのにゃ」


色とりどりのアオイ科の花が見えた。


「これは知ってるにゃ。ハイビスカスにゃ!」

「凄くいっぱい咲いているわね」

「ユリ、赤くて酸っぱかったお茶は、この花にゃ?」

「名前は一緒だけど、お茶のハイビスカスは、ローゼルという別の種類よ。それに、花ではなく、(ほう)(がく)なのよ」

「何でお茶は、ハイビスカスって呼ぶのにゃ?」

「ローゼルの学名に、ハイビスカス って入っているのよ」

Hibiscus(ハイビスカス) sabdariffa(サブダリファ)だな」

「ソウも凄いにゃ」


花を見ていると、農園の人が探しに来た。


「ホシミ様ー! ここにいらっしゃいましたか!」

「どうした?何かあった?」

「お茶になる花などはいかがかと思いまして」


ユリが食いついた。


「お茶になる花って、ローゼルですか?アンチャンですか?カモミールですか?」


「よく、ご存じですね。全てございます」

「ユリ、アンチャンってなんにゃ?」

「アンチャンは、バタフライピーよ」


以前、ラベンダーが購入したときに、アンチャンと言われたと話していたので、ユリもそれに習って現地の呼び方で尋ねたのだ。


「ローゼルは、乾物と、生がございます」

「生ローゼルください!!」

「は、はい!」


ユリの食いつきに、農園の人は少したじたじになっていたが、急いで戻るために歩きながら話した。


「乾燥してなくてもお茶になるのにゃ?」

「生ローゼルは、ジャムのほか、塩漬けにすると梅干しみたいになるのよ」

「塩漬けでございますか?」

「ちょっと説明が難しいけど、調味料に近い使い方で、漬け物の一種です」

「作り方は教えていただけますか?」

「洗って、種を抜いて、重量の10~15%の塩と混ぜるだけです。塩が馴染むまで置けば出来上がりです」

「ありがとうございます。今度作ってみます」


農園につくと作業小屋に案内され、出荷前の乾燥したものや、生ローゼルがたくさん置いてあった。


(つぼみ)みたいにゃ」

「でも、これは花が終わったあとの萼なのよ。中に種が入っているわ」

「ユリ、これは何にゃ?」

「たぶん、レモングラスだと思うわ」

「さすがでございますね。殆どの方は、乾燥したレモングラスをご覧になって、藁や雑草とおっしゃいます」

「知らなければそうよね」


料理やハーブティーにでも使ったことがない限り、レモングラスを見てハーブだとは思わないのだろう。イネ科の草なので、枯れた(すすき)の葉のように見えるのだ。


「何をいかほどご用意いたしますか?」

「ローゼルの生が10kg、乾燥が2kg、バタフライピーの乾燥が2kg、レモングラスの乾燥が3kg、レモングラスは可能なら根に近い部分が良いです。無理なら葉で良いです」

「ありがとうございます!! すぐにご用意いたします!!」


大慌てで数人がバタバタと用意を始めた。

見学に来る普通の人は、こんなに買わないらしい。ユリは、バタフライピーをリラにも分けようと思い、多めに頼んだのだ。


ローゼルが、予想より多かった。軽いのでかさばるようだ。

渡されるものを、ユリが片っ端からしまっていき、全て受け取った。


「ユリ、バタフライピーの苗は買わないのにゃ?」

「家の方では、もう時期的に育たないのよ。種があれば良いんだけどね」

「あの、種ございます。お持ちになられますか?」

「ありがとにゃ! 育ててみるにゃ!」


ユメがバタフライピーの種(など)を譲って貰った。たくさん買ったので、サービスで分けてくれたのだ。

バタフライピーの種は、黒い豆だった。


「なくなったらまた来ますね」

「はい。お待ちしております」


ユリはキョロキョロした。


「あれ?ソウとキボウ君は?」

「さっき、キボウが外に行くのをソウがついていったにゃ」


ユメと一緒に外に行くと、ソウがキボウの通訳をしながら農園の人に感謝されていた。

どうやら、調子の悪い植物に、キボウが直接意見(?)を聞いて伝えたらしい。


「あ、ユリ、もう買い終わったの?」

「ええ。良い物がいっぱいだったわ」

「種貰ったにゃ!」

「ユメー、たねー?」

「バタフライピーの種にゃ」

「ユメ、うえるー?」

「おうちに帰ってから植えるにゃ」

「あ、ユメちゃん、春になってから植えてね」

「わかったにゃー!」


「今日は帰るか」


みんなが転移して家に戻ってきた。

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