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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

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果物

今日は花見の予定だ。

足湯に行ったとき、ソウがユメに提案した選択肢に有ったらしい、南国の花を見に行くことにしたのだ。


予備知識として、25~30度くらいあるらしく、夏物を着て、薄い上着を羽織る服装が良いらしい。

早朝から向こう(元の国)へ出掛け、無人の24時間営業の店で色々買ってきた。


ユリは昨日のうちに、お弁当箱に、お弁当を作った。

今までのものは、お弁当として食べてはいるが、普通の食事である。わざわざお弁当箱にいれ、持っていくときに冷まして持っていく予定なのだ。


ユリは、アロハシャツを用意した。

ユメの分も準備し、麦わら帽子とサンダルも揃えた。


キボウにも聞いてみたが、今着ている服のままで、着替えないらしい。でも、帽子だけほしいと言われ、キボウの分も麦わら帽子を用意した。


ソウは、帽子と、サングラスと黒い開襟シャツを着て、少し怪しい人風だった。

傍目からは、ユリも子供に見えるため、怪しいおじさんに連れられた子供3人に見えることだろう。


ユメが起きたら出掛けようと思っている。


場所の確認のため、先に、ソウに一度つれてきて貰った。夏のように暖かく、いや、むしろ暑く、寒暖差に服をどうしようかと悩んだのだった。


家の中で夏の服を着て、そのまま出掛けようと言うことになり、ユリたちは、帽子までかぶって用意済みなのだ。


「おはようにゃぁー」


少し眠そうなユメが起きてきた。


「おはようユメちゃん。すぐ出掛けて大丈夫?」

「わかったにゃ。服、変えてくるにゃ」

「私とお揃いを用意したけど、どう?」


ユリがアロハシャツを渡すと、喜んで受け取っていた。


「ありがとにゃ! すぐに着てくるにゃ!」


ユメはすぐに着替えて出てきた。


「ぴったりにゃ! 似合うにゃ?」

「ユリとユメ、姉妹みたいだな」

「にあうー、にあうー」

「ちょうど良くて良かったわ」


「さ、出掛けるぞ、忘れ物無いか?」

「はーい」「ないにゃ!」「なーい、なーい」


ユリがユメをつれ、ソウがキボウをつれ転移した。


「う、朝より暑いわね。上着要らないわ」


ユリはみんなから要らないものを回収し、指輪の鞄に詰め込んだ。


「喉が乾いたらすぐに飲むのよ」


ユメとキボウに水筒を渡した。

ユメは、持ってきたリュックにしまい、キボウは、肩から斜めに下げていた。


「少しだけ歩くぞ」


植物園のような所に行くらしく、ソウが歩くと言った。

どこかへ行かなくても、周りは花が咲き乱れ、美しい蝶も飛んでいる。


「どこに行く予定なの?」

「農園」

「農園にゃ?」

「フルーツ農園を見学に行く予定」


フルーツ農園? 南国フルーツの農園なのかしら?


「見学の許可は取ってあるけど、案内は居ないと思う。ほらついたぞ」

「これなんにゃ?」

「パイナップルだわ!」

「本当にゃ!あそこに生ってるにゃ!」

「ユメ、ほしいー?」

「これは採っちゃダメにゃ」


一面のパイナップル畑だった。


「ホシミ様ー! お待ちしておりました!」


ずらっと人が並んで、頭を下げていた。


「待っててくれたの? 待たせて悪かったね」

「お越しいただくのを楽しみにしておりました。味見などいかがですか?」

「なら、買うから、一つ採って良い?」

「構いませんが、収穫は大変でございます」

「キボウ、一つもらって良いって」

「いーのー? パイナーッポー!」


キボウがパイナップルに呼び掛けると、パイナップルが一つ飛んできた。


「うわ!キボウ、凄いな」

「キボウ君、凄いわね」

「もしかして、どんな植物でも呼び掛けると来るのにゃ?」


ユリたちは少し驚いただけだが、農園の人たちは、腰を抜かすほど驚いた。


一番早く復活した人が、ナイフとカットボードを持ってきてくれた。

切ってくれようとしたみたいだったが、ユリが手を出したので、条件反射でナイフとカットボードを渡してくれた。


ユリが切り分け、ユリは小皿と姫フォークをだし、ソウとユメとキボウに渡した。


「うわ!これ、めちゃくちゃ旨いな!」

「本当にゃ、もの凄く美味しいにゃ」

「あら、本当。今まで食べたどのパイナップルよりも美味しいわね」

「キボー、えらい? キボー、えらい?」

「キボウ凄いにゃ」


「味が違うのですか?」

「どうぞと言うのも変だけど、どうぞ」


ユリが小皿と姫フォークを渡すと、農園の人も食べてみた。


「うわ!これは、大当たりだ!」

「うちのパイナップルって、こんなに旨いのか」

「あのー、どうやって選んだのですか?」

「聞いても良いけど、答えがわかるかは期待しないでくれ。キボウ、どうやって選ぶんだ?」

「パイナーッポー!」


もう一つパイナップルが飛んできた。


「この通りだ、キボウにしかできないので、理由とか、技の伝授は無理だと思う」

「そ、そうでしたか」

「ユリ、いくつ欲しい?」

「10個くらいかしら」

「10個買っていっても良い?」

「は、はい!いくつでも構いません。あの、できれば、一ついただけませんでしょうか?」

「あ、じゃあ、これを」


今キボウが採ったものを渡した。


「キボウ、あと10個頼めるか?」

「いーよー。パイナーッポー!」


パイナップルが10個飛んできて、受けとる大人が、慌てた。


ユリが代金を払い指輪の鞄にしまうと、違うフルーツが植わっている場所を案内すると言われた。


巨大な月下美人のような、ゲームに出てくる敵キャラの木のような、サボテンぽい木がある場所に案内された。


「ピタヤはご存じですか?」

「あ!ピタヤ!ドラゴンフルーツ!」

「え、これがドラゴンフルーツなのか?」

「ドラゴンフルーツって、なんにゃ? カニバサボテンみたいにゃ」

「ユメー、ほしいー?」

「キボウ君に採ってもらって良いですか?」

「はいどうぞ、そして一つ分けてくださると」

「ユリー、なんこー?」

「うふふ、私これ好きなのよ。赤肉なら20個くらい、白か黄色なら10個くらいかしら」

「ピターヤ!」


キボウが叫んだ。

ユリの手元に20個、ソウの手元に10個、ユメの手元に10個飛んできた。キボウは一つだけ自分で受け取り、農園の人に渡しに行った。


「あかー」

「ありがとうございます!赤肉なのですね」

「ユリあかー、ユメーしろー、ソウきいろー」

「別けてくれたのね。キボウ君、どうもありがとう!」


「ご存じかもしれませんが、キボウ様がお採りになったものは完熟でございます。お早くお召し上がりくださるようお願い致します」

「はーい。おいくらですか?」


ユリが支払うと、次を紹介された。


「あの、バナナはご存じですか?」

「はい。あるんですか?」

「少し歩きますが、何種類かございます」

「生食用で、お願いします」

「かしこまりました」


「ユリ、これは食べないのにゃ?」

「食べてみる? ちょっと切りましょう」


ユリは自前のナイフとカットボードを取りだし、ドラゴンフルーツを半分に切った。


「にゃ!真っ赤にゃ!」


更に半分に切り、食べやすく切り目をいれ、皿に乗せフォークをつけて渡した。


「酸味の無いキウイフルーツみたいにゃ」

「うわ、なんだこれ、甘いな。俺が知ってるドラゴンフルーツは、あっさりして味がない感じだ」

「完熟ドラゴンフルーツは、甘いのよ。服につくと落ちにくいから気を付けて食べてねー」

「ユリ、よかった? ユリ、よかった?」

「キボウ君に感謝でいっぱいよ」


なにか協議したらしく、馬車をすすめられた。

馬車は激しく揺れ、はじめてユリは、ソウの馬車の飛び抜けた優秀さに気づいたのだった。


20分くらい乗り、もう限界と思ったところで、馬車が停車し、到着したようだった。


「帰りの馬車は要らないよ。ありがとう」


ソウは、御者にチップを払っていた。


バナナは、高い木に生っていた。植物学的には草らしいが、便宜上、木と呼んでいる。


「木に登り、お取りしますか?」

「キボウ、バナナも採れるか?」

「ユリー、なんこー?」

「どのくらいいただいて良いのかしら?」

「10個でも100個でも、お好きなだけ構いません」

「キボウ君、100個くらいでも大丈夫?」

「いーよー。バニャーナー!」


20本くらいついた房が5房、飛んできた。

今度は、静かにゆっくりと手前の草の上に落ちてきた。

キボウは一本だけ取り、案内人に渡していた。


頼むのを忘れていた案内人は、受け取り喜んでいた。


「パイナップル農園に戻るぞー」

「はーい」「わかったにゃ」「わかったー」


ソウが案内人をつれ、各自戻ってきた。

案内人は少しくらくらしていたが、転移を経験できて嬉しそうだった。


「お弁当食べられる場所はありますか?」

「東屋ですが、テーブルと椅子がございます」


案内してもらうと、ひさしもあるし、花も見えるし良い場所だった。


「少しの間お借りしますね」

「ごゆっくりどうぞ」


ブーゲンビリアとハイビスカスが見えた。


「さあ、お弁当を食べましょう」


ユリが、いかにもお弁当というお弁当を取り出した。


「お弁当にゃ!」

「ユメ、良かったな」

「ユメー、よかったねー」

「ユメちゃんが喜んでくれて良かったわ」


みんなで出掛けてお弁当を食べたかったと言っていたユメは、大満足だったらしい。

デザートには、完熟バナナを食べた。


「バナナも旨いな! 今まで食べていたのってなんだったんだろうな」

「流通するのは、完熟ではないからでしょうね」

「キボウ、ありがとにゃ」


「食べ終わったら、その辺見学しよう。知らない花も咲いていると思うよ」

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