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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

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鏡餅

ペタン、ペタン、「うひゃー!」

ペタン、ペタン、「うひょー!」


「嬢ちゃん、怖いなら無理に参加しなくても、花野さんに代わってもらいな!」


ペタン、ペタン、「いえいえー!」

ペタン、ペタン、「がんばります!」

ペタン、ペタン、「ひょえー!」

ペタン、ペタン、「うひゃい!」


「無理そうなら、代わるわよー」


ペタン、ペタン、「大丈夫です!」

ペタン、ペタン、「やりたいです!」

ペタン、ペタン、「ひゃい!」

ペタン、ペタン、「はい!」


そして、リラは、合いの手をやりきった。


「もう良いだろう。花野さん、頼んだ!」


監督していたヒサシ・ハナダが、ユリに餅を頼み、やりきったリラは、少しのびていた。

ユリは餅を袋二つに分け、伸し餅を作った。


「なあ、その鍋はなんのためだ?」

「素人が麺棒で伸すより、平均的に平らになります」

「成る程なぁ」


大まかに麺棒で伸した後、 底が平らな鍋で厚みを平均にしていたのだ。クッキー生地と違い、厚み定規では伸し難い。

鍋で大体調節した後、板を乗せて更にきれいに平らにしていた。



先程との違いは、餅の冷め具合の差である。


次の餅はユリが合いの手をし、合いの手はリラと交代しながら1時頃までに5回餅をついた。


「さあ、しばらく休憩して、このお餅は皆さんでいただきましょう」

「花野さん、こんなに(二升も)食えないぞ?」

「食べきれない分は、鏡餅にしたいと思います」

「おー、鏡餅!」


食べ終わるまで待ってから伸し餅にすると、固くなり伸すのが大変になる。逆に鏡餅は、少し置いてからの方が、きれいにまとまる。あまり出来立て熱々だと、丸めたものが、だらんと伸びてしまうのだ。


「あんこ、大根おろしとお醤油、砂糖入りきな粉、砂糖入りすり胡麻、焼き海苔、簡単なお雑煮もあります」

「うおー! 豪華だな!」

「ユリ、何手伝えば良い?」

「厨房に入れない人もいるから、用意してある鍋に使うお椀や取り皿を持ってきてもらえると助かるわ」

「了解!」


ソウは、厨房に入ることができるリツ・イトウと、カナデ・サエキをつれ、ユリが用意した皿や雑煮の入った鍋を持ってきてくれた。


リラと二人で、手を水で冷やしながら、餅を食べやすい大きさに千切り、皿に入れていく。10人前だ。

ユメが気を使って、パープル侯爵のために、フォークも持ってきてくれた。


「嬢ちゃん、箸が使えるのか!さすがハナノさんのところの弟子だな」

「はい!ありがとうございます!」


リラが大根おろしを箸で分けているのを見て、イチロウ・モリが感心していた。リラの見た目は西洋人風で、完全にこの国の女性なので、箸を使っていると驚かれる。


店で座って食べてもよかったのに、なぜかみんなその場で食べていた。

ソウが出していたキャンプ用の椅子つきテーブル3台に、ソウは、気を使ってか、パープル侯爵と座っていた。パープル侯爵に気を使ったと言うより、リラに気を使ったらしい。ソウとユリとユメとキボウで座ってしまうと、パープル侯爵とリラが二人で座ることになり、いくらなんでも無理そうだと思ったようだ。


ユリが忙しかった頃に、ユメが並べてくれたらしく、移動暖炉が複数台あり、外でも温かかった。


「ユリー、なにー?、なにー?」

「お餅よ。少し前に同じようなものを食べたでしょ?」


キボウが皿に乗った色々な餅を見て喜んでいた。


「ユリ様、前回無かったものは、どうやって食べるのですか?」

「お雑煮は、お餅を入れて食べるよの。慣れないと少し食べにくいかもしれないから、汁物として別に食べても良いのよ」


少し入れて食べてみたリラは、飲み込むタイミングがわからないようで、雑煮は断念していた。


「甘いのも美味しいけど、辛いのも美味しいです」

「ソウ見てくるにゃ」


ユメが、ソウを気遣って向こうのテーブルに様子を見に行った。


「おかわりする人がいなければ、残りは丸めます。やってみたい方は参加してください」


面白がって、全員が参加した。


「餅取り粉を手につけて、手のひらの小指側に少し力をいれるようにしながら丸めると、きれいに丸まります」

「意味はわかるけど、丸くならん」

「嬢ちゃん、上手いな? やったことあんのか?」

「無いです。肉まんで覚えました!」

「ハナノさんの所の弟子、有能だな」

「師匠が良いのです!」

「ははは、そりゃそうだ」


リラがすっかりみんなと仲良くなっていた。


「お店をされている方は、もう少し大きいのがほしいですよね?」

「有るとありがたいな」

「次の二升分は全部鏡餅にする予定なので、どのくらいのサイズにしますか?」

「うちは、一升鏡餅を毎年飾っているんだが」


ヒサシ・ハナダが少し申し訳なさそうに言った。


「四(ごう)を一つほしい」


イチロウ・モリは四合を希望した。


「他の方は、先程の一合鏡餅だけで良いのですか?」

「かまわない。店をやってるわけではないから、ひとつあれば充分だ」

「では、残りは、六合は大きすぎるから三合を二つ作りましょうか」


ユリが蒸し上がった餅米を持ってきて、再び餅つきを始めた。

つき手にヒサシ・ハナダと、イチロウ・モリが入り、ユリが合いの手をして、出来上がると、鏡餅に各自が形にした。


次の分をリラが持ってきて、リツ・イトウと、カナデ・サエキがつき、出来上がった餅の半分をユリは受け取り、塩抜きした桜花を混ぜた。


「花野さん、面白いもの作ってるね?」

「向こうにいた頃、毎年作ってたんです。桜花入りのお餅」

「伸し餅なのか?」

「いえ、ナマコ餅にします」

「次のはどうするんだい?」

「草餅も、ナマコ餅にする予定ですが、伸し餅の方が良いですか?」

「ナマコ餅で良いよ」


ナマコ餅とは、長方形に丸めた餅をおいておくと、だらんとしてナマコのように見えるからそう呼ばれるらしい。


蒸し上がった餅米を潰した後、よもぎを混ぜ、つきはじめからよもぎ餅としてついていく。


出来上がったよもぎ餅は、四等分して、三つをナマコ餅にし、一つをみんなで食べた。


「独特な香りが美味しいですね」

「リラちゃんは、何でも食べられて偉いわね」

「食べると偉いのですか?」

「見た目で躊躇する人の方が多いでしょ?」

「ユリ様が美味しいと言うものは、みんな美味しいですから」


そのまま持ち帰るには、餅が柔らかすぎるので、後日配達することになり、解散した。

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