耳飾
「ただいまー」
「お帰りにゃ」
「ユリ様、ホシミ様、おかえりなさーい」
「おう、ただいま」
「あら、プラバン作ってたのね。ちょうどよかったわ」
ユリは買ってきた文具やパーツ類を取り出した。
「うわー、これ、なんですか?」
「アクセサリーパーツね。リラちゃんにプラバンを作らせたら、きっとすごいのを作るだろうって、ユメちゃんと話したのよ」
「キラキラですね!」
「出来ているの、とりあえず焼きましょう」
書き終わっているものをユリはオーブンで焼いた。
じっと見ていたリラが、ぐにゃぐにゃになったと騒いでいた。
「ちゃんと平らになった!」
「取り出すから少し下がっていてね」
ユリはオーブンシートのまま取り出し、そのまま冷やした。
「少ししたら触って大丈夫よ」
「うわー! 凄ーい! ユリ様、売れそうですね」
「作って売るの? 好きに書かせて焼いて渡すの?」
「はい! 書いてもらいます」
「材料は用意してあげるから、商売はリラちゃんがしたら良いわ」
「釜で焼けますか?」
「確か、160度~220度だから、釜だと熱すぎるかもしれないわ」
「なら、私がここにいる日にここで」
「構わないわよ」
ユリは、透明のプラバンのほか、白いものや黒いものをリラに渡した。
「白いプラバンは、焼くと厚みが出るから両面に書けるわよ」
「ユリ、これは何に使うのにゃ?」
ユメが、除光液と綿棒を持ってきた。
「油性マジックではみ出した線や下書きを消したり、直すときに使うのよ」
「直せるのにゃ!?」
「ユリ様、これは何に使うものですか?」
「これはバレッタ金具ね。今やって見せるわ」
ユリは1/3程度の大きめのブラバンを楕円に切ってそのまま焼き、取り出したあと、オーブンシートを台に置かず、手に持って少したるませたまま冷やした。
「これに、この金具を取り付けて、 はい、できあがり。ここを押して、こうして使います」
バレッタを髪に留めて見せた。
「いま、時送りですか?」
「そうよ。絵を描いてから作っても良いし、形を作ってから何かを貼り付けても良いわ」
ユリは布を持ってきて、バレッタを包むようにして仕上げた。
「これ、売れそう」
「リラ、どんだけ商売したいのにゃ」
「さっき作った飾りに、キーホルダーパーツか、根付けパーツか、イヤリングパーツをつけましょう」
使い方を説明すると、キボウは、キーホルダーパーツで、ユメは根付けパーツで、リラはイヤリングパーツを希望だった。
ユリは、ペンチでマルカンと各パーツを取り付け、みんなに渡した。
「凄ーい! 王族の方のピアスみたい!」
「うん、まあ、そうね。耳飾りと言う意味なら同じものだわ」
「そうなんですか!?」
「ピアスは穴を開けないと使えないけど、イヤリングは挟むタイプだから、耳に穴を開けなくても使えるのよ」
「ユリ様これはなんですか?」
「これはヘアクリップね。リラちゃんが作っていた花とかをここにつけて、髪の毛をとめるのに使います」
「ユリ様、この色鉛筆の中心だけみたいな四角いのはなんですか?」
「それは、パステル。色鉛筆と使い方は同じよ。少し使ってみましょう」
ユリはまんべんなく紙ヤスリで擦った透明のプラバンを切り込みの甘いハートが5つ並んだような花びらの花形に切り抜いた。花びら部分に、放射状の線をカッターナイフでつけ、花びらの外回りを青く、中心部分を白くパステルを使って色付けした。花の中心をリーチの長いペンチタイプのパンチで3mm穴を開け、焼いて、大きめのスプーンの上で冷ました。
フラワーロンデルをパールビーズと針金で固定し、花の中心に通した。
「はい、ネモフィラ。こういう飾りをつけるのよ」
「凄い!」
「こんな感じで桃色で作って、昔、桜を大量に作ったわ」
「使ってみても良いですか?」
「好きに使って良いわ。無くなる前に教えてね」
「ありがとうございます」
ユリは、朝ユメにおいていったご飯が残っているのか気になった。
ユメが出掛けた先で振る舞えるようにたくさん魔道具のかばんに入れて渡したのだ。
「ユメちゃん、ご飯、残ってる?」
「3食分しか減ってないにゃ」
「夕飯もそれで良い?」
「一つしか食べてないから大丈夫にゃ」
「飲み物だけ作りましょう。リラちゃんはどうする?食べていく?」
「え? もうそんな時間ですか?」
「食べるには早いけど、作るならそろそろ作る時間かしらね?」
「うわ、帰ります。今日は、クララさんが作ってくれるので、作る心配はないんですけど、せっかく作ってもらうので、向こうで食べます」
「なら、時間ギリギリまでプラバン作っていると良いわ」
焼き方も教えたので、リラは勝手に焼いて作っていた。
「ユメちゃん何飲む?」
「ちらし寿司食べたいにゃ。お茶が良いにゃ」
「俺、ジンジャエール」
「キボー、ジャッジャール」
「ん? キボウ君、もしかして、ジンジャエール?」
「あたりー!」
「キボウのそれは、ジンジャエールだったのにゃ・・・」
「あら、ユメちゃん、聞いたことがあったの?」
「お茶以外に飲みたいものを聞いた時に言われたけど、わからなかったにゃ」
ユメが、同じのを飲む人が居るときに教えてとキボウに言ったので、キボウは言ったのだった。
「リラちゃんは何か飲む?」
「ユリ様と、同じものをお願いします」
「あ、リラ、それだ! 」
「リラ、冴えてるにゃ」
「何よ、ソウもユメちゃんも、飲みたいものを飲めば良いじゃない」
少し拗ねたユリは、食品スーパーでついでに買った酒粕を使って、甘酒を作った。
「はい。メニューに無い飲み物作ったわよ」
「お! 甘酒!」
「懐かしいにゃ」
「お酒なんですか?」
「多少アルコール分は残っているけど、ラムレーズンのアイスクリームより少ないくらいよ」
少し飲んでみたリラは、なんとも言えない顔をした。
「口に合わないなら無理に飲まなくて良いのよ」
「なんだか、美味しいご飯をのみものにしたような不思議な味です」
「日本酒、あ、ヒノモト酒を作るときに出る、麹で発酵させたお米だから、ご飯のような味ね」
「本当にご飯なんですか!」
「ユリ、ご飯、どれ食べるのにゃ?」
「一番残っていそうなもので良いわよ」
「ソウは、鶏丼、とろけるチキンカレー、ちらし寿司、ホットドッグのどれが良いにゃ?」
「カレーをくれ」
「なら、私は鶏丼を食べるわ」
「私はそろそろ帰ります。ごちそうさまでした。あ、ホシミ様、お餅作るのはいつですか?」
「明日の予定だよ」
「では、また明日参ります」
「明日もよろしくねー」
「はいー」
リラは帰っていった。
キボウ用のご飯と、ソウとキボウにジンジャエールを作り、自分とユメ用に冷茶を出した。




