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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

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324/690

褒章

ユリが戻ると、全員厨房にいた。

お店の片付けも殆ど終わったらしく、後はご飯だけらしい。


「これ、カエンちゃんから預かりました」


ソウとユメとリラに、預かってきたプレゼントを渡した。


「え! 私の分迄有るんですか!?」

「カエンちゃんより年下だからかな?」


「あれ?そういえば、キボウ君はどこ行ったの?」

「外の販売手伝ってたぞ、歌いながら。クッキーが少なくなって、こっちに戻ってきたはずだけど」

「キボウ様なら、休憩室にいると思います」


ユリが覗きに行くと、ユリを見て寄ってきた。


「やすんだー! キボー、クッキー、てつだう?」

「どうもありがとう。もうお店終わりで、ご飯の時間よ」


キボウをつれてくると、今度はユメに頼まれた。


「ユリ、カエンにありがとうって伝えてにゃ」

「カエンちゃんなら、来週も来ると思うから又会えるわよ」

「来週は、来月にゃ」

「うん。わかったわ」


カエンが来るのは来週の水曜日木曜日で、29日30日だけど、今日の一週間後は31日だから、夜来たらユメには会わない可能性もある。


「ユリ、カエンって又来るの?」

「魔力を増やしたいそうよ。あ、名前聞くの忘れてた!」

「明日変えるのにゃ?」

「来週でも良いけど、城に行くのはEの日(だいちのひ)なのよね」

「とりあえず、夕飯食べるのにゃ」


「リラちゃん、任せちゃったけど、どうもありがとう」

「ちゃんとキボウ様のお肉なしも作りました」

「リラ、ありがとう、キボー、ありがとうした」

「さあ、飲みたいものはなんですか?」


無理矢理。無いものを考えて頼むメンバーであった。

その中でもマーレイは、ジンジャーエールをニコニコして自分で作っていた。


みんなに冷たい飲み物を作った後、熱い紅茶にたっぷりジャムをいれて自分用をつくったら、恨みがましい目で見られて、ユリだけが訳がわからなかった。


「飲みたいならみんなの分も作るわよ?」



リラが作ってくれたご飯は、鶏肉の煮込み料理だった。キボウの分は、芋の煮込みらしい。

トーストと一緒に食べた。


「唐揚げ、余ってるけど、食べたい人いるかしら?」

「食べまーす」


リラが最初に手をあげた。


「食べるにゃ!」

「俺も食べるー」

「マーレイさんとイリスさんも食べるわよね?」

「ありがとうございます」「はい!」

「キボウ君には、ブロッコリーの唐揚げね」

「ユリ、ありがとう、キボー、ありがとうした」


ユリは、普通の唐揚げと、チューリップ唐揚げを出した。


「カエンちゃんにも、チューリップ唐揚げ、いくつかあげてきたのよ 」

「カエンに? そういえば本家に行くと、いつもこれ有ったな。俺、それだけ食ってた気がする」

「へぇ。カエンちゃん、あげたい人がいるって言ってたわ」


「食べやすくて美味しいにゃ」

「そうね。これ、食べやすいわよね」

「今度お店(ベルフルール)で出します!」

「ユリ様、どうやって、お肉を骨にくっつけるのですか?」


イリスが質問してきた。


「これはくっつけたんじゃなく、剥がさなかったのよ。鳥の手羽先部分の肉を、骨を残したままひっくり返すのよ」

「想像もつきませんが、とりあえず、難しそうです」

「今度教えましょうか?」

「ありがとうございます。リラに聞いてもわからなかったら、お願いいたします」

「はーい」


リラは詳細な作り方を書いていたので、きっと大丈夫であろう。



「では、年明けは、10日Fの日(かえんのひ)からです。又よろしくお願いします」


ユリは紙袋をリラとマーレイとイリスに渡し、リラにはレギュムとクララとグランの分も頼み、解散をした。途端にお店が静かになった。


「ソウ、パープル侯爵の所に行きたいんだけど、何持っていけば良いかしら?」

「あー、俺、シャンパン持ってるからそれ持っていって、むこうで開けようか?」

「良いの?」

「ユリあんまり飲まないし、ユメも、あれ? ユメって、酒飲むの?」

「飲めるけど、あまり飲まないにゃ」

「キボー、のめなーい」

「ほら、俺しか飲まないのに開けると残るしさ」

「わかったわ。生チョコでも持っていきましょう」

「え?まだあるの?」

「私の鞄に少しね。足湯に行ったときのおやつの残りよ」


「キボウはどうするにゃ」

「キボウ君、パープル侯爵の所に行くけど、一緒に行く?」

「キボー、いっしょー、ユリいっしょー」

「一緒に行きましょう」


パープル邸に転移した。


ソウの部屋でベルを鳴らすと、すぐにメイドが来て、執事を呼んできた。

執事の案内で大広間に来ると、すでに席が用意されていて、なんと、ラベンダー迄来ていた。


一通り挨拶され、全員が着席すると、ソウがシャンパンを取り出した。

メイドがグラスを揃えて持ってきて、乾杯することになり、ユリが前に出て軽く挨拶することになった。

ソウとユメに習って、みんなもその場で立ち上がった。


ユリの挨拶は、正式な場ではないので、無礼講で、昔のように話しかけてくださいと最後に付け加えた。


「皆さんの健康と幸せを願って、かんぱーい」


ユリがグラスを手に持って少しあげると、ソウとユメが反応し、回りも真似をするようにグラスを持ち上げた。

ユリ以外に、ソウとユメも口をつけたことから、回りもみんなシャンパンを飲んだ。


ユリが席に戻り、全員が着席した。


「ハナノ様、これはなんでしょうか?」

「これ? シャンパン? 簡単に言うと、白ワインの発泡酒ね。詳しくは、ソウに聞いてください」


パープル侯爵は、相当気に入ったのか、ソウのもとまで来て、シャンパンについて話を聞いていた。


「あ、ユリ、生チョコちょうだい」

「はい」


ユリが取り出すと、メイドが取りに来てくれた。


「ユリ様、今何処から出したんですの?」

「魔道具の鞄を変形させたものなんです」

「色々入っているのですか?」

「他に、ケーキとか、唐揚げとか、お弁当とか入っています」

「えーと、食品をいれる鞄なのでございますか?」

「そういうわけではないけど、結果的に、そうですね。うふふふふ」


「ユリ、唐揚げまだあるのにゃ?」

「ユメちゃん食べるならあるわよ」

「食べるにゃ!」


ユリは皿をだし、その上に、鞄に有ったチューリップ唐揚げを全部取り出した。


「唐揚げは食べたことがございますが、これはなぜ骨がついているのですか?」

「チューリップ唐揚げと言う、わざと骨を残した唐揚げです。手に持って食べられるので、お弁当や、子供や、お酒のあてに好評なのです」


どうやって食べるのだろうと悩んでいるらしい回りに先だって、ユメが食べて見せた。


「持って食べるのにゃ」


ユリがすすめて、ユメが食べて見せたら、マナーで咎める人も出ない。面白がって、みんな食べた。


「熱々ですのね!」

「リラちゃんと、少し味付けが違いますのね」

「あ、リラちゃんが作った唐揚げを食べたことがあるのですね」

「一年近く、ここに居ましたからね。懐かしゅうございます」

「調味料の産地の違いかしら」


ユリは持っていたケーキ類も全て提供し、リラが預けていた売り上げを引き取った。


「ラベンダーさん、ユメちゃん、いえ、ルレーブ元陛下がなさったように、私も貴女に名を与えようと思います。希望の名はありますか?」

「ありがとうございます。母と同じ、『グラス』を頂きとうございます」

「マーガレットさん、貴女には、カエンの代わりに私から名を与えます。希望の名はありますか?」

「ありがとうございます。(わたくし)も、母と姉と同じ、『グラス』を頂きとうございます」

「では、明日、書き換えますので、できるだけ静かに過ごしてください」

「かしこまりました」「かしこまりました」


「パープル侯爵、貴方にはとても世話になっています。名を与えても良いのですが、息子さんだけ名目がなく、どうしたら良いかと思案しています」

「恐れながら申し上げます。今の土地に居てくださる事が、何よりの褒美でございます」

「わかりました。土地を捨てることはありません。これからもよろしく頼みます」

「かしこまりました」


こうしてパープル邸での ささやかな集まりは、お開きになった。

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