休憩
ミスで、あがっていませんでした。すみません。
「ユリ、パープルのところの執事が来たにゃ」
「悪いんだけど、用件まで聞いてきてもらえる?」
「わかったにゃ」
年内最後の営業日なので、挨拶に来たいが、迷惑なら取り止めると言う話だった。
「お店終わってから顔を出すから、それと、来ても挨拶に出られないって伝えてくれる?」
「わかったにゃ」
「ユリ様、レモンパウンドケーキの方は、私が作っても良いですか?」
「良いわよ」
「ユリー、クッキー、キボー、クッキー、おみせー」
「キボウ君、クッキー売ってくれるの?」
「やすんだー」
「ありがとう」
再びクッキーを籠にいれて渡した。
キボウなりに、休憩時間を確保して仕事をしているらしい。
「リラちゃん、なにか作るより先に、イリスさんと交代してきて」
「はーい」
こちらにいれば、合間に休めるけれど、お店に出ていると、なかなか休憩もできない。
「ユリ御姉様、ユメちゃんと交代して参りますね」
「カエンちゃん、ありがとう!」
休憩として厨房に来たイリスとユメに、なにか飲みたいものと食べたいものを聞いた。
イリスは、ユリが昼飲んでいた甘くないレモンソーダとポテロン希望で、ユメは葛切り希望だった。
お湯だけ沸かして、先にイリスに作って渡し、イリスは休憩室に入っていった。
葛を水に浸け、ユリは呪文を唱えた。
「イルコイコチ」
「ユリ、それは何の呪文にゃ?」
「時送りよ」
「にゃー! ユリ、時送り使えるのにゃ!?」
「特典はつかないと思うけどね」
溶けた葛を裏ごしし、沸かしたお湯で葛切りを作った。
「ユメちゃん、どうぞ」
「ありがとにゃ!」
ユメは嬉しそうに葛切りを食べていた。
ユメは本当に葛切りが好きである。
食べ終わるとすぐに仕事に戻ろうとするので、ユリが引き留めた。
「ユメちゃん、せめてイリスさんが来るまで休んでいて」
「わかったにゃ」
「飲み物は要らないの?」
「さっき、アイスココア飲んだにゃ」
「あれ、少しだったでしょ」
「あんまり飲みすぎるとトイレに行きたくなるにゃ」
「いっぺんに飲むからよ。ふふふ。何か飲みたいものがあったらリクエストしてね」
「ありがとにゃ!」
ユメは、先ほどキボウが座っていた椅子に座り、休んでいるようだった。
ユリは再びパウンドケーキを作り始めた。
計量が終わり、業務用ミキサーのボールに材料を入れると、ソウと一緒に、倉庫側からレギュムとクララが来た。
「ハナノ様、明日納品分を引き取りに参りました」
「ご苦労様です。お昼ご飯は食べましたか?」
「これから戻って食べる予定です」
「これから作るなら、よろしければ、グラタンと唐揚げとケーキを出しますよ。グラン君も呼んで、場所は厨房になっちゃいますけど、いかがですか?」
「いただきたいです!」
クララが反応した。
少しレギュムは驚いた顔をしたが、すぐに反応した。
「では、ワシは、グランを呼んでくるとしよう」
グランは今日は家で勉強をしているらしい。
「飲み物は、好きなものをリクエストしてください」
「サファイアクリームソーダとチェンジカラーシロップでも良いでしょうか?」
「はい。好きなものを頼んでください。2つでも3つでも構いませんよ。では、3人前作っておきますね」
少し片付けがあると言って、クララも一旦外に行った。
ユリはすぐにグラタンを釜にいれて焼き始めた。
「ユリ、マーレイを休ませるから、誰か代わりに30分くらい頼めるか?」
「ソウは休まないの?」
「俺が抜けたら鞄から出せないだろ?」
「あ、そうよね」
「私が代わるにゃ。ソウも休んだら良いにゃ。イリスが戻ったら、カエンかリラと外を見るにゃ」
「リラの方が良いだろうな」
「どうして?」
「カエンは、知ってる者が居ないだろ? でも、向こうは、カエンが何者かわかるぞ」
「成る程、危険なのね」
そうこうしているうちにイリスが休憩から戻ってきた。
「イリス、少しカエンとお店頼むにゃ。リラと一緒に、ソウとマーレイの代わりに外を見てくるにゃ」
「かしこまりました」
イリスはお店に行き、リラを呼んできてくれた。
「ユメちゃん、何ですか?」
「ソウとマーレイの休憩の間、外の販売を担当してにゃ」
「はい!」
ユメとリラは外に行き、マーレイが厨房に入ってきた。
「あの、ユメ様が代わるとおっしゃられて」
「マーレイさん、休憩してください。飲みたいものや食べたいものは何ですか?」
「ユリ、俺、メニューに無いものが飲みたい! あと、生チョコ!」
「はいはい。生チョコは好きなのを取ってね。飲み物は、何か、作ります」
「私は、ジンジャーエールと、ホットドッグをいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。作りますね」
スリムタイプの折り畳みパイプ椅子を5つ出して、グラタンやホットドッグを並べた。
すでに聞いた、ジンジャーエールと、サファイアクリームソーダとチェンジカラーシロップをだし、レギュムとグランに聞いて、イチゴミルクと、ミルクココアをだし、ソウにはアイスコーヒーフロートを出した。
レギュム達が来てから、クリスマスケーキとチューリップ唐揚げも出した。
「ユリ、店でサンタのコスプレでもするか? 」
「どうして?」
「このケーキの苺の細工、伝わらないだろ?」
「誰に着せる予定?」
「カエンは、嫌がりそうだよな。ユメも、微妙そうだよな」
「喜んで着るのは、リラちゃんだけじゃないかしら? サンタクロースの人形を持ってきて飾ってはどうかしら?」
「そうするか?」
「ソウが外で着ても良いのよ?」
「あはははは。遠慮しとく」
「私がお店に出られれば着るんだけどね。うふふふふ」
当然ソウは、ミニスカサンタを想像したが、ユリはズボンタイプを前提に話していた。
そんなに悩まずとも一番幼い成りのキボウに着せれば解決するのだが、二人は全く思い付かなかった。
「そういえば、パネルヒーターもどき、あれ良いぞ!かなり温かい」
「改良型を納品してもらったら、馬車にどうかなって思ってるんだけど」
「客車は小さい方が良いけど、御者席なら、大きいままでも風避けにもなるし」
「成る程、そうね! なら、大きいの1台使ってみる?」
「マーレイ、レギュム、魔力充填はこちらでするからためしに使ってみてくれないか?」
「はい。どのようなものでしょうか?」
「マーレイはわかるな。どう思う?」
「はい。驚くほど温かく、とても安全で、魔力の高い方になら売れると思います」
「聞いての通り、携帯できる暖房機だ。使用魔力が高めなので、すぐに誰にでもとは言いがたいが、真面目に取り組めば、魔力値は上がる」
「はい。死に物狂いで取り組めば、約1月で、1万pまで、上げられます」
「え?」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」
「約1月で、1万pまで上がるの!?」
「毎日倒れるまで魔力を使って訓練すると、計算上は、最短17日で上限になるわよ。初期値300pの人で上限1万p、初期値600pの人で上限2万p、初期値900pの人で上限3万pね。安全に最大限上げても21日間ね。ただし、国内に居ないと無理だけどね」
「あのー、ハナノ様、訓練とは何をするのでしょうか?」
「あれ?イリスさんかリラちゃんから聞いてない?」
「ユリ、いなかった人には勝手に話さないと思うよ」
「家族間は許可と言ったから話したと思っていたわ」
ユリは、以心伝心と灯火の魔法を教えた。
そして驚いたことに、クララが灯火を覚えた。
「え! クララさんって、魔力あるの!?」
「私の名前のクララは、眩草という、薬草からとった名前なのです」
「そっか、グンジョー出身だものね」
少し寂しそうにしているマーレイのそばに、いつの間にかキボウが来て不思議そうな顔をしてマーレイを見ていた。
「キボウ君、どうしたの?」
「だれー?」
「え? マーレイさんよ」
「ちがーう!」
「名前を聞いたんじゃないの?」
「なまえー」
「うーん、マーレイさんの名前が違うの?」
「あたりー!」
キボウの話が、どう言う意味か誰もわからず、困り果てた。
「とりあえず、戻るよ」
ソウが声をかけて、マーレイと外に出ていった。
食べ終わったメンバーも解散した。




