表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/690

全種

ユリの想像する足湯は、木製の繋がった椅子に座ってみんな並んで入るのだが、そこに有るのは、自然石を加工した温泉と、小屋に積まれた座布団の山だった。

少し離れた広場には、テーブルと椅子もあり、持ち込んだお弁当などを食べる場所もあった。


「足湯というより、浅い岩風呂温泉だな」

「石の高さがいっぱい有るから選べるにゃ」

「何ヵ所か有るのは、温度でも違うのかしら?」


温泉と温泉は、木製のすのこで繋がっている。

ユリは全員にタオルを配り始めた。

受け取った方は驚き、ユリが「足を拭くのに使ってください」と言ったが、勿体無くて使えないのだった。


すのこの上で素足になって、下駄箱に履き物をしまい、座布団をお借りして、みんな好きな温泉に足をつけ、足だけの湯浴みが面白い!や、足しかつけていないのに身体中が温かい!など、楽しげな感想が漏れている。


少し疲れた人は、座布団があった小屋に腰掛けたり、軽く寝転んだりして休んだりした。


「キボウは、お風呂に入って、ふやけたりしないのにゃ?」

「ユメちゃんが寝たあとに、いつもお風呂に入っているわよ」

「知らなかったのにゃ」


なんだかユメがショックを受けていた。ユメは殆ど21時には寝てしまうので、キボウの入浴は知らなかったらしい。


ソウが20分程外すのでよろしくと言って、どこかへ転移していった。

ユリは、喉が乾いた人用に冷茶を用意し、汗をかきすぎた人ように塩分の入ったものも用意していた。


「なんですか、これ?」

「汗をかきすぎたときは、甘味と塩っ気のある水分を飲んだ方が良いのよ。風邪をひいて熱が高いときにも良いのよ」


まずはリラが飲んでみるらしい。


「なんか不思議な味ですが、なんか美味しいかも」

「飲みすぎないでね。コップ1杯が適量よ」

「どうやって作るんですか?」

「レモン果汁と低精製糖と荒塩を入れた水よ」

「それなら誰でも作れますね!」

「水に砂糖と塩が入ることが重要だけど、入れすぎも良くないからね。レモン果汁は好きなものに変えて良いわ」


「本当に不思議な味がします。甘い飲み物に塩を入れるとこんな味になるのかぁ」

「ユリ様、訓練の後の騎士様にも有効でしょうか?」


シィスルとマリーゴールドも飲みに来た。


「汗をかいた人なら、誰でも向いていると思うわ」


「私もいただいてもよろしいですか?」

「どなたでもどうぞ」


レギュムとクララとグランが飲みに来た。


「不思議な味がするが、何故か飲みやすい!」

「冷たいお茶が一番旨いと思っていたのに、こっちの方が飲みやすい・・・?」


レギュムとグランが感想を言うと、リラがマーレイとイリスにも渡していた。


ユリがリラに分量を説明していると、レギュムが売って良いか聞きにきた。希釈して使えるようにしたものを売る方が良いわよ?とユリが言い出し、その結果、リラが作ってレギュムが売ることになった。

シィスルとマリーゴールドも配合を持ち帰り、多少の調整をして売ったり使ったりするらしい。


「リラちゃん、家のレモン使って良いわよ。あれまだ沢山()っているでしょ」

「ありがとうございます!」


「ただいま!」

「ソウ、お帰りなさい」

「なにやってるの?」

「スポーツドリンクを売る算段。うふふ」

「ご飯はこれから?」

「ソウが帰ってきたからご飯にするわ」


ユリがテーブル3箇所に、紙製のランチョンマットを敷き、カトラリー、半鳥丼、皿に、ツナマヨおにぎり、肉巻きおにぎり、だし巻き玉子、焼売(しゅうまい)、紫蘇巻きロールカツを人数分置いていった。もちろん杖の鞄から出すので、見た目もいかにも魔法使いだ。


「ユリ様、格好良いー!」


リラが誉める(?)ので、ユリは尚いっそう楽しかった。


「ユリ、使いこなしてるのにゃ」

「うん、凄いな、ユリ」


ユメとソウが、少し唖然として見ていた。


「ユリ様、私達も1品だけ持ってきました」


リラが南瓜の煮物、シィスルがニンジンとゴボウのきんぴら、マリーゴールドがきのこの佃煮風だった。


「あ、私が作ると野菜が足りないのバレてるのね。あはは」

「ユリ様が残してくださったノートに書いてある料理を再現しました」

「あ、成る程」


リラたちには、少しずつ皿に乗せて貰い、みんなで食べ始めた。


「お弁当食べる夢が叶ったにゃ」

「え、そんな夢があったの?」


「うわー!出来立ての味! 温かい!美味しぃ!」


リラが騒いでいる声が聞こえた。


「ユリ、お肉の塊みたいなのは何にゃ?」

「肉巻きおにぎりね。お稲荷さんの皮が、焼き肉になった感じかしら?」

「なるほどにゃー」


「ツナマヨーー!!」

「これがリラさん大絶賛の、ツナマヨですの!?」

「うわ、本当だ、マヨネーズ味、美味しぃ!」


リラたちには、肉巻きおにぎりよりも、ツナマヨおにぎりの方が騒がれていた。


「リラちゃん、オイルサーディンの作り方もノートにあったでしょ?」

「生のお魚が手に入りませんでした。こちら(グンジョー)に来たときに作ってみたものは、焦げたフライのような感じで、なんか違うというか・・・」

「あー、ごめんなさい。温度書いてなかった?」

「温度ですか?」

「オイルサーディンは、低温の油で煮るのよ」

「え゛」

「今日、魚が売ってたら買って帰りましょう」

「はい」


大騒ぎ気味のお昼ご飯は、楽しく食べ終わった。


「デザート、ヨーグルトゼリーか、ポテロンか、イチゴムースか、黒ごまムースか、桃のババロアがあるわ」

「何でもあるのにゃ。ポテロンが良いにゃ」

「俺、イチゴムースで」


素早く決めたユメとソウ以外は悩んでいるようだった。するとリラが言い出した。


「黒ごまムースと桃のババロアは、明日出すデザートですか?」

「そうよ」

「シィスルとマリーゴールドには、二つでも良いですか?」

「どうぞ。他の人も、なんなら全種類食べても構わないわよ?」


ほぼ食べたことのないグランが全種類挑戦していたが、4つくらいで限界だったようだ。



帰りの馬車で、ソウの客車の乗員は同じだが、御者がレギュムとマーレイに変わった。

レギュムが、こちらの馬車を操縦してみたかったらしい。


向こうの馬車は、客車に、イリス、リラ、シィスル、マリーゴールドで、御者は、クララらしく、グランは操縦の予定だったのに、あきらめて横に座るようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ