女給
「ユリ様!! 助けてくださって本当にありがとうございます!!!」
物凄くハイテンションのイリスに詰め寄られ、ユリは腰が引けていた。
「お店終わるまで待っていてよかった」
マーレイが小声で呟いたのが聞こえてしまった。
「イリス、他の人に聞かれたら困るのにゃ」
「はい、ごめんなさい。でも、一度もきちんとお礼を言っていないんですもの・・・」
そういえば、そうかもしれない。
「イリスさん。どういたしまして。今聞いたので、この先は、思い出したようにお礼したりしないでくださいね。マーレイさんやリラちゃんにも言いましたが、普通な感じで接してくれるのが一番ありがたいです」
イリスを治療して帰ってきた日、いつまでも頭を垂れてお礼を言い続けるマーレイとリラにユリは言ったのだ。「そんなにも感謝してくれるなら、今まで通りにしてくれるのが一番嬉しいです。いえ、むしろ、言いたいことがあったら意見をちゃんと言ってくれるのが良いわ」そう言われた二人は、選択肢を出されたらちゃんと選択し、意見を聞かれたら意見を出すように意識を変えている最中なのだ。
「はい! みなさま、これからどうかよろしくお願い致します!」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」
「よろしくなのにゃ」
「よろしく頼むな!」
「お母さん、よろしくね!」
「みなさん、イリスの事、よろしくお願いします」
「さあ、ご飯にしましょう。今日はイリスさん座っていてね。マーレイさんもそのままで」
ユリがグラタンを焼いている間、ユメがサラダやパイや冷茶を用意してくれた。
ソウはイリスの厨房への出入りの登録をしたあと、リラに何か頼んでいるようだったけど、遠くて聞こえなかった。
イリスの見たこともない料理がならび、そわそわしているのが見えた。
みんなで食べ始めると、イリスが目を輝かせて美味しそうに食べていた。
「美味しい、美味しい」と言って喜び、サラダのマヨネーズをリラが作れると知ると、リラに教えて!と頼んでいた。
ユリがフォンダンショコラを焼いて持ってくると、どこからともなくソウがバニラアイスをもって来た。
「いつ作ったの?」
「リラに頼んで素を作ってもらった。フォンダンショコラと言えば、バニラアイスだよなー」
「ふふ、お店でも出せばよかったわね」
温かいフォンダンショコラと、冷たいアイスクリームの組み合わせは美味しかった。
イリスもとろけるフォンダンショコラと、冷たいアイスクリームを物凄く喜んでいた。
「イリスさん、明日は、14:00から18:00で来られますか?」
「はい。あ、リラと同じ9:30からではないのですか?」
「リラちゃんは仕込みを手伝うので、早くからですが、イリスさんには、花形のお店の女給をお願いしたいので、週明けからは11:00から18:00でお願いします」
「花形」
「はい。お店の注文を聞いてくるのは大変な仕事なのです。イリスさんには、花形の女給をお願いしたいのです」
「それなら明日も11:00からでお願いします!」
「行きなり仕事復帰して大丈夫ですか?疲れますよ?」
「全く問題ありません!」
「では、明日からお願いします」
「はい!」
和やかに解散した。




