玉子
カレーピラフをみんなで食べながら、ランチタイム前の話をした。
「ソウ、イリスを迎えに行ってほしいにゃ」
「え?こっちで療養するのか?」
「物凄く元気だったにゃ。元気すぎてレギュムから早く迎えに来てほしいと懇願されたにゃ」
「え、えー!」
「ユリと同じ反応にゃ」
「お父さん、お母さんが作ったクッキー酷かった!!」
「え、なにか食べたのかい?」
「噛めないほど固かった!」
「しょっぱかったにゃ」
「昨日作ったのは、物凄く苦かったって!」
「あージャムのスープだしな」
なにか、ソウが変なことを呟いているわ?
「ユメ様、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません!!!」
マーレイはユメに、心の底から謝っているようだった。
「マーレイは悪くないにゃ。そんなわけで、ソウ、迎えに行ってほしいにゃ」
「食べ終わったら行ってくるか?」
「すぐ行くなら一緒に行くのにゃ。荷物でも持つにゃ」
「マーレイどうする?挨拶に一緒に来るか?」
「可能でしたらご一緒させてください」
「ユリ、今からユメとマーレイをつれて迎えに行ってくる。明日からでいいか?」
「私はいつからでも構わないわ。イリスさんの体調を優先でお願いします」
「了解!」
ユメが食べ終わるのを待って、ソウは転移していった。
「リラちゃん、イリスさんが無理してそうなら絶対休ませてね」
「はい!ユリ様。あ、お母さんが作ったものは、絶対に食べないでくださいね」
「そんなになの?」
「私が小さい頃から、家ではお父さんが料理してました」
「もしかして、マーレイさんって料理得意なの?」
「私よりもできると思います」
「そういえば、玉ねぎ切るの早いわよね」
「お父さんがカボチャと甘い料理を苦手だったのって、結婚したばかりの頃に、お母さんが作ったカボチャのスープにジャムとはちみつを一瓶入れた料理を食べさせられたせいだそうです」
「えー! あ、さっきソウがジャムのスープだしなって言っていたのって」
「たぶんその話です。だから、絶対に作らせないでください」
「わ、わかったわ・・・」
色々合点がいったユリだった。
休憩が終わる頃、ユメとソウが戻ってきた。
マーレイとイリスを家においてきたらしい。
「今日から手伝うって言ってたけど、明日からにしてもらったから。でも、今日の夕飯はここで出せる?」
「大丈夫よ。サーモングラタンだけど、大丈夫?ダメそうなら凍結グラタンもあるけど」
「客でも苦情も出ず好評だったなら問題ないんじゃないか?」
「うん。あ!イリスさんの身長って、どのくらい?」
「大きいにゃ」
「俺よりは低いよ」
「このくらいです!」
リラが手で高さを示してくれた。
どうやらユリより12~13cmほど高いようだ。
162~163cmというところだろう。
一度立って歩いていたのは見かけてはいるが、肩を借りて歩いていたので、身長はわからなかった。
「リラちゃんのエプロンをしばらく貸してもらえる?」
「お母さんにですか?」
「そうよ」
「はい!」
「イリスさんって、給仕の経験あるのかしら?」
「3年くらい前まで、事務の仕事をしていたと思います」
「一年くらい前まで商店で接客をして働いていたらしいよ」
「レギュムが仕事はできるって言ってたにゃ」
「なら、問題ないわね」
ユリは外おやつを出しに行き、休憩時間が終了した。
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おすすめおやつ
フォンダンショコラ 500☆
(温かく、とろける美味しさ)
冷茶 200☆
お茶(注文した方のみおかわり自由) 200☆
常温おやつ
パウンドケーキ 150☆
クロ猫ッカン 250☆
パンプキンパイ 300☆
リラの華 200☆
黒猫クッキー 時価
(ユメちゃんから直接購入してください)
軽食
玉子サンド(東)16時から販売 500☆(限定3)
玉子サンド(西)16時から販売 500☆(限定3)
ホットサンド(ハム、たまご) 500☆(限定2)
ポットパイ(パイ皮付きシチュー) 500☆(限定30)
温野菜サラダ(+マヨネーズ) 350☆(限定5)
栗ご飯 300☆
持ち帰り専用
フォンダンショコラ 500☆
(冬箱で持ち帰り、釜で温めてからお召し上がりください)
マヨネーズ(日持ち冬箱で4~5日) 1000☆(限定20)
黒蜜 800☆
黒蜜・容器持参(150ml・180g) 500☆
凍結グラタン(1人前) 600☆
凍結ミニミニグラタン(1/4人前) 200☆
(ハム、コーン、ブロッコリー、マカロニ)
グラタン&ドリアの持ち帰りについて。
冬季以外の販売は、冬箱か真冬箱をお持ち方に限ります。
解凍し釜で焼いてからお召し上がりください。
※器返却スタンプ始めました!
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「みんな休んでないけど大丈夫?」
「大丈夫にゃ」
「大丈夫でーす!」
「なんか手伝う?」
ソウも手伝ってくれるらしい。
「リラちゃんは、だし巻き玉子ね。ソウ、茹で玉子お願いします。ユメちゃんと私で注文とります」
「はい!」「了解」「わかったにゃ!」
15時になり、客が一斉に来店した。
「ユリ・ハナノ様、16時から販売ってなんですか!」
「今作っている最中なので」
「持ち帰れますか?」
「はい。どちらにしますか?」
「もちろん双方を!」
「今召し上がるものは注文されますか?」
「今日のケーキと冷茶を」
「ありがとうございます!」
ユメのとった注文も全く同じだった。
二人で注文をとっているので、4人分受けてしまい、リラには増産をお願いした。
そもそも4人前作る予定だったのだが、焼くのが追い付かないのだ。
ユリは注文のフォンダンショコラを温め、提供した。
ソウが玉子サラダまで作ってくれたので、ユリがサンドイッチにした。卵焼きサンドである、玉子サンド(西)より一足早く提供した。
双方ともに、16時よりも前に出来上がったので、提供された客はその場で食べ、とても好評だった。
「こちら玉子と何が入っているのですか?」
「刻んだ茹で玉子と、塩、胡椒、マヨネーズです」
「マヨネーズ!!サラダのソース以外にも使えるのですか!!」
「そうですね。何に合えても美味しいですよ」
「マヨネーズも持ち帰りでお願いします!」
「はい。ありがとうございます」
ユリは厨房に戻り、以後の注文はユメに頼んだ。
しばらくするとユメが聞きに来た。
「ユリ、マヨネーズは何でできているか聞かれたにゃ」
「卵黄、酢、塩、油が主な材料です。作り方を知りたかったら、料理を作れる人になら教えますと言ってください」
「わかったにゃ」
ユメはすぐに戻ってきた。
「今度屋敷の料理人をつれてくるって言ってたにゃ」
「わかりました。お待ちしてます。うふふふふ」
明日用のケーキを作りながらユリは答えていた。
明日のケーキは、ソウのリクエストの紅茶のシフォンケーキだ。ただ、ランチにも出すのは数の点でかなり無理があるので、おやつタイムのみで、ランチや持ち帰り用には、シートスポンジで作ったショートケーキを出そうと考えていた。
卵18個を卵黄と卵白に分けて泡立て、真ん中に穴の空いたシフォンケーキ型で3つ作った。
一台が12カットで、36人前できる。
「タイヤみたいな型にゃ」
「面白い形の型ですね」
「この形に意味があるのよ。焼けたら面白い事するからね」
「お!ユリ、それは頼んだシフォンケーキ!?」
「そうよー。紅茶のシフォンケーキよ」
「俺、2切れ食べたい!」
「あ、うん。わかった」
「店売り分で29かしら? あれ?もう一台焼かないと足りないの?」
「もう一回作りますか?」
「うーん。どうせなら違う味作りましょうか」
「何味ですか?」
「そうねぇ、オレンジピールをいれたものと
か、紫芋で桃色の生地にするとか、抹茶を入れるとか、ココアを入れるとか、色々あるわよ」
「2つ入れて、桃色オレンジ味にはできますか?」
「うーん、頑張ってみるわ」
卵12個に細かく刻んだオレンジピールと、紫芋の粉末を混ぜた小麦粉を使って、先程より小さい型で3台焼いた。
さきに焼けた大きいものを釜から出し、逆さにしたらリラが驚いていた。
今焼いているのは8カットにするため、24人前になる。
ここからみんなの分とソウにもう1人前を抜いて17人前売り物にできるかしらね?
「桃色にするためにレモン果汁足したんですか?」
「そうよ」
「もし入れないとどうなりますか?」
「んー、ベーキングパウダーも重曹も入らないから紫が濃くなることもないとは思うけど、混ぜたときの色のまま暗い紫色で焼き上がると思うわよ?」
「ベーキングパウダーか重曹が入ると又変わるのですか?」
「えーとね。酸っぱいのを酸性というのね。 その反対の性質をアルカリ性というのね。紫芋や、バタフライピーは、酸性とアルカリ性で色が変わる色素なのね。重曹はアルカリ性で、重曹が多く入る配合で変色する粉を使うと、暗い紫色、もしくは、灰色や美味しそうに見えない緑色っぽい色に変色することがあってね、それを防止するために、酸性であるレモン果汁を入れるのよ」
「味のため以外の理由で加えるものがあるんですね!」
「そうね。食べ物の見た目って大事よね」
その後、パイの仕上げと、新たなパイの仕込みをしてこの日の仕事が終わった。
お店が終わってから、マーレイにつれられてイリスが来た。