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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
1章

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偵察

転移して約一ヶ月。

生活も少し落ち着いてきて、上手く回るようになってきた。


ソウは朝御飯のあと、仕事があると言って出掛けて行った。

出掛ける と言っても、私から見れば部屋に戻るのだけど。


ユメは(から)いもの、苦いもの以外はなんでも食べられるらしく、最近は猫耳幼女姿になって食べる、おかかのせ卵かけご飯にはまっているらしい。

植物系を食べなくで良いのだろうか?

あ、米だからOKなのかな?


肉や野菜の仕入れ関係は、ほぼマーレイが手配してくれるのでかなり楽だ。

流石に肉は部位で注文している。

スライサーが無いので、薄切り肉が作れないのが辛い。

ミンサーがあるから挽き肉は作れるのだ。


今日の1000☆ランチはハンバーグセットだ。


ハンバーグはいつも評判が良い。


11:00に店を開けると、珍しく常連さんではない人達だった。


見たことあるような無いような人達ね?


三人は店内をキョロキョロと見回し、不機嫌な顔でカウンター席に座った。


三人で来てカウンター席に座る人は珍しいなぁ。その時はのんきに考えていた。


この時間、ランチの2種類のみなので、皆決まるのが早い。


「ご注文はお決まりですか?」

「ハンバーグセット3つで」

「はい。ハンバーグセット3つですね。少々お待ちください」


最初の頃は知らなかったけど、ここの厨房は店から見ると石窯しか見えないらしい。


私が店から厨房を見ると、石窯の他、洗い場とガスコンロも見える。

私がカウンターから覗けば ほぼ全て見える。


確かに他の人に見えたら不味いし、何か仕掛けがあるんだろう。としか考えていなかった。


ハンバーグを焼いていると何か視線を感じ、振り向くと、じっとこちらを覗いていた。

ただし、あちらから私は見えていないらしい。


なんだか感じ悪いな。


常連さんや、ご近所の人たちや、領主一行は、みな紳士的だったので、こういう客は久しぶりだ。


ハンバーグセットを3つ作り、厨房をでた。


「おまたせしました!ハンバーグセットです」


にこりともせず受けとると、無言で食べ出した。


なんだか怖かったので、少し離れて見ていると、食べる度に首をかしげながらぶつぶつ言っているようだった。三人が三人とも。


お口に合わなかったのかしら?

・・・と言う感じじゃないわね・・・。


怖くなって厨房に下がった。

こんなときに限って常連さんが来ない。

ソウもいないのに、何かあったらどうしよう。


「すみませーん」

「はい?」


声が上ずった。


仕方ないと気合いを入れてお店に出た。


「お呼びですか?」

「このハンバーグは誰が作っているのですか?」


なんだろう?どういう意味だろう?


「私が作りました。お口に合いませんでしたか?」


すると、驚いた顔をした後もう一度ハンバーグを見てから私を見て


「聞き方を間違えました。このハンバーグの挽き肉は誰が作っているのですか?」

「挽き肉も私が作りましたが?」


この人はいったい何が聞きたいんだろう?

挽き肉なんか、ミートミンサーがあれば家庭でも作れるのに。


「どうやって?」

「ミートミンサーで挽きましたけど?」

「電気もないのにどうやって動かすんだ!!!」

「はあ?手動に決まってるじゃないですか?」

「手動?・・・そんなのがあるのか?」

「ちょっと待っててください」


厨房からミートミンサーを持ってきた。


「これです!」


三人は驚いた顔をした後、がっくりとうなだれた。


「こんな小型の手動の・・・知らなかった」


三人は電気で動かす大型の挽き肉機しか知らなかったらしい。


1000☆で出すには手間がかかりすぎる包丁で叩く肉料理と言うだけでも不思議だったのに、ハンバーグを食べてみて、包丁で叩いた肉とは感じが違うし、どうなっているんだ?と偵察に来て思ったらしい。


「パスタマシーンとか、手動フードチョッパーとか、りんごの皮剥き器も持ってきましたけど?」


なんか、よりいっそう落ち込ませてしまった。


そこへソウが2階から降りてきた。


「ユリ、何かあった?」

「あ、ソウ。何もないよ」


「ホシミ殿・・・」


元気のなくなった三人が助けを求めるようにソウを見ていた。


「なに?」

「これと同じものを!いや、同じ用途の物をお願いできないだろうか?」

「良いけど、ユリに迷惑かけないでくれる?」

「大変申し訳ない、以後気を付ける」


この後話したけど、この三人は高級な食器や、豪華な布や、高級ワイン等を沢山持ってきたけど、手動調理器具は思い付かなかったんだって。手動ミートミンサーは知らなかったけど、パスタマシーンとかは知ってはいたらしい。


あと、うちは王都で「癒しの店」って呼ばれているそうで、アルストロメリアです!と主張したら、「転移計画の名前から取ったのですか?」と聞かれ、違います。実は、と名前の秘密を教えておいた。

「へえ、そうなのですねー」と感心された。


お疲れのようだったので三人にフルーツ入りパウンドケーキをお土産に差し上げた。

うちが癒しのなんとかって言われる理由のお菓子ですよ。と付け加えると食べてもいないのに笑顔になって、ありがとう。と言っていた。


三人が帰ると、常連さんが、申し訳なさそうにやって来た。


「ユリ・ハナノ様、お助けできずに申し訳ありませんでした」

「え?何か言われたんですか?」

「調査だから引くようにと強く言われました」

「そうだったんですね。でも大丈夫ですよ。これからもよろしくお願いしますね」

「はい!」

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