紫芋
コバヤシたちが帰るのと入れ替わるように、各種の芋を持った人たちが来た。
大人5人と、7~8歳くらいの子供2人だ。
「こんにつわー」
「いらっしゃいませー」
「芋持ってきますたー」
さつま芋、紫さつま芋、ジャガイモ、紫ジャガイモ、栗。
「何をご希望なのですか?」
「ケーキならなんでも良いよー」
着いてきていた子供たちが言った。
「さつま芋でモンブラン作りましょうか?」
「それが良い!!」「食べたーい!」
「さつま芋モンブラン、何個作れば良いですか?」
「15こ!」
芋は育てたものだけど、栗は子供たちが拾ったものなので、そのまま貰ってくれと言われた。
ユリにしてみれば、市場で買える芋より、市場で売っていない栗の方が価値が高い。
栗の代金をのせて考えれば良いかなと思った。
紫さつま芋を蒸し器にいれてから予定を話した。
「では、紫さつま芋でモンブランを作ります。とりあえず蒸します、あとで裏ごしを手伝ってもらいたいと思います」
「ユリ様、栗加工しますか?」
「何にするのが良いかしらね」
「私が見たことがないものが良いです!」
「ハードルを上げられたわ・・・なら、栗きんとんでも作るわ。栗ご飯と同じように剥いてください」
「ユリ、何か手伝うにゃ?」
「ユメちゃんも手伝ってくれるの? なら、普通のさつま芋の皮をピーラーで厚目に剥いて、1cm位の輪切りにして水を張ったボールにいれてください」
リラの指導のもと、大人は栗を剥いて、子供はおとなしく待っているようだった。
ユリはくちなしを探してきて、ダシ袋にいれ、包丁のはらを当てて重さをかけ実を割った。
ユメが切ったさつま芋と一緒に鍋にいれ、少なめの水で茹でた。
「黄色いにゃ!」
「本当は黄色いラムネ用に用意したんだけどね。くちなしよ。夏前に、外に白い良い匂いの花が咲いていたと思うんだけど、あの花の実なのよ」
ユメはずっと茹でている黄色いさつま芋を見ていた。
途中リラが来て何か話しているようだった。
ユリは、冷凍しておいたシートスポンジをだしてきて解凍し、カスタードクリームを作った。
「あ、リラちゃん、そろそろ芋が蒸し上がるから、裏ごしお願いします」
「はい!」
「リラちゃーん、あなたは指導するだけで良いのよー?」
「はーい」
「ユメちゃんはどうする?裏ごしやってみる?」
「やってみるにゃ!」
「私と交代で裏ごしましょう!」
小さい裏ごし網で、ユメと一緒に黄色い芋を裏ごした。
途中ユリは、ロールケーキを巻いたり、剥き終わった栗を引き取り、砂糖とくちなしを入れた鍋で栗に火を通した。
ユメが大分頑張ってくれたので、黄色い裏ごしさつま芋がたくさんできた。
ユリはそれを鍋にいれ火にかけ、砂糖やみりんや栗の煮汁や水飴をいれて練ってきんとんを作った。
バットに広げて冷ました。
「これにさっき煮ていた栗が入って、栗きんとんの出来上がりよ」
「これ知ってるにゃ!お正月に食べるのにゃ!」
「これと伊達巻は毎年私が作っていたのよ」
「伊達巻も作れるのにゃ!?」
「お魚もはんぺんもないから、ここで作るのは無理かもしれないけどね」
ユリは、出来上がったきんとんをココットに入れ、黄色く煮た栗を埋め込んだ。
「はい。栗きんとんの出来上がりよ」
「リラに見せてくるにゃ!」
「わー!凄ーい!知らないお菓子になった!!」
リラが喜んでいるのが聞こえた。
人数分の栗きんとんを仕上げ、お茶を出し休憩になった。
「私が元居た国のお正月料理のひとつなのよ。あと、作ったのは、ほとんどユメちゃんよ。私はちょこっと仕上げをしただけ」
「これ美味しー!パンに塗って食べたい!」
「え?きんとんを? うーん、パイにでもしてみる?」
「はい!作ってみて良いですか?」
「今日は釜に火をいれていないから、明日作ったら良いわ」
「ありがとうございます!」
引き続き紫さつま芋の裏ごしをしてもらっている間に、できているものを少しもらい、バター、砂糖、牛乳を入れて煮た。
「凄い色にゃ」
「クッキーにも使っているのに、クリームになると迫力があるわよねー」
「そうだにゃー。何か手伝うことはあるにゃ?」
「ユメちゃん、生クリーム泡立てられる?」
「任せるのにゃ!」
「お願いしまーす」
生クリームをユメに頼み、ユリはロールケーキをカットした。
ユメが泡立ててくれた生クリームに、先ほど煮た黄色い栗を刻んで加え、カットしたロールケーキに大きめの丸い口金で絞り出した。
出来上がった紫さつま芋のクリームをモンブラン口金を付けた絞り袋にいれ、生クリームの上に絞り出した。
「ユメちゃん、少し作ってみる?」
「作ってみるにゃ!」
ユメにクリームを任せ、ユリは片付けをした。
途中見に来たリラも作りたがり、ユメから絞り袋をかりて、少し絞っていた。
出来上がった紫さつま芋のモンブランを提供すると、まだ裏ごしは終わっていなかったが、ユリは残りは結構ですよ。と帰そうとした。
ところが、今あるものだけは全部裏ごししてから帰ると言い、全部裏ごししてくれた。
帰りがけに大銀貨を渡し、持ち帰る分の紫さつま芋のモンブランを渡した。




