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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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塩蔵

朝ご飯を食べていると、申し訳なさそうにソウに言われた。


「ユリ、悪いんだけどイクラ作ってもらえる?」

「え?今日食べるの以外で?」

「転移組の医療班に話がバレちゃって、イクラ食べたいってうるさいんだよね」

「調理という意味で作るのは構わないけど、生筋子はどうするの?」

「又捕まえてくるよ」

「あ、うん。わかった」


そのままソウは出掛けていった。

あれ?出掛けた先って、鮭の捕獲?


悩んでも仕方ないので、冷凍したイクラを自然解凍し、予定通り休みの日にしかできない掃除や片付けをするのだった。


しばらくして、ユリがリビングに掃除機をかけているとユメが起きてきた。


「おはようにゃ、終わったら掃除機貸してにゃ」

「おはようユメちゃん。何か食べる?今日のお昼ご飯はイクラ丼よ」

「イクラ丼まで要らないにゃ」

「そういえばね、ソウが又、鮭を捕まえに行ったかもしれないわ」

「熊にゃ。又、背負って帰ってくるにゃ」


二人で笑いながら掃除をしていると、まだ10時前だが、ソウが戻ってきた。

今日は、保冷バッグらしきケースを両肩からかけていた。


「熊卒業にゃ」

「ん?なに?なんか言った?」

「なんでもないにゃ」


「ユリ、手伝うから魚さばいてもらえる?」

「何匹捕ってきたの?」

「今回は、7匹」

「お店で使うのはせいぜい5匹くらいよ。冷凍する?」

「今日来るやつにやっても良いよ」

コバヤシ(ラーメンや)さんと、ハヤシ(ヤキニクや)さん? わかったわ」


あ、ご飯炊かなきゃ。


厨房の一升炊きの炊飯器で、目一杯炊飯するのだった。


ユリは厨房の流しに鮭を入れてもらい、作業台の上で、さばきかたをソウに説明した。


「おはようございます!」


リラが元気に挨拶しながら来た。


「リラちゃん、おはよう。早いわねー」

「あ!これが鮭ですか?又フライにするんですか?よかったらさばきかた教えてください!」

「教えるのは良いけど、触るの平気なの?」

「美味しかったので平気です!」

「リラ、すごい理論だな。ははは」


「にゃ!リラがいるにゃ!」

「ユメちゃん、おはようございます!」

「おはようにゃ!なにするのにゃ?」

「鮭をさばくのを教えるのよ。やってみたいんですって」

「リラ、チャレンジャーにゃ」


ユリが全て内蔵を出してから、ソウとリラは下ろしていった。

二人が半身をおろし終わった辺りからユリはおろし始めたのに、あっという間にユリが3匹下ろした。

3人がかりでさばいたので、すぐに全て半身になった。そして7匹とも卵だった。


「すごいわ!全部卵だった!」

「そりゃそうだよ。メスしか持ってきてないし」

「えー、ソウ、鮭の雄雌が判るの?」

「色々見分けるポイントはあるけど、顔が優しいのが雌だよ」

「やさしい・・・」


リラが鮭を見て呟いていた。

鮭って、雌でも充分怖い顔だよね。


「すみませーん!ハナノさん居ませんかー?」

「行ってくるにゃ。お店に待たせておくにゃ」

「ユメちゃん、ありがとう。お願いします」


ユリは手が汚れていたので、ユメがいってくれるらしい。

ステンレスソープを使って手を洗い、ユリも店に行った。


「いらっしゃいませー」

「お招きありがとうございます」

「お召しに従い参上いたしました!」

「ふふふふふ。あ、お二人とも、鮭は要ります?」

「え!身も有るんですか?」

「今朝、ソウが捕まえてきました。今日呼んでいないメンバーに、イクラ丼がバレたそうです」

「え、突っ込みどころが多すぎて、ははは」

「ホシミさんって、どこで鮭捕まえてるんですか?」

「ソウー、鮭どこにいるのー?」


ユリが声をかけると、ソウが手を拭きながら現れた。


「パープル領の端に有る川の河口付近。誰も食わないから好きに捕って良いって」

「本当に捕まえてきたんですねぇ」

「それで、半身要ります?」

「半身!の半分くらいで良いかなぁ」

「ハナノさん、鮭何にするんですか?」

「前回は、お店でランチに使いました」

「えー!鮭出したの!?」

「マジか、チャレンジャーだなぁ」

「フライ、好評でしたよ」


「鮭フライ、食べたいなぁ。でもタルタルソースが作れないから」

「お店で出したとき、タルタルソースも出しましたよ?」

「え?マヨネーズ持ち込みまだ残ってるんですか?」

「マヨネーズは、業務的には持ち込んでいません。家内分だけなので、店の分は作りました」

「はあ?」「え?」

「フライ作ったら食べます? 明日も出しますけど」

「食べますし、マヨネーズ教えてください!」

「私も、マヨネーズ作り方知りたいです」


「リラちゃーん、マヨネーズ教えてあげてくれるー?」

「はーい!」

「じゃあ、私はフライ作ってきますね」


マヨネーズとタルタルソースはリラに任せ、イクラ丼の人数分のフライを作ることにした。


「何か手伝うにゃ?」

「茹で玉子、玉ねぎのみじん切り、ピクルスのみじん切り、どれが良い?」

「茹で玉子と、ピクルス切るにゃ!」

「じゃあ、俺が玉ねぎ切るよ」


ソウも手伝ってくれるらしい。

ユリは切った鮭にフライの衣をつけ、玉ねぎのクシ切りフライも用意した。

リラがタルタルソースの材料を取りに来たので渡し、ソウには、預かっているどんぶりを用意してもらった。

ご飯が炊ける頃に合わせフライを揚げ、ユメに、預かったどんぶり4個に、ご飯をよそってもらった。


大きいココット4つにタルタルソースをいれ、フライを突っ込み、どんぶりご飯と、瓶に入ったイクラをセットにして、ソウとユメに配達してもらった。


「酢飯にする人ー!」

「はい!」「俺も!」

「するにゃ!」「お願いします」

「すめしってなんですか?」

「イクラ食べるなら酢飯の方が良いけど、フライだけなら普通のご飯の方が良いかな」

「両方食べてみたいです!」

「リラちゃん、フライの用意をお願い、ユメちゃん、どんぶり5個、茶碗2個でお願い」

「わかったにゃ」


ユメが椀を揃える間、ユリは、ボールにいれたご飯を酢飯にした。


「酢飯にイクラをのせまーす」

「おおー!」「たっぷりだ!」

「うわー綺麗ー!」


全員でいただきますをして食べ始めた。


「うまーい!イクラもフライもタルタルもさいこー!」

「久しぶりすぎて涙でますー。美味しすぎる!」

「美味しいにゃ!」

「旨いな!」


リラはイクラ丼を睨んでいた。

スプーンにイクラとご飯をのせ、パクッと食べてみた。


「ん?んん?なんだろう?濃厚で、知らない味なのに、懐かしく感じる。なんか凄く美味しい!」

「あら、食べられそうなの? 今日はもうないから次回作る分をできたらあげるわね」

「ありがとうございます!!」


「そういえば、リラちゃんがここでご飯食べて、マーレイさんはどうしてるの?」

「組合に出ているので、ご飯食べてくるそうです」

「それならよかったわ」


「そうそう、コバヤシさん、聞いてみたかったんだけど、竹の子ってどうやって入手してるんですか?」

「今使っているのは、塩蔵です。無くなったらこちらで探したいと思ってます」

「あ!塩蔵、成る程・・・個人的に焼売(シュウマイ)を作りたかったんですけど、とりあえず、市場では見たことがないと言われまして」

「え!無いんですか?」


「竹の子が美味しいかは知らんけど、竹林はあるぞ?」

「え?どこに?」

「鮭捕ったそばに」

「太い竹もあった?」

「このくらいの竹も生えてた」


ソウは両手の親指と人差し指を使って大きな輪を作って見せた。


「タケノコ掘りに是非参加させてください!!」


コバヤシが懇願し、来年の竹の子が生える頃、竹の子を掘る要員として、ここにいる全員が参加することになった。


シャケの半身を半分に分けた物を渡し、二人は大満足で帰っていった。


◇◇◇◇◇

(おまけ・マヨネーズを作りながら)


「リラちゃんは、この辺に住んでいるの?」

「はい。歩いてすぐです」

「ハナノさんは、優しい?」

「ものすごく優しくて親切で私には休むようにいつも言うけど、でもユリ様は仕事ばかりしてます」

「ハナノさんって、ワーカーホリックなんだ」

「今日も、この後来る人とお芋を加工するみたいです。先週は、栗を持参した人に、モンブランと栗ご飯を作っていました」

「え、持ち込み対応してるの?」

「ユリ様は栗を買うつもりだったそうです。でも栗は売っていないので、拾って持ってくる人から買っていました」

「あ、持ち込む人が、ケーキとかご飯と変えてくれって言ったのか」

「そうです!」


◇◇◇◇◇

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