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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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白鳥

スワンが、思ったより素敵に出来上がったらしく、みんな喜んでいた。

失敗した主な原因を説明し、絞るのに時間がかかったと納得していた。


ふと、ユメちゃんが静かだな?と思ったら、高い椅子の上で寝ているようだった。起きるのが早すぎたんだと思う。



お昼になり、ランチに招待された。

唐揚げと、さつまいもの炊き込みご飯と、サラダと、ポットパイだった。

サラダのドレッシングがゴマドレッシングだったので、明らかにリラ監修だろう。


ユメを起こしてきてテーブルに着くと、花籠シューを見て喜んでいた。そういえば、店では作らなかった。


他のメンバーは自分で作ったスワンシューにうっとりしていて、お気にいりのようである。


「すみません、言い忘れていましたが、スワンシューは持ちませんので、誰かに提供したい場合は、提供する直前に仕上げることをおすすめします。首がぐにゃんと曲がってしまいますので」


驚いたあと、見つめていた全員が、食べだした。


ご飯のメニューは今回も好評だった。

唐揚げは、材料はなにかと驚かれ、ポットパイは楽しいと喜ばれ、ユリはとても嬉しかった。

特にサラダのドレッシングが好評で、どうやって作るのか聞かれた。

口頭で簡単に説明したが、作らない人に言っても伝わらないので、次回のアルストロメリア会のあとで各家の料理人を呼んでもらい、ドレッシング講座をすることになった。


ユメはローズマリーに呼ばれたので、別行動になった。

次回は、ラ・ポンムを作りたいらしい。

解散したあとリラのところに行くと、リラはマヨネーズの特訓を指導していた。

どうやら今までは、マヨネーズが成功せず、ユリが渡したドレッシングレシピは作れていなかったらしい。


リラによると、ケチャップに似たトマトを煮詰めたソースがあるらしく、それを使ってコブサラダドレッシングも教えたそうだ。

ユリも味見させてもらうと、ケチャップより少し甘味が足りないが、ドレッシングで使うには問題なさそうだった。


リラは、シーザーサラダドレッシングも教え、足りないのは、マヨネーズを混ぜる根性だけらしかった。


電動ホイッパーとか、ブレンダーとか、ミキサーとか無く、マヨネーズは大変よねー。


「ユリ・ハナノ様! リラちゃんのお蔭で、いただいたレシピが作れました!」

「レシピ、簡単にしか書いてなくてごめんなさいね。他にも渡したものでわからないことがあったら聞いてくださいね」

「このマヨネーズというものはすごいですね!なんにでも合うし、色々なものを作ることができる!」

「油の種類や、お酢の種類を変えて作ってみるのも良いですよ」


「ユリ様、タルタルソースは聞かれましたがピクルスがわかりませんでした」

「あー、私はピクルスという、キュウリの酢漬けを使いますが、酸味のある漬け物の野菜ならなんでも構いません」


「おろしハンバーグというのを作りましたが、あのおろしというのは辛いものなのですか?」

「あー、それ、私も想定外で、前日におろしてからランチで使いました」


「今日の唐揚げはどうでしたか?」

「良くできていました。人数分作るのは大変だったでしょう?」

「リラちゃんの指導のもと、頑張りました!」


「それで、侯爵様より報奨を預かっておりますが、リラちゃんが受け取って良いかわからないというので、ユリ・ハナノ様からお渡し願えませんか?」

「はい。必ず渡しましょう」


ユリは料理長から布袋を受け取った。


「ユリ・ハナノ様、スブタという料理は指導可能ですか?」

「うちの店で売った料理は、ほぼ可能ですよ。無理なのは、季節的に材料が手に入らないもの位です。酢豚はいつ教えますか?」

「次回までには材料を揃えておきます」


「あの、噂なんですが、川魚を食べたって本当ですか?」

「はい。ランチに出して大変ご好評いただきましたよ」

「・・・」

「河口付近で捕まえた鮭をフライにして、タルタルソースで提供しました。リクエストノートにも多数のリクエストが書き込まれていますが、私では捕まえられないもので、再販はしていません」


「誰が捕まえてきたんですか?」

「ソウです。ソウ・ホシミです」

「魚って美味しいんですか?」

「下処理をきちんとすれば美味しいですよ」

「下処理なのか・・・」

「又入手することがあれば、凍結して残しておきますね」


その他にも色々質問されたが、ほとんどは、リラに聞いても解決しなかったことらしく、細かいことだった。


そろそろ帰ろうかと思ったが、ユメが帰ってこないので困っていると、メイドが呼びに来た。


「ユリ様、ユメ様と奥さまがお待ちです。お越しいただけますでしょうか?」

「あ、はい。リラちゃん、又あとで来るわね」

「はーい」


メイドにつれられていくと、ユメがぐったりして長椅子に伸びていた。


「ユメちゃん、大丈夫?」

「正装疲れたにゃ」

「あー。成る程・・・」

「ユリ様、こちらのサイズ合わせをお願い致します」

「どうやって着るんですか?」


渡された服は被るしかないような感じだが、頭から被るべきか、下から履くように着るべきか悩むタイプだった。


「こちらの白い服はワンピースタイプで後ろを留めます。こちらの薄いものは被っていただき、後ろを結います。最後にベールをつけます」

「ベール?」

「聖女は顔を知られると、言い寄る不届き者が増えるので、常に聖女の正装ではベールを着けます」

「ユリ、面倒だったら認識阻害かけるにゃ」

「あ、いえ、ベールあった方が良いです!」


きつくはなく、動きやすく軽い服だった。

全体的に白っぽいため、シンプルなウエディングドレスのようではある。

ベールも、視界は良好なのに、鏡で見ると全く顔が見えなかった。

これを着るときは、髪を全てセットして、髪色さえ分からなくするそうだ。


「ユリ、朝変なのが来てたにゃ」

「え?」

「ここに来たとき居たにゃ」

「あの人って、第一王子かと思ったんだけど」

「そうにゃ。ここで聖女の正装を作ったから、聖女が誰なのか探しに来たらしいにゃ」

「えー!」

「ソウに引き取ってもらってよかったのにゃ」


私は、探されていたのか。

ユリは少し複雑だった。衣装だけのつもりが、本当に人を助けることになって、これを着る正当性ができてしまったからだ。


「助けられる人は助けたいと思うけど、私は自分のお店、アルストロメリアをやっていきたいわ」

「それで良いにゃ。聖女は大変にゃ。手の届くところだけ助ければ良いのにゃ」


「ローズマリーさん、こんな感じで良いですか?」

「はい。大変お似合いでございます。このまま仕上げまして、5日程で出来上がるそうでございます」


ユメは座り直した。


「ローズマリー、よろしく頼むのにゃ」

「かしこまりました」

「ローズマリーさん。いつも色々ありがとうございます」

「いくらでも頼ってください」


ローズマリーがふと微笑んだ。


「ユメ様、公表の前日に、我が娘に話すことをお許しください」

「今日この後、話して良いにゃ。公爵と侯爵には先に通達するにゃ。同じ扱いで良いにゃ」

「誠にありがとうございます」

「ユリのことは内緒にするのにゃ」

「かしこまりました」


「ユリ、脱いだら帰るのにゃ」

「はーい」


ユリは衣装を脱ぎ、着てきた服に着替えた。

着るときも、脱ぐときも、ローズマリーが手伝ってくれた。極秘案件だかららしい。



ユメと一緒にリラを迎えに行き、店まで戻ってきた。


「リラちゃん、明日はお客様が多いんだけど、私はいるけど、12時頃まではバタバタしているから来るなら12時以降にしてもらえる?」

「忙しいなら何かお手伝いしましょうか?」

「んー。ぶっちゃけて言うと、魚の生卵を食べる集まりがあってね、この国の人にはハードルが高いかなぁって・・・」

「サカナノナマタマゴ・・・いえ!来て手伝います!見るだけでも価値がありますので!」

「あ、うん。なら、好きな時間からどうぞ」


リラとマーレイは笑顔で帰っていった。

明日、何時から来る気なのだろう?


「リラ、チャレンジャーにゃー」

「そうね。卒倒しないことを祈るわ」

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