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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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全快

「おはようにゃ!」

「おはようユメちゃん、ずいぶん早いわねー」


昨日色々あって疲れているかと思っていたのに、ユメが早く起きてきた。

無理しているんじゃないかと心配だ。


「朝ご飯何か食べる?」

「食べたいにゃ!なんでも良いにゃ!」

「今朝は、トーストとヨーグルトとサラダで、ソウはシナモントーストを食べて、私は目玉焼きトーストを食べたわ」

「目玉焼きトーストが良いにゃ!」

「今作るわね」


食パンの真ん中を少しへこませ、縁にマヨネーズを細く絞りだし、卵を割って黄身を1回箸で刺して潰し、オーブントースターで焼く、焼けたらとりだし、マヨネーズを格子状に絞り、塩コショウして出来上がり。


ユメはずっと横でみていた。


「どうして卵を箸で刺したにゃ?」

「そのままだと黄身が全く焼けなくて、食べるときこぼれて大変なのよ。これでも半生だから気を付けて食べてね」

「わかったにゃ」


サラダとヨーグルトをだしてユメに聞いた。


「ユメちゃん、ヨーグルトはフロストシュガー、イチゴジャム、メープルシロップどれが良い?」

「イチゴジャムが良いにゃ!」


ヨーグルトにイチゴジャムを添え、王林のジュースをだした。


「ユメちゃん、イリスさんって全快ではないわよね?」

「そうだにゃー」

「見に行った方が良いわよね?」

「そうだにゃー。ユリ、なんで最初顔をさわったにゃ?」

「どこが悪いとかわからなかったけど、暗く見えるところかなと思って最初さわったの。でもなんか手応えがないと言うか、それでつぎは、明るく見えるところをさわったら、それが合っていたみたい」

「明るく見えるのにゃ?」

「ぱっと見は普通に見えるんだけど、じっと見ていると、こう、明るいところと、暗いところに別れて見えて」

「なるほどにゃー。昔いた聖女は、悪いところが赤っぽく見えます。って言ってたにゃ。人によって見え方が違うらしいにゃ」

「そうすると、イリスさんは足も悪いと思うわ。左足も白っぽく見えていたから」

「食べたらちょっと行くにゃ!」

「何か用意する?」

「食べないけど、リラの華はどうにゃ?」

「それ良いわね。持ってくるわ」

「黒糖のパウンドケーキも持ってきてにゃ」

「はーい」


ユリはお店からリラの華と、厨房から黒糖フルーツパウンドケーキを持ってきた。

2階に戻ると、ユメは食べ終わっていた。


コンコンコン


「ソウ、居るにゃ?」

「どうぞー」

「イリスのところに行くにゃ。ここを貸すか、私の部屋の結界を解除してにゃ」

「あー、今日はちょっと無理だからここから、いや、俺も行く」


結局、3人で行くことになった。

ユメはユリを運ばないならユメのままで行けるらしい。


「先に行くにゃ」

「おう。隣の部屋だな」


ユメは頷いてそのまま転移していった。

すぐにソウも転移してイリスの隣の部屋についた。ユメは廊下にいた。


「イリス、居るにゃ?」

「はいどうぞ」


返事をしたのは店主のレギュムだった。


「昨日できなかった治療の続きに来たにゃ」

「ありがとうございます」

「イリスは元気にゃ?」

「凄く元気になりましたが、足が少し痛いようです」

「やっぱり、左足ですか?」

「はい!寝ているときはわからなかったらしいのですが、起きてみたら痛かったようで、すぐ戻ってくると思います」


イリスは何とか歩けるほどに回復していた。

女性が一人付き添って、肩を貸すようにして戻ってきた。


「あ!ユメちゃん!、ユリ様!、ホシミ様!」

「治療の続きに来たにゃ。足を治すのにゃ」

「ありがとうございます!昨日はろくにお礼も言えず、リラにまで会わせてもらえて、本当に何て言えば良いのか」

「とりあえず、ベッドに横になるのにゃ」


介助の女性は、イリスをベッドまで連れてくると下がっていった。


レギュムとソウには退室してもらい、足を見せてもらった。


「たぶんこの内腿の辺り、それと膝の下辺り」


ユリは白っぽく見える場所を、治りますように。と心の中で唱えながら触れた。


「あ、足が軽くなったわ!突っ張るような、重石を付けているような不快感がなくなりました!」


イリスを見ると、暗いところも明るいところもなくなり、普通の肌に見えるようになった。


「普通に見えるようになったわ」

「もう大丈夫にゃ。しっかり食べて体力をつけるのにゃ」

「イリスさん、これ、リラちゃんが開発した『リラの華』というクッキーです」

「作ったって、そういう・・・リラに聞きました。とてもよくしていただいていると、何もかも、本当にありがとうございます。回復次第、お店のお手伝いをさせていただきたいと思います!」

「はい、期待しています」

「時間無いから帰るのにゃー」


ユメが慌てて部屋を出て、ソウと一緒に転移して戻った。


「俺は出かけるから、ユメ、ユリをよろしくな!」

「任せるのにゃ!」


すでに外にはマーレイが来ていて、昨日言えなかったと、お礼を言われた。


「さっきイリスのところに行って、全快にして来たにゃ」

「立って歩いていたわ」

「え!もう立って歩けるんですか!」

「行ったら足が痛いながらも歩いていて、その足も治してきたのよ。もう大丈夫だと思うわ」


ニコニコして喜んでいるリラとは対照的に、マーレイは涙ぐんでいた。


「遅れてもなんだから、そろそろ行きましょうか?」

「かしこまりました」


パープル邸に着くと、いつもの出迎えがあり、リラはメイドと一緒にユリが預けた荷物を持って屋敷の厨房へ行った。

今日のメンバーは、パープル母娘3人と、王女の3人(王女2人とブルー公爵婦人(ネモフィラ))と、第一王子妃(アネモネ)と、キラキラしい男性がいる。


「あ!メイプル!なんでいるにゃ!」


どうやらユメの知っている人で、メイプルというらしい。


「しょ、ユメ様、見学です、見学!」

「パープルに迷惑かけるなと、ソウも言ったにゃ!」

「迷惑なんてかけていません」

「迷惑かどうか聞いて、迷惑ですと言うわけがないにゃ!ソウに引き取ってもらうにゃ!」


確かに、迷惑ですか?と聞かれて、はい迷惑です!と言える人は少ないわね。

と言うか、ソウも知り合いなの?

えーと、まさか、王族?

あー、王女の3人と、第一王子妃のアネモネさんが、明らかに笑いをこらえてる。

恐らく、第一王子だわ。

ユリ、正解である。


ユメは一瞬静かにして何かしていた。


「ユメ様、それは止めて!絶対邪魔しないから!」

「すでに邪魔しているが?」


ソウが冷えた表情で登場した。


「今日は城に居ると聞いていたが?」

「そうだね。そんな予定だったね」

「なら、予定を遂行しような?」


ソウはメイプルの腕をつかみ、そのまま転移していった。

無かったことにすれば良いのかなぁ?

誰も言い出さないので、ユリは無かったことにすることにした。


「今日のシュー、スワンシューを始めましょうか」

「はい」「はい」「はい」


「ユリ先生、あと二人呼んできてもよろしいでしょうか?」

「はい。どなたですか?」

「ピアニー様とカーネーション様です」


身分の関係で、第一王子がいたため、子爵婦人のカーネーションが同席できなかったようだ。


「あ!そうです、ポットパイの約束で、パールホワイト家はどなたもいらしてないのですか?」

「カーネーション様が預かるそうです」

「はい、了解です。多めに持っては来ましたが、今居る方はこちらで召し上がっていくのでしょうか?持ち帰るのでしょうか?」


おずおずと、第一王子妃(アネモネ)が聞いてきた。


「ユリ先生、私たちの分もございますの?」

「はい。35持ってきているので大丈夫です。余ったら調理場に差し入れようと思っていたので」


「ユリ先生、遅くなり申し訳ございません」


ピアニーとカーネーションが来て謝っている。


「2人の落ち度じゃないにゃ」

「まだ開始していないので問題ないです。さあ、移動して始めましょう」



「まずは、全員カスタードクリームを作ります。わからない方と、自信がない方は見に来てください」


王族のメンバーのみが見学に来た。


先程、ラベンダーにこっそり聞いてみたが、王族の補助につくのは、子爵婦人では荷が重すぎるそうだ。よって、今日は全員一人ずつ作ってもらうことにした。


一通り作って見せ、実践に入ったらラベンダーと二人で王族メンバーを見て回った。


明らかに上達していてユリは少し驚いた。

練習したのだろうか?

以前とは、手際が段違いだった。


「皆さんものすごく手際が良いですね!素晴らしいです!」


王女たちは、誉められ喜んでいた。


「はい。では次はシュー生地ですが、時間との戦い系なので、説明しながらだと私が失敗します。なので、最後まで作るので、絞り始める辺りまでは見てください」


ユリは手際よく火加減や、火入れの加減のポイントを説明しながら生地を作り、まずは丸口金で丸いものを絞った。次に少し小さく2つ繋がった丸いものを絞り、最後に、星口金で、シェルを絞った。

残った生地に、ほんの少しカスタードクリームを加え、コロネでUとSを絞り、Sの片側に、くちばしの分をちょんと絞った。


「はい、この丸がシュー、繋がった丸が花籠、星口金のシェルがスワンです。Uが花籠のとってで、Sがスワンの首です。たっぷり霧吹きをかけてから焼きます。はい、実践どうぞ!」


ユリは釜の担当者に焼き方を説明しに行った。


「最初は高温で一気に膨らませてください」


ラベンダーにも作ってもらった。

屋敷中に配るには、ユリが作っただけでは足りない。


「サリーさん、生クリーム量っておいてください」

「かしこまりました」


ユリは生地を鍋で混ぜているのを指導しに行った。

ここでしっかり熱を入れないとシューは失敗するのだ。そしてこの熱が冷めないうちに絞って焼かないと上手に膨らまないのだ。


ユリは少し考えてからもう一度作ることにした。

失敗した人の代替分を考えたのだ。

見た感じ、ラベンダーは大丈夫そうだが、全員大丈夫かというと、言い切れない。


先程の分から失敗した人に分けるとして、大量に作るのは普通タイプにした。


「ラベンダーさん、生クリーム泡立てておいてください」


焼いている時間に、片付けと、生クリームを泡立ててもらった。

全員焼き上がると、ユリの予想通り、潰れて膨らまないのが2人いた。


「とりあえず、仕上げの練習なので、私が作ったものを使ってください」


膨らまなかった2人にシューを渡し、切り方を説明した。

花籠は平らに上側を切って、カスタードクリームと生クリームを絞ってから蓋を折るように真ん中に置き、取っ手を差し込む。

本当はホワイトチョコがほしい。


「これに、好きなフルーツをのせると、フルーツバスケットです。その場合、よく水気を切ってから乗せてすぐ食べてください」


スワンシューの作り方を説明し、最後に普通のシューの説明をした。


「残ったカスタードクリームと生クリームを半量ずつまぜます。このクリームをクレームディプロマートと呼びます。これは、細目の丸口金で、切り目を入れないシューに射し込んで絞り入れます」


失敗したシューを本人に聞いて回収し、甘味を押さえたカスタードプリンの生地を作り、刻んでココットに入れて、パンプディングのようなものを作った。

好みで、メープルシロップや粉糖をかけて食べると良い。

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