治療
◇◇◇◇◇
(いつもの視点)
「ユリ、頼みがあるにゃ!人を助けてほしいのにゃ!」
ユメが突然黙ったと思ったら、今度は突然言い出した。
「私にできることなら手伝うけど?」
「ユリにしかできないのにゃ!」
「何をすれば良いの?」
ユリの問いに答えることなく、ユメはリラに言い聞かせていた。
「その前に、リラ、一人で待っていられるにゃ?ソウが来たらソウに連れて来てもらうと良いにゃ」
「はい・・・」
「ユリ、2階から行くのにゃ!」
階段を上がりながら、なぜ2階?とユリが不思議に思っていると、先に階段を上がったユメは変身してルレーブになった。
ユメちゃん!服!とユリは慌てたが、ルレーブは薄い下着のようなワンピースを着ていた。パープル邸で借りたものに似ている。
「ユリには癒しの力があるの。不治の病も治せるわ。元の国の病気で、血栓ってわかる?」
「血管が詰まって脳や心臓だと一大事になる病気ね」
「そのイメージで、魔力放出器官に詰まった固まりを取り除いてほしいの」
「イメージすれば良いの?」
「その通り。移動するわ!」
ソウの部屋に入り、ルレーブはユリを連れて転移した。
転移先でルレーブの姿からユメに戻り、一瞬黙った後、部屋の戸を開け廊下に出た。
廊下にいた男性に見つかったが、急いで頭を下げられた。
「先日は大変失礼いたしました。どうかお嬢様をお助けください!」
「やるだけやってみるのにゃ。ソウが来るから外で待っててほしいにゃ」
「かしこまりました!」
ユメちゃんはここに来たことがあるのね・・・。
やり取りを見てユリは考えていた。
ユメは隣の部屋をノックもなく開け、ずかずかと入っていった。
ユリも急いで後を付いていき、中にいた人物を見て驚いた。
リラに似ている。
意識がないのか呼吸は荒いのに目を瞑ったままだった。
「ユメ様!その方が?」
中にいた男性の問いかけに、ユメは答えなかった。
「もしかしてリラちゃんのお母さん?」
「そうにゃ。ユリ頼むにゃ」
「頑張ってみます」
ユリは寝ている女性の額を触り、頬を触り、首を触り、右腕を触り、首をかしげた。何となく黒っぽく見えた場所を触ってみたのだ。
もう一度手を出して、今度は白っぽく見える左腕を触り、そのまま心臓の辺りを触ると、女性は淡く輝き、その光が飛び散った。
呼吸が静かになり、表情が穏やかになった。
「ユリ、大丈夫にゃ?」
「何となく、まだちゃんと治っていないと思うの。失礼してもう少し触るわね」
コンコンコン
「ホシミ様をお連れいたしました」
「お入りください」
部屋の中に居る男性が答えた。
すると、ソウだけではなく、マーレイもリラもいた。
「お母さん!!」
「リラの、声が、聞こえる、気が、するわ」
寝ている女性は体力がないためか、蚊のなくような小さな声で、途切れ途切れに話した。
「目が覚めたのにゃ」
「ユメちゃん、本当に、助けに、来て、くださったのね。ありがとう、ございます」
「助けたのはユリにゃ」
「ユリ様、助けて、くださって、ありがとう、ございます。私は、イリスと、申します」
「えーと、イリスさん、痛い所とか調子が悪い所を教えてください。新前なので、まだよくわからないのです」
イリスは少し微笑むと、頑張って話し出した。
「一番、痛かった、胸に、杭を、刺される、ような、重みが、なくなって、あとは、この辺が、少し、痛みが、残って、いるように、思います」
イリスの手が布団の上から示した場所は腹部だったので、ユメが男性を全員部屋から追い出した。
布団をどけ、薄い服の上から手を当てて探ると、腎臓だか、肝臓だか左の脇腹の辺りで、淡く輝き、その光が飛び散った。
「ユリ、大丈夫にゃ?一度休むのにゃ」
「え、あ、うん」
「リラ、母と話すと良いにゃ。何かあったら呼ぶのにゃ」
「はい、ありがとうございます」
リラを残し、ユメとユリは退出した。
外に待っていた女性に応接室に案内され、ユリとユメが入ると、ソウとマーレイと先程部屋にいた男性がいた。
「ユリ・ハナノ様、わたくしイリスの父で、この店の主人をしておりますレギュムと申します。娘をお助けくださり本当にありがとうございます。どんなことでもいたしますので、どうかお申し付けください」
「え?」
ユリはいまいち状況が読めずにおろおろしていた。
それを見たソウが補足してくれた。
「ユリに、お金のお礼は要らないと言ったらこうなった」
「成る程・・・」
ユリは何かないかと考えた。
「私はランチとおやつの店、アルストロメリアの店主、ユリ・ハナノです。お礼を何かしたいと言うなら、お店が忙しすぎて大変なので、信頼できる人を紹介してください。あ、マーレイさんに選定してもらいます」
「あの、マーレイはそれほどまでに信頼がおけるのですか?」
「マーレイさんもリラちゃんも、申し訳ないくらいによく働いてくれます。そして、二人ともかなり優秀です。私は、もぉの凄く助かっています」
考え込んでしまったこの店の店主レギュムに、ソウが追い討ちをかけた。
「確かにマーレイは優秀だ。マーレイの直接の雇い主は俺になるが、俺のもとの国でもここまで優秀な部下はいなかった」
目の前で誉められまくってしまったマーレイは目を白黒させていたが、レギュムは考えが決まったのか、こちらを見た。
「ユリ・ハナノ様、イリスは元気になりますか?」
「えーと、ユメちゃん?」
「体力さえつけば元気になるにゃ」
「ユリ・ハナノ様、人は何人必要ですか?」
「女性を2人が希望ですが、1人でも良いです」
「仕事内容を伺ってもよろしいですか?」
「配膳です。配膳の人がいれば、私とリラちゃんが作る方に集中できます」
「他に条件などはございますか?」
「リラちゃんのレベルが高いので、他の方がどの程度かわからないのですが、計算ができないと厳しいかもしれません」
「元気になったイリスが良いかもしれません。娘なら計算も得意で、マーレイの選定にも敵うでしょう」
「リラを呼んでくるにゃ」
ユメは部屋を出ていった。
「マーレイさんはそれで良い?」
「はい!!」
「なら、1週間後に又様子を見に来て、移動しても大丈夫そうなら連れてくれば良いか」
「ソウ、お願いします」
ユメがリラをつれてきたので、帰ることになった。
来たときと同じ部屋に入り、ユメは変身できないので一人で、ソウが3人を連れて先に転移した。
戻ってきたのは、お店の南側だった。
急いでハンバーグを食べて解散した。




