球型
ユリは生姜焼きを取り敢えず3人前作った。
リラにサラダを用意してもらい、ユメが冷茶とポテロンを持ってきた。
食べはじめた頃にソウとマーレイが来た。ユリが作りに行こうとすると、ソウに止められたため、先に生姜焼きだけを食べた。
「ユリ、急いで食べないで。ちゃんとゆっくり食べて」
自分の分を食べ終わり、2人前の生姜焼きを作ると、リラがサラダを、ユメが冷茶とポテロンを出してくれていた。
ユリは二人にお礼を言って、アップルパイを2つ持ってきてソウとマーレイに出した。
ソウとマーレイが生姜焼きを食べている横で、リラとユメの3人で、ポテロンを食べた。
「美味しいにゃー。何個でも食べられる味にゃー。ユリは天才にゃー」
ユメがものすごく喜んで食べていた。
ユメちゃんのために、少し残しておこうかしら。
ポテロンを少し残そうと考え、その場合何人分かしら?と悩むのだった。
外おやつとお茶類も出し終わり、ユリもしっかり昼休みを休んだ。
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おすすめおやつ
ポテロン(かぼちゃのケーキ) 1000☆
冷茶 200☆
お茶(注文した方のみおかわり自由) 200☆
常温おやつ
パウンドケーキ 150☆
クロ猫ッカン 250☆
アップルパイ 300☆
マロンパイ 350☆
リラの華 200☆
黒猫クッキー 時価
(ユメちゃんから直接購入してください)
軽食
ホットサンド(ハム、たまご) 500☆
ポットパイ(パイ皮付きシチュー) 500☆(限定30)
チキンとアボカドのサラダ 300☆(限定14)
栗ご飯 300☆
おにぎり(新生姜の佃煮) 200☆
おにぎり(大葉味噌) 200☆
持ち帰り専用
豪華な箱入りポテロン1個 1300☆
箱入りポテロン2個セット 2200☆
箱入りポテロン4個セット 4200☆
ポテロンを持ち帰る場合、10分以内に冬箱に入れてください。
黒蜜 800☆
黒蜜・容器持参(150ml・180g) 500☆
凍結グラタン(1人前) 600☆
凍結ミニミニグラタン(1/4人前) 200☆
(ハム、コーン、ブロッコリー、マカロニ)
グラタン&ドリアの持ち帰りについて。
冬季以外の販売は、冬箱か真冬箱をお持ちの方に限ります。
解凍し釜で焼いてからお召し上がりください。
※器返却スタンプ始めました!
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おやつタイムがはじまって、最初に来たのは、ランチの時に30個予約していった人だった。
4個入り7箱、2個入り1箱を渡すと、申し訳なさそうに言われた。
「2つは、1つ用の箱にそれぞれ入れていただけないでしょうか?」
「構いませんが、箱代が高いですけどよろしいですか?」
「勿論です!」
以外と高価な1つ入り用の箱は人気があるようだった。人に差し上げるのに都合が良いらしい。
ユリ的には、1つしか買わない人が使うもので、1つ用の箱をいくつも欲しがるのは少し不思議だった。
厨房に戻り、明日のお菓子の準備をはじめた。
カスタードクリームを作り、パイの3×4を折り、次のパイのバターを用意して計量したものを混ぜているとリラが来た。
「ユリ様これはなんですか?」
「丸い氷を作る製氷皿なんだけどね。これでゼリーのようなものを作ります」
「ゼリーのようなもの?ですか?」
「まずは、果物をカットします。この中に入る大きさ、このくらいに切ってください。約200カットです」
「はい!」
「種類は、キウイフルーツ、パイナップル、黄桃、洋梨、ブルーベリー、みかん(牛乳)、白桃(青)、リンゴ(赤)、葡萄(紫)です。葡萄とみかんとブルーベリーはそのままで。ふふふ」
リラにカットを任せ、ユリは店を見ていた。
「ユリ・ハナノ様!昨日より早い時間ですが、サラダのタレ、いやドレッシングでしたかな。は、できていますでしょうか?」
「はい。できていますよ。昨日のシーザーサラダドレッシングと、今日のコブサラダドレッシングです。大体、一瓶は6人前くらいです」
「ありがたい!どのくらい買えますか?」
「シーザーサラダドレッシングが3本、コブサラダドレッシングが5本有ります」
「それぞれ2本ずつの、計4本よろしいですか?」
「はい。どうもありがとうございます。再注文される場合、最低製造量があって受けられないこともありますので、早めにご注文ください」
「了解した。ありがとう!」
「ユリ・ハナノ様、今のはなんですか?」
「サラダのドレッシングです。昨日頼まれたんです」
「それはまだありますか?」
「昨日のサラダに使ったシーザーサラダドレッシングが1つ、今日のサラダに使ったコブサラダドレッシングが3つ有りますね。作る兼ね合いで1本ずつは作れないもので」
「それは今売っていただけるのですか?」
「この4つなら構いませんが、値段は先程の方の言い値だったもので、少しお高くなっています」
「構いません!是非、売ってください!」
「はい。どちらですか?」
「できれば両方を」
「私も欲しい」
「あ、私もください!」
「こちらにも!」
「私も!」
「誠に申し訳ございません。既に足りないのですが・・・」
一番身分が高そうな人が場をしきりだした。
「でしたら、先に声をかけた方が優先で、そのあとは勝負で決めましょう」
勝負と聞いてユリは慌てた。
「わわわ、勝負って何するんですか!? 平和的に決めましょう! 今希望する方は何人いらっしゃいますか?・・・あ、全員ですか。では、アミダで!」
ユリが言わなくても、せいぜいコイントスの勝負だが、アミダなら何人いても一度に方が付くと、後々流行ることになるのであった。
ユリに先に話しかけた人も、遠慮して1つしか選ばなかった。
残りをアミダで決め、器が揃い次第、販売すると約束することになった。
客が入れ替わり、先程の騒動など知らないはずなのに、ドレッシングの販売はいつからですか?と何人にも聞かれた。
「ボーンリーフさんにお願いして作ってもらってからなので、いつになるか分かりません!」
しつこい客に思わず言い返すと、席をたってこちらに来る客がいた。
仲裁しようとしてくれるのかしら?
「ユリ・ハナノ様、私、ご挨拶はしておりませんが、ボーンリーフ商会の者です」
「え!」
「会頭(≒社長)でなくても宜しければ、今ご注文お受けいたしましょうか?」
「そちらがそれで困らないなら、見本でもらった瓶の一番口が大きなタイプを1000、もしくは1200、出来次第50個位でも良いのでお願いします。蓋は、提案のあったタイプでお願いします」
「承りました。納品時期につきましては、会頭が説明に伺うと思います」
「ありがとう!助かったわ!いつお店にいけば良いか困っていたのよ。あ、これよかったら食べてね」
ユリはパウンドケーキを2切れほど渡した。
田舎のおばあちゃんのようである。
少し疲れて厨房に戻ると、リラはほぼカットが終わるところだった。
一度に33粒出来上がる球型製氷皿6枚で198粒、製氷皿は20枚有るので、一度に3種類を作ることが出来る。
まずは色をつけたりしない種類を作る。
缶詰めシロップに砂糖を足して寒天液を作り、人肌程度に冷ましたら、フルーツを入れた型に流し入れる。
「ゼラチンのゼリーと違って、冷まさないのですね」
「寒天はね、30度位から固まっちゃうから冷ますと固まっちゃうのよ」
「ゼラチンとはそんなにも違うのですね!」
「継ぎ足しも、ゼラチンと違って失敗するとくっつかないのよ」
ユリは実践しながらリラに説明した。
「この製氷皿のこの辺までいれて、蓋をゆっくり閉めます。ほんの少し溢れるくらいが正解です」
「うわー、加減が難しそうですね」
「まあ、固まってから取り除けば良いのよ」
ユメが顔を出した。
「何作ってるにゃ?」
「九龍球よ。フルーツを入れた丸い寒天ね」
「作りたいにゃ!」
「んー、リラちゃん、フルーツって多めに有る?」
「はい。避けてあります」
「なら、二人とも1枚ずつ好きに作って良いわよ」
「やったにゃ!」
「わー!ありがとうございます!」
リラは果物の種類を1粒にたくさん入れていたが、ユメは、黄桃をスライスして、クッキーの小さな星形で抜いていた。
二人が作っている間、ユリはリンゴをカットして皮と一緒に煮込み、白桃をバタフライピーで濃いめに出した青い液で煮た。
「すみませーん!」
「はーい!」
店から呼ばれてリラが急いで行った。
ユリは寒天液を再度温め、ユメが用意した製氷皿に注いだ。フルーツが小さいので少し漂ってしまい、ユメが慌てていた。
「竹串で戻すと良いわよ」
「わかったにゃ!」
戻ってきたリラはポテロンを詰めていた。
「リラ、代わるにゃ。何個にゃ?」
「8個、代済みです」
ユメがポテロンを箱に詰めて、店に持っていった。
「リラちゃん、寒天液を温めてあるから注いで蓋を閉めてね」
「はい!」
「30度以下になれば固まってくるから、そうしたら冷蔵庫に入れてね」
「はい!」
ユリはシロップを作った。
九龍球は、シロップに浮かべて提供するのだ。
あら熱がとれてから空いている冷茶用のピッチャーにいれて冷蔵した。
いつもの感じてブルーベリーのパイを作った。
ブルーベリーは冷凍物だが、焼いてしまうので支障がない。
パイ生地も3×4を折り、冷蔵した。
煮たリンゴ、色をつけた白桃、ブルーベリーで九龍球を作った。
先に作ったものは、種類ごとに分けて、シロップと一緒にボールに入って冷蔵庫に入れてある。
ユメを呼んできてクロ猫ッカンを作ってもらい、リラにはクッキーを作ってもらった。
二人は自分達が作った九龍球を出してみて、とても喜んでいた。
珍しくソウが早く帰ってきた。
「ユリ、手伝い要る?」
「手伝いじゃないけど、ソウも九龍球作る?」
「何それ?」
ユメが自分が作った九龍球を見せた。
「揃えると願いが叶いそうだな・・・」
「にゃははーなのにゃ」
ユメの真意は他の誰もわからなかったが、ソウには通じたらしく、ユメは喜んでいた。
「ホシミ様!私のも見てください!」
「おー!リラのは色とりどりできれいだな」
「これ、簡単なの?」
「難しくはないと思うわよ? 今日はマーレイさんは一緒じゃないの?」
「もうすぐ来ると思うよ
「33球作りたいならみんなと同じ容器で、半分くらいがよければ14球ならこっちの型ね」
「俺14で!」
ソウに説明し終わった頃、マーレイも来た。
ユリが説明するより良いかと思い、リラに任せた。
店に顔を出すと、いつも通り、質問攻めにあった。
「ユリ・ハナノ様、このポテロンとは素晴らしいですね。この名前はどう言った意味なのですか?」
「ありがとうございます。外国語のかぼちゃです」
「ユリ・ハナノ様、サラダのタレには種類があるのですか?」
「サラダにかけるタレは、ドレッシングといいます。種類はたくさん有りますが、私が好んで使うのは数種類です」
「ご店主、今日のアップルパイは、注文が出来るのかね?」
「数によりますが、おいくつくらいですか?」
「10か12位だな」
「2日前までにご注文いただければ、材料が揃う季節なら作れると思います」
「なるほど、材料が揃わないこともあるのだな」
「ユリ・ハナノ様、リクエストノートが有ると伺ったのですが、どれでしょうか?」
「えーと・・・あ、今あちらの方が書かれているノートがそれですね」
厨房に戻り、ソウとマーレイが作っている九龍球に寒天液をそっと流し入れた。
横で見ていたソウが思い付いたことを話していた。
「それ真ん丸が出来るなら、少し色のゼリーを流して」
「うん」
「その真ん中に粒状の菓子かチョコでもおいて」
「うん?」
「固めたあと残りの部分にミルクゼリーを流し込めば、目玉が出来るな」
「・・・それ気持ち悪くない?」
「ハロウィーンに良いかと思って」
「ハロウィーン、無いんじゃなかったの?」
「流行らすか?」
「・・・。私は黒猫とかぼちゃだけで良いかな」
かぼちゃに顔が描きたいと言ったり、目玉ゼリーを作ろうとしたり、ソウはハロウィーンやりたいのかしら?
閉店時間になり、みんなでココナツカレーを食べた。ソウは辛味調味料を足していた。
「ユリ!お客に、カレーが辛くないって言われたにゃ」
「あー、辛味調味料を出すの忘れてたわ」
ソウとマーレイが作った九龍球を取りだし、リラに手伝ってもらい、残りのみかんと牛乳、葡萄とブドウジュース、洋梨の九龍球をつくった。
余った寒天液は、残っているフルーツと一緒にバットと、星形とハート型がある製氷皿(ラムネに使った製氷皿)で固めた。少し多めに作ったので、明日の外おやつに使おうと思う。




