行楽
今日はやっとソウの休みと合わせられた。
初日に市場に行ったきり、一緒に出掛けてすらいない。
まあ、私は週休2日制を勝手に導入しているので、ソウほど忙しくはないんだけど、ないはずなんだけど、・・・なぜか忙しかった。
もうすぐここへ来て4週間になる。
ソウからデートのお誘いがあり、お出掛けの予定なのだ。
早朝から気合いをいれたお弁当を作っている真っ最中である。
唐揚げ、卵焼き、紫蘇巻きカツ、煮竹の子、アスパラベーコン、焼売、ミニおにぎり。
おにぎりの具は、おかか、焼き鮭、焼きたらこ、ツナマヨ、昆布の佃煮。
海苔は別に用意して、食べるときに巻いてパリパリで。
どんどん出来上がっていく。すごい量のお弁当のおかずが。
「おはよー」
「あ、ソウ、おはよう」
「ユリ、これは?」
「お弁当のおかずよ」
「うん・・・。いったい何人分?」
「え?、あーーー!本当だ。何人分だろう?」
「あはははは。ユメを誘っても食べきれないね」
「久しぶりのお出掛けが嬉しくって作りすぎちゃった」
重箱三段に詰めても入りきらなかった。
ユメにも声をかけ、とりあえず朝ご飯もお弁当用のおかずを食べた。
皿にきれいに盛り付け、マーレイの所に寄って料理を配ってきた。リラが物凄く喜んでいた。
朝からひと波乱あったけど、ようやく出発だ。
ソウが操縦し、ユメはユリの膝の上に丸まって、馬車の中にはお弁当だけが鎮座していた。
「お弁当様のおなーりー!」
ソウがふざけて言ったけど、事実だ。
でも、ソウが操縦するなら一緒に横にいたい。
「どこに行くの?」
「ユリも気に入ると思うよ」
いまいち地理の把握ができていないけど、取り合えず、市場とは違う方向なのね。
少し方向音痴気味のユリは、自分なら目印になる建物があっても迷うのに、何にもない所で道を間違えないソウを凄いと思っていた。
「良いお天気だねー。絶好のピクニック日和」
「そうだな。今日は晴れてよかったよ」
30分もかからず着くらしい。
皿盛りお弁当をリラが凄く喜んでたねとか、レモンと月桂樹の木をどこに植えるべきかとか、ユメちゃんの幼女時の服ってどうなっているのかとか、話しきれていなかったことを色々話した。
街道の右手に湖が見えてきた。
向こう岸は森のようで、こちら側は、
「凄い!花畑!」
「どう?気に入った?」
「うん!素敵!」
街道より少し低くなった場所に沢山の花が咲き乱れ、湖のそばまで続いている。
湖からは清々しい水の匂いがする。
「そこの平らな場所で休憩しよう」
「テーブルチェア出すね」
椅子付き折り畳みテーブル、持ち込んで良かったー。
基本のキャンプ道具は持ち込んだのよね。
ユメがひょいと飛び降り、草の中へ走っていった。
「あ、ユメちゃん、行っちゃった」
「ユメー、昼ご飯までに戻れよー」
「にゃー!」
草の上にラグマットを敷いてソウは寝転んだ。
少し休ませてあげましょ。
ユリは花を見に湖のほとりまで歩いた。
沢山の花が風に揺れながら迎えてくれる。
「うー、カメラがほしいー」
無理だとわかっていても写真が撮りたい。
この美しい光景は心の記憶に残すしかないのね。
しっかり見ておかなきゃ。
結構花を見ていたのだと思う。
「ユリー、そろそろお弁当食べよう?」
「あ、はい。ユメちゃんは?」
「ユメも待ってるよ」
テーブルに戻ると幼女姿のユメがコップでなにか飲んでいた。
「おまたせー。さあ、食べましょう!」
お弁当をひろげ、ユメのために皿に取り分け、自分の分のコップに冷たいお茶を注いだ。お重は一枚おいてきたけど、二枚のお重は2.5人で4人前を食べるようなもので、かなりお腹いっぱいになった。
恐らくソウが二人前食べてくれたのだと思う。
食休みをしてから帰ることにした。