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生鮭

いつものごとく早起きしてパウンドケーキを作った。

スタンプのお陰で、パウンドケーキの出る数が減ったので、早朝の仕込みは格段に楽になった。

解凍するように、レアチーズケーキを冷凍庫から冷蔵庫に移した。


朝ご飯に、昨日食べなかったイクラを食べた。

ほどよく漬かっていてプチっと美味しかった。

ソウは、「旨いなー!旨すぎるー!」と言いながら食べていた。

喜んでもらえて何よりだ。

ここに来なかったとしても、イクラの醤油漬けは久しぶりになる、やっぱり美味しい。


ユメはまだ起きていないので、メモを書いた。


◇ーーーーー◇

ユメちゃんへ


イクラは冷蔵庫にあります。

ご飯は炊飯器にあります。

混ぜるだけでお寿司ご飯になるものを置いてあるので、ご飯に良く混ぜてから、イクラを乗せて食べると美味しいですよ。

◇ーーーーー◇


これで、間違って食べ損ねることもないだろうと、今日はパウンドケーキを置かなかった。


ソウも出掛けたし、お店の外の掃除をしよう。


今日は誰にも会わなかったので、すぐに店に戻ってきた。


さて、仕込みだ。今日の予定は、フライだ。

鮭は、食べやすい大きさに切っておく。塩胡椒をしたらフライの衣をつけよう。88切れあるが、6切れを残して衣をつける予定だ。6切れは、塩鮭と味噌漬けにしよう。

他の材料は、玉ねぎ串、キノコ、芋、うずらの卵串。

玉ねぎ串に短い竹串を刺したのは、バラけるのを防ぐと共に、衣をつけやすくするためで、ブラウンマッシュルーム2つを細串に刺したのも同じ理由だ。

昨日蒸かしておいた芋を適度な大きさに切って、やはり串に刺した。


今日のミックスフライは40食分用意した。


魚のフライに合わせて、千切りキャベツには少し大葉を混ぜた。


「おはようございます!」


リラが出勤してきて、ユリの手元を覗きにきた。


「なに作ってるんですか?」

「フライ用の芋に串を刺したところよ」

「後で衣つけますね! それは何を作るんですか?」

「最終的には『タルタルソース』だけど、とりあえず、『マヨネーズ』ができるわ」

「見ていて良いですか?」

「どうぞー」


さあ、待望のタルタルソースを作ろう!


卵黄、塩、酢、油(マヨネーズ)

茹で玉子、玉ねぎ、ピクルス、パセリ、塩胡椒


マヨネーズが面倒ではあるが、作るのはミキサーだ。リラも見ている。がんばるんだ!ミキサー!


いきなりだとミキサーの羽に材料がかからない(届かない)ので、最初は普通のボールで混ぜる。卵黄4つと塩を混ぜ、酢を加え、徐々に油を加えていく。ある程度の量になったら機械で廻しながら油を足していき、全部混ざったらマヨネーズの出来上がり。


「この状態が、マヨネーズよ。ポテトサラダはこれが入っていたのよ」

「そうなのですね! 機械がなくても作れますか?」

「大変だけど、できるわよ。今度教えるわね。生野菜と食べても美味しいわよ」

「ありがとうございます!」


出来上がったマヨネーズに、茹で玉子と玉ねぎとピクルスとパセリを全て刻んで加え、塩胡椒で味を整えたらタルタルソースの出来上がり。冷蔵庫でよく冷やしておこう。


「出来上がりですか?」

「これがタルタルソースよ。フライに合うのよ」

「なんのフライですか?」

「メインは(しゃけ)フライね」

「しゃけ?」

「サーモン、(ます)(さけ)、で、わかる?」

「・・・まさか、魚じゃないですよね?」

「お魚よ」

「・・・美味しいんですか?」

「あー、やっぱりそういう反応よねー」

「・・・」

「絶対美味しいから、私を信じて食べてみると良いわ」

「はい!ユリ様が美味しいといった物は残らず美味しかったので信じます!」

「油温めたら味見させてあげるわ」

「はい」


「豚カツ20枚と、ここにあるフライ用の野菜類に衣をつけてください」

「はい! お魚はつけなくて良いんですか?」

「つけてくれるとありがたいけど、やりたくないかなぁと思って」

「触る分にはお肉と変わらないので大丈夫です!」

「それならお願いするわ」

「はい!」


フライの衣はリラに任せ、ユリはカレーを仕込みはじめた。

カレーを煮ている時間に、グラタン皿とココットと大きいココットを洗った。


ユリのカレーが出来上がる頃、リラも衣付けが終了した。

ランチ用のご飯をセットしたし、ランチ開始前に終わらせるべきな仕事は、レアチーズケーキのソースだけになった。


「リラちゃん、今日のレアチーズケーキのブルーベリーソースを作ってみない?」

「はい!作りたいです!」

「冷凍のブルーベリーとグラニュー糖と少量の水を入れて吹きこぼさないように少し煮詰めてください」

「はい!」


リラは冷凍庫のブルーベリーを出すと、首をかしげたあとユリに聞いてきた。


「ユリ様、ブルーベリーはここにあるだけですか?」

「もしかして足りない?」

「ここにあるだけなら」

「んー。面倒だと思うけど、ダイスカットのイチゴでもソースを作ってくれる?」

「はい! 半分づつにしますか?ブルーベリーを全部使いますか?」

「ブルーベリー優先でお願いします」

「はい!」


レアチーズケーキのソースをリラに任せ、ユリはグラタンとシチューの用意をはじめた。

持ち帰りは、グラタンは良く売れるが、ドリアはいまいちなので、グラタンと、ミニミニグラタンを作ろうと考えていた。

大きなココットは、ポットパイの試作用に用意したのだ。

これには、ゼラチンを入れたホワイトシチューを入れようと考えている。


とりあえず、チキンのホワイトシチューを作り、弱火で煮込んだ。

そうだ!と思い付き、ガスからはずし、夏板で保温調理することにした。

試作なので、10人前程度だ。


リラの作っていたブルーベリーのソースができたので、二人がかりでレアチーズケーキに乗せていった。ブルーベリーが約200、イチゴが100できた。


「さあ、油を温めて、フライをあげる準備よ!」

「豚カツも揚げたてを提供ですか?」

「その予定だけど、切るの苦労するかしら?」

「配膳頑張って、ユリ様が調理だけできるように、とにかく頑張ります!」

「たのもしいわね」


リラがやる気に満ちているので、ユリはほほえましく思っていた。


「油温まったから、鮭フライひとつ食べてみましょう。小皿にタルタルソース持ってきてもらえる?」

「はい!」


リラは冷蔵庫からタルタルソースを小皿に入れて持ってきた。


「おはようにゃ!手伝うにゃー!」

「おはよう、ユメちゃん」

「ユメちゃん、おはようございます!」


「なに作ってるにゃ?」

「鮭フライの味見をね」

「ソウが食べたがってたフライにゃ」

「そうなんですか?」

「ソウが食べたくて、わざわざ鮭捕まえてきたにゃ」

「ええー!!」

「リラちゃんとユメちゃん、半分ずつね」


ユリは1切れだけ揚げた鮭フライを半分にして二人に渡した。


ユメは躊躇なくパクっと食べた。

リラはユメを見てから覚悟を決めたように口に入れた。


「おいしいにゃー!」

「美味しいー!! 川の魚が美味しいなんて!!」

「このソースも美味しいにゃー」

「タルタルソースも絶品ですね!!!」


「二人とも良かったわね。提供は35食だけれど、売れ残るかもしれないから、おすすめしてね。小デッシャーで、フライの横にタルタルソースを添えて出します。付けて食べてくださいと説明してね」

「はい!」

「任せるのにゃ!」



◇ーーーーー◇

おすすめランチ


カレーライス         500☆(限定50)

カツカレー (豚カツ乗せカレー)1000☆(限定15)

ミックスフライ定食     1000☆(限定35)

(鮭+タルタルソース、玉葱、鶉の卵、キノコ、芋)


デザートセット     プラス500☆

(レアチーズケーキ、冷茶)


持ち帰り専用 (袋100☆)

凍結ドリア(1人前)        600☆

(キノコ、ホワイトソース、ターメリック飯)

グラタン&ドリアの持ち帰りについて。

冬季以外の販売は、冬箱か真冬箱をお持ちの方に限ります。

解凍し釜で焼いてからお召し上がりください。


※器返却スタンプ始めました!

◇ーーーーー◇


ランチ開始になった。

外のイーゼルを見て入ってくる人は、注文するものを決めている場合が多い。

一巡目、全員カツカレーだった。カツカレーは、いきなり売り切れた。


二巡目、リラに聞いた人がいた。


「女給さん、看板の『鮭』とは、川魚かい?」

「はい!」

「旨いのかい?」

「味見させてもらいました!ビックリするくらい美味しくて、早くお昼ご飯が食べたくて、もう楽しみで、楽しみで!」

「んー、騙されたと思って食べてみるか」

「絶対に美味しいので、騙されません!」


リラはニコッと笑った。


「そこまで言うなら楽しみにしておくよ」

「はい!お持ちしますね」


やっと一食だけ注文が入った。

残りは全部カレーだった。



注文した人も、注文しなかった人も、全員の興味を一身に受けたミックスフライが運ばれてきた。


「このタルタルソースを付けてお召し上がりください」


リラの説明の後、1局集中の視線を受けて、タルタルソースをつけた鮭フライをその客は食べた。

咀嚼音が響き、静まり返る店内。


「旨い!!なんだこれ!!激旨だ!! ご飯は要らないから、フライだけもう一人前持ってきて!」

「はい!お持ちします!」

「リラちゃん!こっちも、ご飯なしでフライだけ頼めないかな?」

「ユリ様に確認してきます!」


ユリは割りと暇で、グラタンを仕込んでいた。


厨房へ リラが来て、二巡目をだし終わったばかりなのに、注文があるといってきた。


「ユリ様!今のフライのお客さんが、追加でフライだけほしいそうです。カレーライスのお客さんも、フライだけほしいそうです」

「ご飯抜きと言う意味?」

「はい!」

「100☆引きで対応してください」

「はい!」


リラが注文を取りに行くと、フライのみで7食出た。

その全員が、鮭フライとタルタルソースを絶賛したらしく、軽く騒ぎになっていた。


「魚がこんなに旨いとは知らなかったが、それにしてもこのタルタルソースというのは、野菜と食べても旨いな!」

「このソース、なにで出来ているんだろうな?ものすごく旨いな」

「この魚はなにか特殊な魚なのか?」

「ユリ・ハナノ様はやはり凄い!」

「こんなに旨い魚は知らない!もっと泥臭いものだと思っていた」

「栗ご飯といい、魚といい、魔法使いのようだな」

(注:ユリは自覚のない魔法使いです)



「女給さん、すすめてくれてありがとう。大正解だったよ」

「はい。ありがとうございます。又お越しください」


三巡目、いつものごとく超伝達で、なにも聞かれずに12食がミックスフライだった。


四巡目、時間は少しずれたが、15食ミックスフライで、ミックスフライは売り切れた。


五巡目、だいぶ時間がずれてきてカレーライス15食。


六巡目、カレーライス3食で、ランチ完売になり、時間内に席につけた2名に、ドリアか親子丼と聞いて、親子丼をリラが作って出した。


ソウとマーレイも帰ってきたので、ユリはフライを用意した。

食べる前に川魚と聞いたマーレイがぎょっとしていたが、リラに美味しいと言われ、食べる前に信じたようだった。


「ソウの分だけフライ3つよ」

「ソウがとってきたからにゃ」

「ホシミ様凄いです!」


おっかなびっくりな感じて口にしたマーレイも、食べると美味しいと驚いていた。

ソウはもちろんニコニコしながら喜んで食べていた。

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