包焼
「ソウ、全部フライにする?ホイル焼きも作る?」
「フライだと今日は食べられないのか!」
「そうね。タルタルソースは、明日作るわ」
「昼ご飯に、ホイル焼き作ってくれる?」
「良いわよ。ユメちゃんもホイル焼きで良い?」
「食べたことないからわからないにゃ。でもそれにするにゃ」
「アルミホイルを広げて、鮭のサイズに玉ねぎを敷き詰めます。塩コショウ多めにした鮭をのせます。しめじなどのキノコや、好きな野菜をのせホイルをしっかり上で閉じるように包みます」
「それだけにゃ?」
「オーブンで15分くらい焼けば出来上がりです。好みで、仕上げにバターをのせます」
「簡単にゃ!」
「そうね。食べるときは、好みで醤油やポン酢をかけると良いわよ」
汚れないと言いつつも、気になるのか、ソウは着替えてきた。
「さあ、食べましょう」
「おお!ホイル焼きー!」
「バターと醤油がほしいにゃ!」
「はいどうぞ」
「俺はポン酢で食べようかな。いや、バター醤油も、捨てがたいな」
「半分ずつかければ?」
「そんな贅沢な選択肢が!」
本当にソウは、半分ずつかけて食べていた。
「イクラはいつ食べられる?」
「どうしても食べたければ、今晩でも良いけど、明日くらいの方が、しっかり漬かっていると思うわ」
「明日だと、お店のあとだな。マーレイたちは生の魚卵は食べられないんじゃないかな」
「たしかにそうね。なら、今晩食べましょう」
「ん、誰か来たな」
「見てくるわ」
「ならここ、片付けておくよ」
「ありがとう」「ありがとにゃ」
「おう」
「一緒に行くにゃ。リラだと思うにゃ」
お店を見に行くと、リラと7人の大人が、大量の栗と一緒に待っていた。
「よろしくお願いします!」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
「ユリ様、栗ご飯は20人前希望で、渋皮煮は要らないけど、マロンパイが食べたいそうです」
「マロンパイは、渋皮煮から作らないと無いわね、他の栗のお菓子ではダメなのかしら?」
渋皮マロンは今日中に出来上がらない。
リラは話の調整をしてくれるらしい。
「他の栗のお菓子で良いそうです。モンブランですか?」
「その予定よ。その方が楽だし。お菓子は7人分で良いのかしら?」
「いえ、ここに来ていないのは子供だけなので、20人分お願いします」
リラはさっさと厨房へ行き、湯を沸かし始めた。
ユメは、ユリを手伝うらしい。
栗剥き隊はリラに任せ、少し茹で栗用に分けてもらい先に茹でる。
計量をユメに手伝ってもらい、ユリはスポンジを作り始めた。
シートスポンジを作り、釜に入れた。
次にカスタードクリームを作り、冷やす。
焼けたスポンジを冷やしている間に、茹で栗を半分に切り、スプーンで掻き出した。
マッシャーで潰し、さらに裏ごした。
裏ごした栗に、水とグラニュー糖を加え加熱し、生クリームを加え固さを調節し、滑らかになるように混ぜ、最後にラム酒を加え、マロンクリームを作る。
冷えたシートスポンジにカスタードクリームを塗り、ロールケーキを作る。
形が安定するまで紙に巻いたまま冷蔵庫で冷やす。
生クリームを泡立てる。7.5%のグラニュー糖を加え、ラム酒とバニラエッセンスを加える。
ロールケーキを2cm幅にカットし、ホイルカップに乗せる。
「あ、25個できた。ま、いっか」
リラちゃんもユメちゃんも食べるわよね。
上に生クリームを絞る。
更に上に、モンブラン口金で、マロンクリームを絞る。
最後に粉糖を振るって出来上がり。
安定させるため少し冷やす。
見に行くと、渋皮マロン用も剥いてくれているらしい。
「剥いていない栗を10kg位もらっていきます」
栗をもらい茹ではじめた。先程よりも柔らか目になるように少し長めだ。
「ケーキできたので、休憩しませんか?」
「うわー!これがモンブランですか!?」
「そうよ。白い山という意味の名前で栗のケーキよ」
リラが一番にフォークを挿した。
「柔らかい!・・・美味しー!!」
「こんな旨いもんはじめて食った!」
「美味しいにゃー!」
「栗がこんなに素晴らしい菓子になるなんて・・・」
「この菓子は、お店で売りますか?」
「明日リラちゃんと仕込んで、明後日売る予定です」
「絶対買いに来ます!」
「はい。お願いします。剥いた栗貰っていきますねー」
ユリは完全に剥いた栗を1kg強貰ってきた。
一升の米で栗ご飯を作るため、ガス炊飯器2台で作る予定だ。
米を研ぎ、水を量って、塩と酒を入れ混ぜてから栗を乗せてスイッチを入れた。
炊飯も勝手に炊飯器がするし、茹で栗も見てなくても特に困らないし、茹で上がるまでユリはすることがなくなった。
買い取る栗と、提供するものと、労働力が見合っているか計算してみた。
栗剥きが2時間程度ならちょうど良いけど、どう見てもあの量を剥くのはまだかかる。
後一時間くらいだろうか?そうすると労働の方が一時間ほど過剰になる。7人に大銀貨を払えば良いかしら?
そろそろ栗が茹で上がるわね。
暇になって栗剥きを手伝いにいってしまったユメを呼び戻してこちらを手伝ってもらおう。
ユリは栗をざるにあげた。
「ユメちゃん、こっちを手伝える?」
「大丈夫にゃ。何するにゃ?」
「茹でて半割りにした栗を、スプーンでくり貫いてください」
「わかったにゃ」
ユメと頑張って、少しした頃ご飯が炊けた。
ちょうどリラが来た、栗剥き作業が終わったらしい。
栗ご飯を持ち帰る器を出してもらうと、サラダボールのような木の器だった。一番大きい軽い食器らしい。少し違うが大体同じような大きさで、10個あり、2人前づつ入れてほしいと言われた。分かりやすくてちょうど良い。
栗ご飯を器に分け、リラに運んでもらった。
みんなニコニコと受け取り、そのまま帰ろうとするので、ユリは引き留めた。
「作業代が過剰なので、全員、大銀貨を受け取ってください。あと、モンブラン忘れてます」
「あ!子供達の分忘れて帰るところだった!」
「モンブランは、すぐに食べてくださいね。暖かいところにあると溶けます」
ユリは7つの紙袋にモンブランを2個ずつ入れ、渡していった。
すると、ひとつだけ返され、1個で良いと言われた。
あ、そうか20人だった。
大銀貨は断られたが、買いに来るときにでも使ってくださいと無理矢理渡した。
みんなが帰ったあと、リラは残っていたので、出来上がりを聞いてみると、渋皮マロン用が8kg位と、栗ご飯用が7kg位あると言われた。
栗ご飯用は350gづつに量って、20袋あった。
毎日のように栗ご飯を出しても、来月半ばまでありそうだ。2袋以外空気を抜いて冷凍した。
「リラちゃん、休日出勤で渋皮煮作らない?」
「はい、やります! もう一回くらい作りたかったんです! 次回教える約束しました!」
「あー、パープル邸の厨房で?」
「はい!」
渋皮煮をリラに任せ、ユメと一緒に栗をスプーンで掻き出し続けた。
火にかけたばかりの時間は、リラも手伝ってくれた。
「ユリ、なんか手伝う?」
ソウが来た。お店側から来たと言うことは外から帰ってきたらしい。マーレイも一緒だった。
「栗の中身掻き出し手伝える?」
「何になるの?」
「モンブランクリーム」
「モンブラン!!」
「あ、食べる?ちょうど残ってるのがあるわよ」
ユリは、ソウとマーレイにモンブランをだした。
ソウは普通に感激していたが、マーレイは、「これも栗のお菓子なのですか!?」と、驚いていた。
味はするけど、形無いからね。
みんなが掻き出しをやってくれるので、ユリは裏ごしをはじめた。同じ作業にだいぶ疲れてきたユメに、マッシャーで潰してもらい、裏ごしていく。
裏ごしもやってみたいと言われ代わったが、すぐに代わられた。
「ユリ、マーレイに聞かれたんだけど、夏板っていくらなの?」
「払ってないからわからないわ。でも買うときは三割引になるらしいわよ。注文する?」
「お願いしてもよろしいでしょうか?」
「そんなこと遠慮する必要ないわよ。急ぎなら、お店の持っていって、届いてからお店のを返してくれても良いわよ」
「ユリ様ありがとうございます!」
「何に使うか聞いても良い?」
「魔力を使う練習と、光熱費の節約と、湯浴みです!」
「光熱費の節約!! 店でも使った方が良いわね・・・。ん?湯浴み?湯浴みには熱すぎるわよ?」
「差し湯に使うので、大丈夫です」
「それはそうよね。今日帰りに1台持っていくと良いわ」
「ありがとうございます!」
全ての栗が裏漉しされた。ユリが裏漉している間にみんなが洗い物と片付けをしてくれた。
「渋皮煮、砂糖1回目まで終わりました!続きは明日煮ます」
「ありがとう。助かったわ!」
マーレイとリラは、夏板を大事そうに抱えて帰っていった。




