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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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各種

「お待たせして申し訳ありません。お庭をふらふらしてました」

「見るところございましたか?」

「はい。赤紫蘇を」


ふと見ると、ソウが走ってくるのが見えた。


「ユリ、ちょっとユメに用があるんで借りて良い?」

「あ、はい・・・」

「ユメ、悪いなー、ちょっと来てくれるか?」


そう言って、バタバタとユメを連れていってしまった。

なんだったんだろう?


「ユリ先生、助手は必要ですか?」

「お願いします」


ラベンダーに声をかけられ助手を頼んだ。


午後は、おやつの時間まで パイ生地を使ったあれこれを作る予定だ。

ユリは見本を午前中に作ったので、午後は、質問を受けたり、使用人のみんなのおやつを作ったりしようと思っている。


「ラベンダーさん、ミルフィーユ、私が作った分を持って帰っても大丈夫かしら?」

「ユリ先生が作った分は、ユリ先生のお好きになさっても、何も問題ないと思いますが?」

「サリーさんの分を残せないからと思って、」


ユリはどうしようかと考えていた。


「サリーの分の心配なのですか!? では、私の分からサリーに渡しますので、ユリ先生は、気兼ねなくお持ち帰りになってください」

「ラベンダーさん、いつもありがとう」

「いやですわ、お礼を言うのは、私の方ですわ」


「では、午後のアルストロメリア会を始めましょう」

「はい」「はい」「はい」

「質問や、わからないところを聞いてください」


「フルーツパイに合う果物は、他に何がございますか?」

「焼いても大丈夫なものなら何でも。イチゴや真桑瓜などの場合は、焼いて冷めてからのせてください」

「カスタードクリームだけをのせて焼くのですか?」

「何ものせずに焼くと、パイが膨らみすぎてしまうので、重すぎないものをのせて焼いた方が良いです。カスタードクリームだけをのせて焼いた場合、果物を接着させるためには生クリーム等を絞ると良いです」


「ミルフィーユは、なぜ粉糖を振るって焼くのですか?」

「糖分が熱で溶けて固まるので、カスタードクリームの水分でパイが柔らかくなるのを防ぎます。糖分を飴化させることを、キャラメリーゼといいます。しなくても構いませんが、パイがふにゃふにゃになるのが早くなります」


「先ほどパルミエを作るときに、大分緩く巻いているように見えましたが、なぜですか?」

「パイは膨らむので、余裕を持たせないと、ギチギチになります。合わせた下側に余裕がないと、ハート型にならず、丸が2つ繋がった形になってしまいます」


「クロッカンに使うナッツはどんなものが合いますか?」

「好みなので、私はクルミを使いましたが、アーモンドを丸のままとか、ピーナッツや、黒ごまなども見かけたことがあります。ドライフルーツをいれても美味しいと思います。あ、あと、これは、リラちゃんとユメちゃんが話していたことですが、クロッカンを作るときに、クッキーの抜き型で生地を抜いたら可愛らしい。黒猫の型で作ったら素敵。だそうです」


「クロ猫ッカンですわね!」

「まあ、本当ですわ!」


あれ?その思考は標準なの?

私だけ追い付けないの?

いや、追い付きたくはないんだけど。

うーむ。


わざわざ言わなかったことを言われてしまい、ユリは悩むのだった。


ユリもみんなも作りながら質疑応答しているので、色々なパイが出来上がっていった。

その後も細かな手順の質問などに答えながら、ユリはみんなに行き渡るように、大量のパルミエを作った。


おやつに良い時間になり、ミルフィーユをカットすることになった。


ユリがラベンダーのミルフィーユを切って見せ、皿盛りまで見せた。

ユリの作った分は持ち帰る予定だからだ。

残りのカットは、ラベンダーが挑戦した。

少し潰して、パイがぐちゃぐちゃになっていた。

他の人もカットが難しいらしく、ユリに切ってほしいと名乗り出ていた。


結局、ほとんどのミルフィーユをユリがカットした。

メイドにお茶を用意してもらい、テーブルについた。


「カットが難しいうえに、食べるときも難しいのです。なので、最初から小さく焼く場合もあるようです。ちなみに、食べるときは、ケーキを倒して食べるのが正式らしいです」

「フルーツパイにイチゴをのせる方が切らずにすみますし、食べやすそうですね」

「私もそう思います」


「ユリ先生のお店では、どんなパイがあるのですか?」

「リーフパイ、マロンパイ、クロッカンですね。今後作るのは、アップルパイ、パンプキンパイを近日に予定しています」

「マロンパイとはどのようなパイですか?」

「マロンパイは、栗のパイです。お店では、渋皮ごと煮た栗を使っています。すぐに売り切れる人気商品です」

「渋皮ごと?栗のパイ?」

「栗の鬼皮剥きをしないと作れないので、手間的におすすめしません。もし作りたいなら、渋皮を一切傷つけずに鬼皮だけをきれいに剥いた栗を用意して、重曹を入れて茹で、水を3回くらい取り替えて茹で、砂糖を2回に分けて加えて、栗の渋皮煮を作ります。

ほかに、小豆と言う豆を煮て、潰して餡子を作り、それを栗の回りにまとわせ形を整えてから パイ生地を薄く伸して12cm角位に切って包んで、卵を塗って焼きます」

()めておきます・・・」


「ユリ先生!アップルパイはどのようなものですか?」

「普通のアップルパイは、酸味の強いリンゴを甘く煮て、耐熱皿に薄くパイ生地を敷き、ケーキスポンジを崩したものをのせてからそのリンゴをたっぷりのせます。もう一度上にパイ生地をのせ、皿の大きさにナイフで切ります。模様をつけて焼けば出来上がりです。

お店のアップルパイは、リンゴを1/4に切ります。真ん中から半分に切り種の部分を取ります。リンゴを砂糖にまぶします。12cm角くらいのパイ生地で包んで焼きます。大まかにこんな感じです」


「ユリ先生のおすすめのパイはなんですか?」

「お菓子ではないのですが、クリームスープの器にパイ生地で蓋をしてオーブンで焼いた、『ポットパイ』が好きです。食べるときは、蓋になっているパイを崩しながら一緒に食べます」

「それは、とても美味しそうですね・・・でも叶わぬ夢のような食べ物です」

「次回作ってきましょうか? 持ち帰り、料理人に焼いてもらえば良いと思います」

「私たちの人数分ご用意いただけるのですか?」

「構いませんよ。親子か、姉妹のどちらかがいらっしゃるのでしたらお渡しすれば良いことですし。あ、冬箱持ってきてくださいね」

「ユリ先生!ありがとうございます!」


「他に質問などは有りませんか?」

「バラの練習はどうなりましたか?」

「あ、すっかり忘れていました。少しやってみますか?」

「はい!」


「あ、あと、言い忘れるので今言っておきますが、次回から、ブレンドティーや、ハーブティー等を持ち込みます。苦手な方は、先にお知らせください」


ケーキを食べて、再び教室に戻ってきた。


ユリはプリンカップにバラをつくって見せ、絞り袋を渡した。絞り袋は、4つあるので、仲良く使ってほしい。手持ち無沙汰のメンバーにはコロネを作り、葉っぱも教えた。


やはりバラは難しいようで、30分できれいな花になる人はいなかった。


「リラ先生は凄かったのね・・・」

「ホシミ様に心の中でお詫びしなければ・・・」

「黒猫様の記録を抜きたいです!」

「皆さんはまだこちらに泊まっていらっしゃるのですよね? 当分使わないので、来週までおいておくので、好きに練習してください」


「それで、次回はどうします?」

「ユリ先生!持ち帰り不可の鳥のお菓子、スワンシュでしたか?そちらが作りたいです」

「スワンシューですね。難しいですが、頑張りましょう!」


次回の予定も決まり、解散になった。

片付けが終わってもユメは戻ってこなかった。

パルミエなどミルフィーユ以外のお菓子をほぼ渡し、仕方無くメイドに案内してもらい、ソウのいる部屋につれていってもらった。


「ユリ様をお連れしました」


メイドが声をかけたが、反応がなかった。


「入るわよー」


ドアを開けて勝手に入ることにした。

前回転移で飛んできた辺りを避け、離れた椅子に座って待つことにした。


少しすると、ユメをつれたソウが転移で戻ってきた。


「うわ!ユリ!」


なんだか必要以上にソウが驚いてる。


「アルストロメリア会、終わったんだけど・・・」

「ソウのバカにゃ!ミルフィーユ食べたかったのにゃ!!」

「ユメ、ごめん・・・」


あ、ソウがつれ回してたのね。


「ミルフィーユ残してあるわよ。ラベンダーさんに頼んで、全部残してもらったの」

「ユリ!ありがとうにゃ!ラベンダー偉いにゃ!」

「ふぅ、命拾いした」


ユメちゃん、本気でソウに怒ってたのね・・・。


この後、リラを呼んできて仲良くみんなで帰った。

店に戻ってからみんなにミルフィーユを提供し、リラに、栗ご飯が美味しかったと伝えると、とても誇らしげに喜んでいた。

リラはソウに、炊飯を教えてもらったお礼を言っていた。

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