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煮卵

今日はお店終わったらアルストロメリア会だわ。

なるべく早く終わるようにしないとね。

ユメちゃんはどうするのかしら?本人に聞いてみないとわからないわね。


ユリはぶつぶつと独り言を呟きながらお店の準備をしていた。

朝ご飯はソウと2人で食べたので、ユメにはまだ会っていない。


蒸し器でジャガイモを蒸かす。

リラが来る頃には蒸しあがるだろう。


昨晩のうちに卵50個を半熟に茹でてタレに漬け込んでおいた。

鳥手羽元250本を丁寧に洗い、玉子を漬けていたタレを水で薄めて鳥手羽元を煮込んだ。


玉ねぎを、スライスし、ホワイトソースの計量をしていると、リラが来た。いつも通り9:00少し前だ。


蒸し器からジャガイモをだし、あら熱をとってから角切りにした。

グラタン皿50個に角切りにしたジャガイモを入れ、細目に切ったベーコンと缶詰めのコーンを散らした。

グラタン用のホワイトソースを作り、グラタン皿に注いでいると、リラが来て手伝ってくれた。

チーズものせてくれるらしい。


「今日は朝からクッキーお願いします」

「何か注文ですか?」


リラはまた、何か特注でも入ったのかと考えたようだ。

そして、クッキーを作りながら話すことにしたようである。


「アルストロメリア会ね、今日の夕方から行くのよ」


ユリは自分から言い出したことではあるが、少し憂鬱だった。


「お泊まりなんですか!」

「たまには泊まりがけで来てくださいって言われてね。リラちゃん、どうする?」

「泊まりは無理ですが、明日お迎えにいきます!」


リラは即答だった。まあ、そうだろう。


「ユメちゃんはどうするか、まだ聞いていないのよ 。もしユメちゃんが今日は行かないなら明日一緒に来てもらえる?」

「はい。わかりました!」


これで安心だわ。とユリは考えていたが、ユメは来たければ転移で来られるし、帰れもするのだ。


「11時頃までに来れば、ミルフィーユというケーキが食べられると思うわ。あ、それで、早く終わらせるために、今日はあまり仕事入れていないのよ。ランチ分もほとんどできたし、休み明けのおやつは今から生菓子を作っておくわけにはいかないし、栗の渋皮煮ももうないし、作るもの自体もないのよね」


あまりにユリが一気にしゃべってので、リラはあっけにとられていた。


「あー、栗は貰い物でしたね」


貰ったあげく加工までして貰った。


「栗で、モンブランとか作ればよかったわ」


いくら好きでも、そろそろ栗ご飯に飽きてきた。


「それはなんですか?」

「名前自体は、白い山って意味で、某国にある有名な山がモデルの栗を使ったお菓子よ」


世の中、 モンブランという名前の白くないケーキだらけである。


「栗があったら作れるんですか?」

「栗を柔らかく茹でて、潰して裏ごしてバターとか砂糖とか加えてペーストにするの、そこに生クリームを加えて絞り出すのよ」


いまいちピンと来ないけど、ユリが言うのだからきっと美味しいものなのだろうとリラは思ったのだった。


「あ、そろそろ玉子加えなきゃ」


ユリは鶏肉を煮ている鍋から鶏肉を50本取り分け、半熟茹で玉子を10個だけ加えた。


「全部入れないんですか?」

「せっかく半熟だからね。この10個が売れてから足そうかと思って」


グラタンがほどほどに売れるので、15人が全員新メニューということはまずない。


◇ーーーーー◇

今日のおすすめランチ

ポテトグラタン       500☆(限定50)

鳥手羽元と半熟玉子の煮物 1000☆(限定45)


デザートセット    プラス500☆

(冷茶、生クリーム入りフルーツゼリー)


持ち帰り専用

凍結ドリア(1人前) (袋100☆)  600☆

(キノコ、ホワイトソース、ターメリック飯)

グラタン&ドリアの持ち帰りについて。

冬季以外の販売は、冬箱か真冬箱をお持ちの方に限ります。

解凍し釜で焼いてからお召し上がりください。


※器返却スタンプ始めました!

◇ーーーーー◇


「ご店主、半熟玉子を煮たら半熟ではなくなるのではないか?」

「食べてみてください、ふふふ」

「では、挑戦してみよう」

「ありがとうございます」


「今のユリ・ハナノ様のお話は本当ですか?」

「申し訳ありません。私も食べていないので、確認していませんが、ユリ様が言うことは間違いないと思います」


結局ポテトグラタン4、鳥手羽元と半熟玉子の煮物11の注文で、いきなり足りなかった。

別鍋に鳥手羽元を5本をいれ温め、最後に玉子を1つ加えた。


リラがポテトグラタンを釜にいれてくれたので、同じくらいの時間で出来上がった。


全ての注文を作り終わりお店に行くと、鳥ではなく、玉子から先に食べた人たちが、騒いでいた。


「なぜ、色がつくほど煮ているのに半熟なのだ!」

「最初から味つきのタレでゆでるのか?」

「殻が有ったら色は着かないだろう?」


みなさん、卵を茹でたことがあるのねぇ。

ユリは変なところに感心していた。


「ご店主!玉子の謎は秘密かね?」

「いえ、特に秘密ではないですが、驚いてくれました?」

「驚いたし、全くわからん」


ユリはものすごく良い笑顔だった。


「ふふふ。簡単なことですよ。半熟に茹でて、濃いめのタレに一晩漬け込んだのを、提供前に少し温めたのです」

「なんと!」

「温かいから一緒に煮たと思い込んでいた」

「煮なくても味か染みるのか!」


口々に感想をのべている人は、料理をしたことがあるのだろう。とユリは思った。

貴族でも、王国軍に所属した経験があれば、料理をした経験があったり、料理に苦労した経験があるのだ。


「一緒に温めましたよ。最後に少しだけですけどね」


ユリは相手が困らないけど驚く系のいたずらが大好きである。


「今日のおやつの時間のゼリーも力作なので、よろしければお越しくださいね」


しつこいようだが、ユリは知らないが、Gの日(きんのひ)(金曜日)は休みの人が割りといる。

この国の週の休日は、Fの日(かえんのひ)(火曜日)で、もう一日休む場合、Gの日(きんのひ)を休むことが多いのだ。


客は皆、玉子の事ばかりだったが、鶏肉もとろけるように柔らかいのであった。


いつものごとく、連絡網で瞬時に行き渡るらしく、その後誰も驚いてくれなかった。


リラは手が空き次第クッキーを作ってはいるが、グラタンを焼いているときは、クッキーは焼けない。

鉄板の残りもわずかである。


「おはようにゃ」

「おはようユメちゃん!」

「ユメちゃんおはようございます」


「ユメちゃんは今日どうする?アルストロメリア会あるけど」

「今日は行かないにゃ。寝るところに困るにゃ」

「寝るところ?」

「ローズマリーは、一番良い部屋を用意すると思うにゃ。知らない人は混乱するにゃ」

「成る程」


部屋なんかいっぱいあるだろうにと思ったけど、部屋の格があるのね。と、ユリは納得した。


「ソウはどうするにゃ?」

「どうするかはわかんないけど、私は誰かに送ってもらわないとたどり着けないわ」


方向音痴に夜の道は危険すぎる。

そもそもこの国の女性は一人で出歩いたりはしない。


「ソウが何がなんでも送ると思うにゃ。もし無理なら私が送るにゃ」

「ユメちゃんありがとう」


そのうち、双方食べる団体が来て、ポテトグラタン4つを残しランチが終了した。

鳥手羽元と半熟玉子の煮物は45食完売である。


「お昼ご飯、ポテトグラタン、カレードリア、キノコドリア、だったらどれが良い?」


ユリがリラとユメに尋ねた。


「ポテトグラタンは今日のランチで、カレードリアは昨日のランチで、キノコドリアは持ち帰りのですか?」

「そうです」

「凍結キノコドリア、食べる機会がないので、食べてみたいです!」

「今日のポテトグラタンが食べたいにゃ」

「了解、少し2階に行ってくるわ」


ユリは凍ったキノコドリアを1つ持って、階段を上がった。

ソウが買ってきた電子レンジで、他のものと同時に焼けるように解凍した。


厨房へ戻り、解凍したキノコドリアと、ポテトグラタン2つを釜で焼いた。

焼き上がる頃ソウとマーレイが来たので、先程と同じ選択肢をだし、ポテトグラタンを2つ焼いた。


「自分で取り出すから先食べて」

「はい。ありがとう」


ソウが釜から出してくれるらしいので、ユリたちは先に食べることにした。


「ユリ、何時に行くの?」


ソウに聞かれて一瞬何の事かわからなかった。


「え?アルストロメリア会?」

「うん」

「お店終わって、ご飯食べてからと思ってるけど」

「なら、俺が一緒に行くよ」

「ありがとう。ユメちゃんは、お泊まりは来ないって言うからどうやって行こうか悩んでたんだけど・・・」

「あー。そうだな。ユメは泊まると部屋が大変かもな」

「ソウの部屋も良い部屋にゃ」


あれ、やっぱり良い部屋なんだ・・・。

広い部屋だとは思ったけど、転移の危険を避けるための何かかと思ってたわ。

こんなんで、私が泊まって大丈夫なのかしら?

ユリは更に悩むのだった。


「それよりにゃ、ユリ、湯浴みに侍女がつくにゃ」

「え? 侍女?」


髪や体を洗われる自分を想像したユリが叫んだ。


「無理無理無理無理無理、介助されてお風呂なんて、私がいた国では動けない老人だけよ!」


少し遠い目をしたユメが、なんとも言えない表情で、ボソッと呟いた。


「そんなこともないにゃ」


ユメの小声の呟きは誰にも拾われなかった。


「断れるから大丈夫だよ。俺、断ったし」


断る状況になったってことだよね。部屋があるだけじゃなくて泊まっていたことがあるってことだよね。むしろ住んでたのかしら?


ユリは考えていたが、実際は、ユリが越してくる前の1週間だけの話である。

転移してくる全員の荷物を運ぶために活動していた頃は自分の家に帰っていたが、親族にたいし所在不明にするためにこちらに居る必要があり、ユリが越してくる前にこの家に住んでいるわけにもいかず、パープル邸の転移に使っている部屋に泊まっていたのだ。


結局、今日行くのはユリとソウ。

明日、リラと一緒にユメが来るということで、話がまとまった。


「ユリ様、どうやって行くんですか?」

「あー、そうだな。公式訪問は転移は不味いな」


リラが質問すると、ソウが答えた。


「マーレイ、悪いが俺とユリをパープル邸まで送ってくれ。で、明日、ユメを連れてきてもらえるか?」

「かしこまりました」

「マーレイさん、時間外の仕事でごめんなさいね。ありがとうございます」

「いいえ、どうかお気になさらないでください」

「リラと一緒に待ってるにゃ!」

「ユメちゃん、お願いします!」


「あ、今日のゼリー食べましょう。皆さんが作った方じゃなくてごめんなさいね」


ユリはローズバッド入りのゼリーを持ってきた。

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