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「ユリ、ハナノ、様、もどり、ましたっ!」

「ちょっと、大丈夫? 少し深呼吸して」

「おとうさん!? あ!栗増えてる!!」


あ、やっぱり、増えてるわよね。

ユリはコップに冷茶を持ってきてマーレイに渡した。

一気に冷茶を飲むと、少し落ち着いたらしい。


「ありがとうございます! 遅くなって申し訳ございません。家に仲間が来ていまして、栗を貰いました。どうしても栗ご飯と渋皮煮が欲しいらしく、この一割でも良いから物々交換してほしいと無理矢理渡されました」

「え!・・・そのご友人はまだいるの?」

「恐らく外に」


外を覗きに行くと、ご夫婦と思われる男女二人が息をきらせて店に近づいてくるのが見えた。


「マーレイさん、その人たち信用ができる?」

「はい!」

「なら栗剥いて貰いましょう!」

「!?」

「厨房には入れられないけど、お店のテーブルなら作業しても構わないわ」

「ありがとうございます!伝えて参ります」


マーレイは2人に栗を剥くのを手伝うなら渋皮煮と、栗ご飯を作ってもらえると伝えに行った。


「リラちゃん、私たちはお菓子作りましょう。栗は剥いてもらえるようだからね!」

「はい!」

「お湯は沸かさないとね」

「はい!」


リラは手早くお湯を沸かしに行き、ユリは挨拶しに店に顔をだした。


「ユリ・ハナノ様!ありがとうございます!!栗を剥けば作っていただけると・・・」

「はい。マーレイさんに聞きながら作業してください。どのくらい出来上がったものが必要ですか?」

「家族で食べるくらいの栗ご飯と、渋皮煮が欲しいので、残りの栗は貰ってください」

「お店で使っても良いのですか?」

「はい!栗は森で拾ってきたので、いくらでもあります!」

「では、遠慮なくいただきますね」


昨日よりも多そうな栗をマーレイを含む3人がかりで剥くことになった。

リラが湯の入った手鍋を持ってきて、2人は作業に取りかかった。



「そろそろプリンアラモードを作りましょう」

「はい!」

「まずは、大きいココットのババロアに、薄く切ったスポンジをのせて、その上にプリンをのせます」


大きいココットを並べてスポンジをのせプリンをのせていく。


「ユリ様、プリンが上手に型から外れません!」

「型の内回りに竹串を一周させるか、表面だけ竹串で一周させればきれいに外れるわよ」

「本当だ!凄い!」


「全てのプリンがのったら、プリンの回りに生クリームを絞ります」


1つだけやって見せる。


「リンゴ以外のフルーツを飾ります」


キウイフルーツ、パイナップル、黄桃、ブルーベリーを飾る。


「こんな感じでお願いします」

「はい!」


ユリは残りの器にも生クリームを絞り、リラがフルーツを飾っていった。

続きをリラに任せ、ユリは鍋を温めに行った。


「ユリ様できました!」

「こっちもすぐできるわ」


ユリが手鍋に入った液体と、刷毛を2つ持ってきた。

空の手鍋に液体を分け、リラに手渡した。


「こうやって、フルーツの表面に塗ってください」

「はい!ユリ様これはなんですか?」

「これは艶出しと言って、フルーツが乾燥しないように塗ります」

「だからキラキラだったんですね!」


リラは話ながらも手を動かしていた。


「塗り終わったら一旦冷蔵庫にしまいます」

「はい!」

「リラちゃん、水500mlに、蜂蜜100g溶かしてくれる」

「はい!ボールで良いですか?」

「そうね。お願いします」


ユリは林檎を5つ持ってきた。

皮付のまま四つ割にし、それを3等分する。

さらに真ん中から2つに切り、24等分にした。


種の部分を真っ直ぐに切り取り、皮に三角の切り目をいれてから2/3ほど剥き、頭側1箇所と尻尾側の2箇所の角を切り取りミニウサギを作った。


「そうやって出来ていたんですね!」

「切ったそばから蜂蜜水に浸けてね」

「これは何のためですか?」

「林檎って、剥いて時間がたつと茶色くなるでしょ? こうすると色止めができるのよ」

「塩水じゃないんですね!」

「塩水につけると、しょっぱくなっちゃうからね」

「林檎は多めにあるから失敗を恐れずに頑張ってね。失敗したものはジャムにでもするわ」

「はい!」


耳のバランスの悪い物や、林檎の皮の色が悪い部分を除いても100個以上出来た。


「リラちゃん器用ね。すぐ覚えちゃったわね」

「朝から、ずっと作ってみたくて、嬉しいです!」

「そういえば、あちらはどうなったかしら?」


たまに、マーレイが湯を取りに来ていたが、終わったとは言ってこない。


二人で見に行くと、だいぶ疲れ果てていた。

それでも頑張って栗を剥き続けているようなので、少し気の毒に思い、冷茶とマロンパイを出した。


「少し休憩してはいかがですか?こちらをどうぞ」

「良いんですか?」


二人はパンだと思っていた。


「はい、どうぞ。栗、渋皮も剥き終わっているのを少し持っていきますね」


はむっと噛りついたとたん騒ぎ出した。


「これ、これ、中に入っているのは渋皮煮ですか!?」

「はい。渋皮煮を入れた栗のパイです」

「貰ったそのままでも旨かったのに、この菓子は更に旨い!!」

「それはよかったですね」

「もしかして売り物ですか?」

「はい。明日販売します」


この店でのマロンパイは初出ではない。

持ち込んだ渋皮マロンで、夏になる前は出していたのだ。

そこでユリは思い出した。

アイスクリームのとき「マロン」が通じなかったことを。

そうか、これが栗だと誰もわかっていなかったのかと、ユリはやっと気がついたのだった。


「こんな美味しいものを作るお手伝いができるなんて!」

「頑張って全部剥きます!」

「よろしくお願いします」


2人はやる気が出たようで、又、栗を剥きはじめた。



「さて、リラちゃん。仕事的には終了ですが、栗ご飯一緒に作ります?」

「お願いします!!」

「あちらのご夫婦は、何人家族なの?」

「私くらいの子供が2人とお婆さんの5人家族だと思います」

「なら、一升炊きの釜で作りましょう。お店の予行練習にもちょうど良いかしらね。リラちゃんは3合だったわね5人家族なら米4合の栗ご飯で足りるわね」

「7合研ぐんですね」

「お願いします」


リラが米を研ぐ間に、ユリは酒と塩を計量した。

リラが研いで水を計った米から少し水を抜き、酒と塩を混ぜた。1キロ弱ある栗の大きいものは4つ割にし、米の上に均一にのせて炊飯器のスイッチを押した。


「本当にこれだけなんですねぇ」

「栗さえ剥いてあるならね」



「渋皮マロンは店の物を渡して今剥いているものを後で煮ましょうか」

「栗剥き手伝ってきて良いですか?」

「私も手伝うわ。ふふふ」


ユリとリラが加わったことで、あっという間に栗は剥き終わった。

渋皮まで剥いたものがかなり多くて、どうあがいても、明日栗ご飯を作るようだった。


ユリは栗を厨房に引き上げ、こっそりジッパーパックに分けて明日分以外、冷凍した。


残っていた試作品のプリンアラモードを二人に出し、栗剥きを労った。


栗ご飯が炊けたので、大きいタッパーにご飯を詰め、蓋を閉めずに風呂敷で包み、瓶に保存した渋皮マロンと共に、二人に渡した。


「食べ終わってからで良いので、容器は必ず返してくださいね」

「こんなにいただいてよろしいのですか?」

「栗の代金と、栗剥きの報酬で引き換えるとこのくらいかなぁと」

「ありがとうございます!! 容器は必ずお返しに上がります!」

「はーい、まってます」


2人はニコニコ顔で帰っていった。


残った栗ご飯をリラに渡し、ユリは渋皮付を煮ようと思った。


「ユリ・ハナノ様、ホシミ様が戻られるまでここにいてもよろしいでしょうか?」

「かまわないけど、忙しくないの?」

「今日は元々ホシミ様のお手伝いの予定でしたので、他の予定をいれておりません」

「そう。なら、栗ご飯温かいうちに食べたら良いと思うわよ」


作っておいてなんだけど、リラちゃんは栗ご飯3合もどうするつもりなのかしら?


「あ、これは、あげたい人が」

「なら、温かいうちに渡してらっしゃい」


リラは少し悩んだ末に、渡しに行くことにしたらしい。


「ちょっと行ってきます!」


リラは走っていってしまった。


「マーレイさん、ついていかなくて大丈夫?」

「・・・多分だい」

「ただいま!遅くなった!」

「ただいまにゃ!」

「あ、マーレイ今日は悪かったな、こんな時間まで待たせてしまったな。明日は大丈夫か?」

「はい。明日伺います」


マーレイは引き継ぎして安心したのか、リラの後を追って帰っていった。


この後ソウとユメと3人でご飯を食べたが、ソウとユメは、第一王子のせいで酷い目に遭ったらしい。

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