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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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布団

おやすみ最後の一日になった。

ブランチを食べた後、ゆっくりしようかとも思ったが、日曜日は掃除と洗濯を集中して片付ける日なので、いつも通り、シーツやバスマットなど、毎日は洗わないものの洗濯をした。

そろそろタオルケットをやめて薄い肌掛け布団を出しましょうか。


ユリは、箒を取りに来たユメを呼び止めた。


「ユメちゃん。お布団の希望ある?」

「希望にゃ?」

「今、タオルケットと薄手の毛布を使っているでしょ? 冬はお布団と厚手の毛布を使うけど、秋は薄い掛け布団を使おうと思っているの。でも、寒いとか暑いとかあったら好みを言って欲しいのよ」

「ユリと同じにして欲しいにゃ!」

「わかったわ、寒かったり暑かったりしたら言ってね」

「わかったにゃ!」


春、この家に来た頃のユメは、寝るときは黒猫姿で、クーファンに丸まっていたので、布団を使っていなかった。120cmサイズのユメになってからはベッドの布団に寝ているようだが、その頃にはすでに夏だったのだ。


ユリは使えるように、布団を干した。

ソウにも聞こうと部屋にいくと、薄い掛け布団?そんな便利なものが?と驚いていた。

持ち物にないので買ってくると言っていた。


今迄無くて困っていなかったのなら、そのままで良いのに。


後日、ホシミ家に行って聞いてきたらしいソウが、独り暮らしをして5年もたってから布団のありかを聞かれるとは思わなかったと笑われたらしい。



「ユリー、誰か来てるにゃ」

「え?」


ユメによると、荷馬車が店の横に止まっているらしい。

ユメと一緒に外に出てみると、籠いっぱいの栗を持ったマーレイとリラだった。


「ユリ・ハナノ様、仲間から貰ったものですが、なにかに使えますでしょうか?」

「え?マーレイさんは食べないの?」

「この量はさすがに・・・」

「なら、マーレイさんが要らない分を買い取りますよ」

「ユリ様、何か作るなら手伝います!」


リラがニコニコ顔で言ってきた。


「マーレイ、どうした? お!栗!」


ソウも来たらしい。


マーレイが持ち帰る分を取り分けても、5キロくらいありそうだった。


「では、渋皮マロンを作りましょう!」

「渋皮マロンにゃ?」

「栗の渋皮をつけたまま甘く煮るのよ」

「え?」「えぇ!」「渋いにゃ?」「あれ旨いよなー」

「手伝ってくれる人には、マロンパイと、栗ご飯を進呈します!」


全員、やる気満々で手伝うことになった。


まずはお湯を沸かし栗を入れ、鬼皮を柔らかくする。

渋皮を傷つけないように鬼皮を剥く。

重曹を入れて茹で、何度か茹でこぼす。

砂糖は何回かに分けて加える。

食べきれない分は冷凍保存する。

もしくは、瓶に入れて滅菌処理をして保存する。


「渋皮をなるべく傷つけないでくださいねー。でも傷ついたらこちらにください」

「ユリ、傷ついたのを剥くのを俺がやるよ」

「はーい、では渋皮が傷ついたらソウに渡してください」


みんな無心で栗を剥いていた。


「あ!傷ついたにゃ!」

「はい、ユメこっちにくれ」

「あ、失敗しちゃった」

「リラもこっちに持ってきて」

「はい」


少し集中力が切れてきたらしい。


「少し休憩しましょう!」


まだ半分以上残ってる。ユリは何か飲み物でも出そうと思ったら、ユメが言い出した。


「ソウ、ジンジャエール作ってにゃ!」

「お、良いぞ。マーレイとリラも飲むか?」

「美味しいにゃ!」

「いただきます」「はい!」


ソウは、2階からジンジャーエールの素と強炭酸水のペットボトルを持ってきた。

リラが興味深そうに覗きに来た。


ソウはコップ5つにジンジャーエールを作った。


「できたぞ!」


ソウは、手を出さないマーレイとリラに渡し、ユリの分はユメが持ってきた。


「あれ?辛・・・くない? 甘い?シュワっとして美味しい!」

「酒の入っていないエールのようですね」

「ジンジャエールにゃ!」

「生姜とシナモンと唐辛子とローリエとクローブと黒胡椒を煮込んだシロップよ」

「あ!前にお話しされていた飲み物ですね!」

「覚えていたのね」

「これは私でも作れますか?」

「このシロップは作れるけど、炭酸水がね」

「天然発泡水では代わりになりませんか?」

「炭酸泉があるの?」

「たんさんせん・・・?」


よくよく聞いてみると、ソウの管理するエリアに炭酸泉の井戸があるらしい。

そのまま飲む人もいるけど、使い道があまりなく占有している人もいないらしい。


「飲める品質(クオリティ)なら、色々な飲み物を作ったり、その水で茹でると野菜のアクが抜けたり、お風呂に使うと体が温まったり、使い道がいっぱい有るのよー!」

「そんな良いものだったなんて!」


「今作っている栗も炭酸泉で茹でると渋皮つきでも食べられるようになるのよ」

「お父さんが持って帰る分で作ってみます!」


その後、頑張っていると、みんな慣れてきたのか、作業が早くなってきた。

皮を傷つけた分は全部剥いてしまい、米に酒と塩を加えて栗をのせ、炊くことにした。栗ご飯である。


渋皮つきの栗は重曹を入れると透明だった茹で汁が発泡後、暗い赤紫色になった。


「うわー!凄い!アワアワしたら色が黒くなった!」

「凄いにゃ!」

「しっかり茹でて、何度か水を変え茹でこぼします」


しっかり茹でた後、茹で汁を捨てると渋の剥げたものがたくさんザルについた。


「栗だけ水に戻し又茹でます」


鍋を軽く洗ってから水をいれ栗だけ戻し又茹でる。

ザルは、ゴミ箱の上でひっくり返してはたき、渋のごみを捨てる。

何度か繰り返す。


「3回位は水を変えて茹でます」

「茹で汁が凄い色ですね!」

「3回くらい茹でると少し薄くなるわよ」


そして3回繰り返した。


「もう良さそうね。砂糖を分けて加えます」

「どうして分けるのですか?」

「一度にいれてしまうと、表面が固くなったり、甘味が上手に浸透しなかったりするのよ」

「他のものでも同じですか?」

「砂糖が大量に入る煮物ならそうね」

「そうだったんですね!」

「それから、ここからは沸騰しない温度で煮ます」

「それはどうしてですか?」

「グツグツ煮ると、煮崩れてしまうからよ」


ユリが丸く切った紙を持ってきた。


「それはなんですか?」

「紙で作った落し蓋ね。表面が乾かないようにのせるのよ」


リラは落し蓋を興味深そうに見ていた。


「冷めたらラム酒を少し加えると、香りがスッキリして上品な感じになるわ」

「これ、いつ出来上がるんですか?」

「しっかり冷めないと甘味が染みないので、明日ね。持ち帰るなら持っていっても良いわよ」

「わー!楽しみ!」


「何かおかずを作りましょう」

「手伝います!」「手伝うにゃ!」

「鶏肉のさっぱり煮で良いかしら?」

「煮卵もよろしく!」

「小さいウズラ缶でも入れようかしら」


ユリはリラとユメと一緒に鶏肉を切って、ウズラ缶を開け、水で割ったポン酢で煮た。


「そろそろ栗ご飯も炊けるからみんなで食べましょう」

「はーい!」「待ってたにゃ!」


ザルや使った器具類を、ソウとマーレイで洗ってくれたらしい。



全員席について食べ出した。


「お米と一緒に水にいれたから茹で栗みたいな味だと思ってたのに、茹で栗どころか、焼き栗よりもホクホクで美味しい!!」

「美味しいです!栗って、こんなにも美味しいものだったんですね!」

「普段はどうやって食べるの?」

「茹でるか、焼くかです」


「栗ご飯は旨いよな。作るのは面倒だけどさ」

「栗美味しいにゃ!栗ご飯も美味しいにゃ!ユリは凄いにゃ!」

「みなさん、おかずもありますよ?」


全員が、栗ご飯だけで茶碗1杯食べ終わっていた。

2杯目はおかずも食べて、マーレイが鶏肉は凄いと誉めていた。


残った栗ご飯と、あら熱がとれた渋皮マロンは、タッパにいれ渡した。


「リラ、これお土産のラムネにゃ」

「ありがとうございます!!」


ユメがガラスポット入りのラムネを渡すと、リラは容器を有り難がっているように見えた。

きな粉棒(ダイス?)を渡すと、ラムネもお菓子だと気づいたようだった。


「どこに行ってきたんですか?」

「ソウが前に住んでた家にゃ!」


聞いたマーレイとリラは、実家とか本家かな?と思った。

ソウは、まあ、ユメが説明できるのは俺の家くらいだよなと思った。


「そこのお土産なんですか?」

「その国のお菓子をユリが作ったにゃ!」

「???(『お土産』って一体なんだろう)」


リラが悩んでいるようなので、ユリが助言した。


「子供の頃食べていたお菓子を行った先で作ったものよ」

「そうなんですね!」


リラがやっと納得できる話になった。と思っていたのに、ユメが更に言った。


「食べちゃったから又作ってもらったのにゃ」

「・・・(やっぱり『お土産』ってなんだろう)」


リラの疑問は晴れないのだった。

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