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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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挨拶

ユリは引っ越したあとのホシミ家に初めて来た。

広い庭がある和風の素敵な家だった。

和風だけど、バリアフリーになっている。

ソウの母親が出てきてユリに気がついた。


「まあ!まあ!ユリちゃん!! 元気だった?」

「ご無沙汰しております」

「堅苦しい挨拶は良いから、ほら、早く上がってちょうだい」

「はい。お邪魔いたします」


玄関にはソウの父親が待ち構えていた。


「ユリちゃん!久しぶりだなぁ。ソウとはうまくやってる?」

「おじさま!ご無沙汰しております。ソウにはとてもよくしてもらっています」

「あなたもこんな所じゃなくて」

「おお、そうだな」


ユリは二人に手を引かれ連れていかれた。

ソウは後ろから、仕方ないなぁと言わんばかりについてきている。


高さの有る座椅子が置いてある居間に連れてこられた。


「座って座って、今お茶を持ってくるわ」

「あ、あの、お菓子作ってきました」

「あらー、気を使ってくれたのね。いつもありがとう!」

「早速食べようじゃないか!ユリちゃんの作ってくるお菓子旨いからなぁ!」

「俺、お袋を手伝ってくるよ」


ソウはユリの作ってきたパウンドケーキをもってキッチンへ行った。


ソウの父親が、ワクワクした雰囲気を隠しもせずに聞いてきた。


「ユリちゃん、今日は何かあるのかい?」

「あ、いえ、遅い夏休みです」

「そうなのか。てっきり・・・」


◇◇◇◇◇


一方、ソウと母親は、


「ソウ、ユリちゃんにプロポーズはしたの?」

「ぶほっ! なに?突然」


アイスティーを飲んでいたソウは吹き出しかけた。


「結婚の挨拶に来たんじゃないの?」

「ち、違うよ。夏休みで帰郷しただけだよ」


◇◇◇◇◇


「おまたせー。ユリちゃんはアイスティーで良いかしら?」

「はい。ありがとうございます」


すっかり結婚の挨拶だと思っていた両親は、ユリに内緒で落胆したが、ソウとユリが仲良くやっているらしいことがわかりひと安心した。


「じゃ、又来るから」

「いつでも来て良いんだからね。次は待ってるわね」

「どうもお邪魔しました」

「ユリちゃん、次も一緒にくるんだぞ!」

「?はい・・・」


ホシミ家から離れてからソウに聞いた。


「次とか待ってるって何の事?」

「あれは・・・お袋と親父が勝手に言ってるだけだから気にしなくて良いよ」

「うーん・・・わかったわ」


ユリは聞くのを諦めた。


「あとは何処に行く?」

「お墓参りに行っても良いかしら?」

「花買ったりする?」

「今日は良いわ」

「じゃ、そのままいこう」

「え、転移して大丈夫なの?」


クラっとして、もうお墓の前だった。


墓石をたてずに樹木葬にした。

両親もユリも、死後にあまり興味がなかった。

生前から、墓なんて要らない散骨で良い。と言っていたからだ。


「ユリ、線香なんて持ってたんだ」

「うん。向こうに送った荷物にね。だから持ってきた」


二人で手を合わせ冥福を祈った。


「次は一度帰ろうか」

「うん。ユメちゃん大丈夫かな・・・」


ソウの部屋に転移で戻ってきた。

部屋を出てキッチンへ行ったが、ユメもカエンもいなかった。

テーブルにはメモがあり、「少し出掛けますが、夕方には戻ります。カエン」と書いてあった。


「ソウ、カエンちゃんのメモがあったわ。夕方まで戻らないみたい」

「昼ご飯どうしようか」

「昼ご飯は適当に食べてしまって、夕ご飯は何か作りましょう。みんなの分を」

「そうだな。なら、昼は寿司でも食べよう。魚食べたいだろ?」

「そうね! でも、夕飯も恐らく魚よ。うふふ」


二人で回転寿司に行った。

ユリは普段あまり食べない生物(なまもの)ばかり食べていた。


帰りがけに買い物し、フライ用に鯵と天ぷら油を買った。

スーパーの買い物が懐かしすぎて、あれもこれも買いそうになり、ソウに止められた。


「冬箱と真冬箱持ってくれば良かった!」

「あー、あれは確かに画期的だな」


電源が要らない冷蔵庫や冷凍庫。便利すぎる。


「今度来ることがあったらカエンちゃんに、アイス箱さしあげようかしら?」

「あー、あれも画期的だよな」


お店に30台有るし、1台くらい良いわよね?

ユリは小声で聞いた。


「カエンちゃんって、魔力有るのよね?」

「あるな」


あ!なら、ホシミのおばさま達にも!


「おじさまとおばさまは?」

「たぶん無いな」

「そうなの!?」

「昔、俺が言ったことを試しにやってくれたが、できなかった」


何を試したのかしら?


「私にも言った?」

「イヤ、言ってないと思う。小学生の頃の話だよ。当時ユリは10歳になっていない」


ソウが、10歳の時なら私は7~8歳ね。


「えーと、(魔力は)10歳以降なんだっけ?」

「当時ユリは幸せそうだったし」

「ん? 今だって幸せよ?」


まるで今は幸せじゃないみたいな言い方はなぜ?


「そ、そうか、それなら良かった」

「ソウがいて、ユメちゃんがいて、私のお店があって、幸せに決まっているじゃない」

「そうだな」


ソウが笑顔になって良かった!


ソウも、ユリが笑顔のままで良かったと思っていたのである。


「さあ、ユメちゃんが帰ってくる前にご飯作るわよ!」

「何手伝えば良い?」

「ソウの家だから、私が聞く方なんだけど?」

「あはは、とりあえず急いで帰ろう」

「うん!」


ソウの家に戻り、ご飯の支度をしてユメの帰りを待った。


少しして、ユメが笑顔で帰ってきた。


「ユメちゃんお帰りー!」

「ユメお帰り」

「た、ただいまにゃ」


ユメがホッとしたように見えた。


カエンにも一緒に食べようとすすめたが、カエンは「水入らずな感じでどうぞ」と言って食べずに帰っていった。


「ソウ、迷惑かけてごめんなさいなのにゃ。ユリ心配かけてごめんなさいなのにゃ」

「確かに心配はしたけど、辛いことは我慢するんじゃなくて、助けてって言うのよ?」

「ユメ、明日は買い物にいこうな」

「二人とも、ありがとにゃ!」


ユメちゃんが元気になったみたいで良かった。



ユメちゃんの悩みは、いつか話してくれるかな。

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