帰郷
早く目が覚めた。
昨晩はなかなか寝付けなかったので少し寝不足ぎみだ。
洗濯物を集め、洗濯機をまわした。
リビングと自分の部屋を掃除し、終わった洗濯物を干した。
朝食は、昨日の残りのパンと卵を焼こう。
冷蔵庫に生物を残さないようにしないとね。
んー、牛乳が結構あるわね。なら、フレンチトーストにしようかしら・・・。
卵を溶き、温めた牛乳を加え、少し砂糖を足してからパンを漬け込んだ。
「おはようにゃ!」
「おはよう。ソウより早かったわね」
「ソウ起きてないにゃ?」
「こっちには来てないわよ。ユメちゃん朝ご飯食べる?」
「朝ご飯食べるにゃ!」
「フレンチトーストだけど、甘いのと、しょっぱいのどっちが良い?」
「甘いのが良いにゃ!」
「おはよう・・・ユメ早いな」
「おはようにゃ!」
「おはようソウ。フレンチトーストどっちにする?」
「甘い方・・・ふあー」
ソウはまだ眠そうに大きなあくびをした。
ユリはフレンチトーストをバターたっぷりで焼き、ソウとユメの分には粉砂糖をふりかけ、メープルシロップを添えてだした。
自分の分は、ケチャップとハムとレタスを添えて食べた。
「甘いパン美味しいにゃ!」
「メープルシロップ、罪な味だよなぁ」
そういいながらもかなり大量にかけている。
「ユメ、メープルシロップはどうやって作るか知ってるか?」
「メープルシロップは、サトウカエデの樹液を煮詰めたものにゃ!」
「ユメ、よく知ってるな」
「ユリに教えてもらったにゃ!」
「あら、よく覚えていたわね。偉いわ」
たっぷりかけたメープルシロップを、ソウは残らずパンに吸わせるようにして食べていた。
「いつ出発するにゃ?」
「少し片付けたいから、30分は後かしら」
「俺もそのくらいが良いな」
「わかったにゃ。お部屋に居るにゃ」
「はーい」
ユメが部屋に戻り、ソウが洗い物をしてくれるというので、ユリは残っていた片付けをした。
着替えが終わり、出かける用意ができた。
ユメとソウに声をかけ、ソウの部屋に集合した。
「予定を聞いてくれ。まずは、この国の転移ポイントに行く。そこから境界を越える。あちらについたら俺の家に転移する」
「3回転移するということ?」
「ちょっと違うが、その理解で大丈夫だ」
「ソウ、ゲートと同時に転移を展開すれば1度で行けるはずにゃ」
「ゲート?」
「ソウの言う境界にゃ。あれは多重結界にゃ。ソウが使っているのは、ゲートにゃ」
「そうなのか!? ユメは、そのゲートも使えるのか?」
「ゲートは使えないにゃ。転移だけにゃ」
「入ってくるときはそれでも来ることができるけど、こちらから行くときは、カエンの時、できなかった。一人の時は一度で行き来できる」
「カエン重たいにゃ?」
「え?」
「ソウの体重より重たいときは、ゲートも多く魔力を使うにゃ」
「あー!成る程!転移の時と同じなのか!」
「一応カエンのために言っておくが、カエンは俺より軽いよ。帰りたくないカエンが家具をつかんでたから・・・転移ポイントで、落ちた」
落ちたんだ・・・。
当時何も言わなかったから、何事もなく帰ったのだと思ってたわ。
「なら、一人ずつなら一気に行けるのか」
「そういうことにゃ」
「向こうに行くならユリから行くか」
「わ、わかったわ」
「靴持ってきて捕まって」
「すでに持っているわ」
「いくよ」
クラっとして目を開けたら元の国のソウの部屋だった。
「ユメをつれてくるから部屋の外に居てくれ」
「わかったわ」
「行ってくる」
ソウがいってしまうと、ユリは急いで部屋を出た。
廊下に居るのもなんだと思い、キッチンに行くと、なんとカエンがいた。
「ユリお姉さま。その節は大変ご迷惑をお掛け致しました」
「こ、こんにちは、カエンちゃん。今日はどうしたの?」
「ユメちゃんに用がありまして」
「ユメちゃんに会ったことありましたっけ?」
「にゃーーーー!!!!」
「え?ユメちゃん?」
「ユメ、しっかりしろ! 」
ユリとカエンは階段をかけ上がり、ソウの部屋に来た。
扉を開けると、暴れる黒猫を抱いたソウがいた。
「ユメちゃんどうしたの?」
「突然叫んだと思ったら黒猫になってそのままなんだ」
ユメは怯えたようにずっと鳴いている。
「お兄様、少し私にお任せくださいませ」
「カエン?」
カエンはユメを抱き上げ、小声で何か告げるとユメがおとなしくなった。
「先読みで見ました。お任せください」
「ユメ、カエンに任せて良いのか?」
黒猫のユメは首を縦に振った。
「ユメちゃん、どこか痛いの?」
黒猫のユメは首を横に振った。
「少しお話しするだけでございます。お兄様もユリお姉さまもご安心ください。お買い物にいかれて大丈夫でございますよ」
「でも・・・」
「少しお話しした後、もしかすると一緒に出かけるかもしれませんが、必ず本日中に戻って参ります」
「わかった。カエン、ユメをよろしくな」
「カエンちゃん、ユメちゃんをよろしくお願いします」
「はい。任されました」
ユメをカエンに任せ、ホシミご夫妻の家に転移した。




