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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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花畑

セミの脱け殻の残念な話があります。

苦手な方はご注意ください。

尚、こちらでは大分柔らかくしてありますが、ソウの発言を全て読みたい方は、クロネコのユメの方で省略せずに書いています。

ソウにつれられて歩きだした。

家の回りはどんな靴でも歩けそうな感じだったが、5分くらい歩いた時点で田舎の畦道(あぜみち)のような感じに変わった。


「ずいぶん道が・・・」

「あー、舗装されていないからな」

「広い道が平らなのは家の回りだけなのね」


もしかすると、ソウが、舗装のなにかに関わっているのかしら?


関わりどころか、ソウが指示して道を整備したのである。

王宮から受け取った支度金は、家を建てずに、すべて地域の人を雇って道を(なら)すのに使い、家の回りとパープル侯爵邸のある町まで平らな道になったのだった。



馬車ならともかく、歩くには幅は要らないので、ユメを先頭に一列になって歩けば支障がない。

(わだち)のなるべく平らなところを選んで歩いた。

たまにすれ違う人に驚かれ、まれにユメを拝んでいる人もいた。


1時間くらい歩いただろうか、開けた先に色鮮やかな花の絨毯が目に留まった。


「うわー!綺麗!」

「すごいにゃー!」


コスモスが咲いていた。

桃色、白、赤紫、たくさんの花が一面に植わっている。

そよ風に揺れる姿も美しい。


作業している若い人が見えたので、一声かけると、こちらを知っているようだった。


「こんにちは!」

「ユリ・ハナノ様!こちらへはどういったご用で?」

「散歩で来ました。花畑すごいですね!」

「散歩でしたか!どうぞお好きなだけご覧になっていってください」

「ありがとうございます!」


見て回ると、コスモスの他、リコリスやクレオメが咲いていた。

リコリスは、赤、白、橙色、桃色、黄色と、色々あり華やかである。

クレオメは濃い桃色から白い花びらまでがひとつの花にあり、美しい。


「彼岸花・・・」


ソウが呟いた。


「あー、赤以外は彼岸花って呼ばないのよ」

「そうなの?」

「色を指定しないなら、リコリスと呼んだ方が良いかもしれないわね」

「へぇ」


「ユリ、これは何にゃ?」

西洋風蝶草せいようふうちょうそう。クレオメという方が分かりやすいかしら?」

「どっちも知らないにゃ。りこりすも、くれおめも、豪華な飾りみたいな花にゃ」

「私も子供の頃、お姫様の冠みたいって思っていたわ!」


ユメが何か拾ってきた。


「ユリ、栗?が落ちてるにゃ」

「栗?」


見せてもらうと、栗に似ているが少し違う。


「何処にあったの?」

「そこに有ったにゃ」


ユメの指す方向をみると、キワノを小さくしたような太い突起の有る殻が落ちていた。


「あー、マロニエ! 西洋(トチ)の木」

「栗じゃないにゃ?」

「栗ではないわね。んー、たしか渋くて食べられなかったような・・・」


「栗もあったぞ」


ソウが栗を持ってきた。

そばに落ちていたらしい。


「栗は農作物じゃないの?」

「処理が面倒だからあまり拾わないらしいぞ。以前見かけたときに同じことを聞いたんだよ」

「えー!勿体無い!」


栗としてはあまり大きくはないが、殻がたくさん落ちている。


「拾って帰って、栗ご飯にしたいわぁ」

「一応、聞いてからの方が良いかもな」

「そうね。20~30粒もあれば栗ご飯ができるわ!」

「ユリ、何号炊くつもりなの?」

「2階の炊飯器よ? 1~ 2(ごう)位しか作らないわよ?」


いくら栗が小粒でも、1合の米に栗を30粒入れたらかなり栗だらけの栗ご飯になる。

普段あまり米を食べないユリだが、栗ご飯は大好きなのだ。


「この栗がダメでも今度和栗を買ってくるよ」

「え!? あー、品種的に西洋栗なのね。むしろ剥きやすいかも?」


ふと気づくと、ユメがマロニエの実をたくさん拾っていた。どうするのだろう?


「ユメちゃん、それどうするの?」

「飾るにゃ!」

「そう。ならリュックに入れると良いわ。手に持ちきれないでしょ?」

「ユリ、ありがとにゃ!」


手に持っていた分だけかと思ったら、色々な場所のポケットから何か色々なものが出てきた。

ドングリ各種? いったいいつ拾ったのだろう?

ユメはニコニコしながらリュックに移し替えていた。


「ふふふ」

「ユリ、笑ってるにゃ?」

「ごめんなさい。ちょっと思い出して」

「面白いことにゃ?」

「ソウがユメちゃんくらいの時にね、セミの脱け殻をポケットいっぱいに入れて持ち帰ったのを、ソウのおかあさんが気が付かずに洗濯してしまって、洗濯物が、セミの脱け殻だらけになったのを見せてもらったことがあってね」

「あー、あのときはさすがに怒られた。(以後省略)」


ユメがドン引きしていた。

気がついたソウが話をやめた。


「想像したにゃ・・・」

「ごめんなさい」

「悪かった」


「これあげるにゃ」


ユメはユリに何かの種をくれた。


「なあに? あ、これ、風船葛(ふうせんかずら)!」

「知ってるにゃ?」

「このくらいの風船みたいな実の中にこの種が入っているのよね」


ユリは親指と人差し指で輪を作って見せた。


「来年植えましょう!」

「一緒に植えるのにゃ!約束なのにゃ!」

「はい、約束します!」


「ユリ、そろそろ食べないか? 」

「そうね。どこか座っても良い場所はあるかしら?」

「ちょっと聞いてみようか」


すぐ向こうに作業をしている年配の人が見えた。


「あのすみません。この辺で 座っても邪魔にならない場所はありますか?」

「座るのですか?」

「お弁当を食べようかと思って」

「あー、それならば良い場所がありますよ。この先をもう少し行くと、大きな切り株と丸太を横たえた椅子があるので、休憩や食事に使うと良いですよ」

「ありがとうございます!お借りしますね!」


少し歩くと、野原のような場所に、大きな切り株と丸太の椅子があった。

横たえた丸太と、1人用の椅子サイズに切ったものがある。

切り株のテーブルには、誰かのバスケットと水筒が置いてあった。


水筒が置いてある側を空けて座った。


濡れタオルをソウとユメに渡し、手を拭いてもらってからおにぎりを渡した。

ソウは冷茶を3つ注いで渡してくれた。

することがなかったユメが少しキョロキョロしていた。


「食べましょう。卵焼きとパウンドケーキもあるわよ」

「おにぎり小さくて食べやすいにゃ!」

「あれ?鮭だ」

「あ、こっちが新生姜の佃煮よ」


ソウがおにぎりに手を伸ばしたとき、先程ここをすすめてくれた人が、最初に挨拶をした人と一緒に来た。


「ご一緒させていただけますか?」

「はい。むしろ使わせていただけて助かりました」

「ありがとうございます」

「ありがとにゃ! クッキーどうぞなのにゃ!」


ユメはどこから出したのか黒猫クッキーを2枚差し出した。

あら、全部売ったのではなかったのね。


「これは可愛らしい。どうもありがとうございます」

「ありがとうございます!ユメ様」


バスケットの中身は、バケットのようなパンと、ハムだった。他にリンゴが見えた。

その場でパンをスライスし、ハムをのせて食べていた。


若いほうの人がユメに話しかけた。


「ユメ様は何を召し上がっているのですか?」

「ユリが作ったおにぎりにゃ!」

「それはオニギリと言うのですね。お店で食べるご飯を固めたものですか?」

「ユリ・・・」


ユメが助けを求めているようなのでユリが答えた。


「そうですね。お店で出すご飯を手でまとめるようにしたもので、中にちょっとおかずが入っています」

「ほう!」

「まだありますので、よろしければお一つどうぞ」


ユリは新生姜の佃煮入りの小さなおにぎりを二人に渡した。

鮭は、魚を食べる習慣がないらしい人達には、ハードルが高いだろうと考えたのだ。


「本来遠慮すべきではありますが、とても興味がありますので、ありがたくいただきます」

「ありがとうございます!!」


二人がおにぎりを頬張る。


「ん!これは!」

「甘いのに辛くて旨い!・・・何ですか?何が入っているのですか?」


小さいのですぐに食べ終わってしまい、食べ終わったことを残念そうにこちらを見ていた。


「新生姜の佃煮です。生姜はわかりますか?」

「生姜はわかります」

「生姜の若い柔らかいものを細切りにして、お砂糖とお酒と大豆から作る調味料などで煮たものです」

「お店に行けば食べられるのですか?」

「予定はないのですが、お店で売りましょうか?」

「はい!是非お願いします!」

「では、休み明けに用意しますね」

「ありがとうございます!」


そのあとは、花を育てる苦労話などを聞きながら(なご)やかに食事をした。

帰り際に花束をもらい、持って帰るのは大変そうだということで、ソウの転移で帰ってきた。


店の前に転移してもらい、ユメは自力で転移してきた。


「ソウ、どうもありがとう」

「どういたしまして」


「ユリ、鞄返した方が良いにゃ?」

「ユメちゃんが使うならあげるわよ?」

「使うにゃ!ありがとにゃ!黒蜜が入るにゃ!」

「あー。成る程」


花は花瓶に入れ2階のリビングに飾った。

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