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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
3章

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休暇

ゆっくり寝ていられるのに、早く目が覚めた。


仕事がある日はもう少し寝ていたいと思うのに、今日はしっかり目が覚めた。

少し散歩でもしよう。


まだみんな寝ていると思うので静かに階段を降りた。

ここに来て丸5か月になるが、あまり家の周りを散策したことがない。

近所に店がないので、行くところもないからだ。


畑の向こうの川を覗くと 湿地部分に、茎の途中に穂が付いたような真っ直ぐな葉っぱが目に入った。

もしかしてあれは藺草(いぐさ)ではないかしら?

この川、どこからか降りられないかな?


良く見ると、橋の脇に梯子(はしご)のようなものがかけてあり、川の中まで降りることができるようだ。


一度戻り、長靴に履き替え、小型の剪定鋏を持ってきた。

梯子を降り、先程見た藺草のような植物のそばまで歩いた。


そばまで行くと、上から覗いたときの印象より大きかった。

70cm以上ありそう。

長そうなものだけ根本から切り取り、一掴みほど持ち帰った。


帰りがけ畑を見ると、バタフライピーが沢山咲いている。

30個以上あるかしら?

とりあえず枯れている花を収穫し、目の細かいザルを持ってきて干した。


紫蘇(しそ)に穂がついている。

穂紫蘇を漬けたいけど、今年は梅干し作っていないから梅酢がないのよね。塩漬けで良いかしら。


とりあえず穂紫蘇も収穫した。


畑の生姜を少し掘り、思ったより大きいものがたくさんあって驚いた。本来の収穫にはまだ少し早いはずなのだ。


家に戻り、ソウが特別に用意したシナモンスティックとクローブを2階から持ってきた。

その他の材料、砂糖、粒黒胡椒、唐辛子、ローリエは店にある。

(ローリエは、植わっている月桂樹の葉を乾燥させたもの)


新生姜は良く洗い、皮ごと薄切りにして分量の水で煮出すのだが、取り除いたあとの生姜は、勿体ないので佃煮にしようと思い、千切りにしてある。


煮出している生姜をあまりそばで見つめていると、揮発する成分で目や肌がピリピリと痛くなる。


15~20分ほど煮出し、生姜を取り除き、砂糖以外の残りの材料を加え更に煮込む。


水分が半分以下に減ったらザルで濾した後、砂糖を加え、良く溶かす。


あら熱がとれたら清潔な瓶などに保存し、冷蔵した上で、早めに使いきる。


炭酸水や、冷水で割って飲む。

冬はお湯割りもおすすめである。


重要なのは、生姜と糖分だけなので、好きなものを入れて作るとオリジナルなジンジャエールの素が作れる。

ザラメ糖や三温糖を使うと色が着いて、よりジンジャエールぽいかもしれない。



取り除いた生姜は、もう一、二度ゆでこぼしたあと、少しの水分と、酒、みりん、砂糖、和ダシ、少量の醤油を加え、煮詰める。

ものすごく時間がかかるので、根気が必要である。

出来上がったら、白ごまを飾る。


「よし、できたわ!」


いつのまにかソウが後ろにいて肩越しに覗き込んできた。


「おはよう。ユリ、何作ってるの?」

「おはよう、ソウ。新生姜の佃煮よ」


「ご飯ある!?」


すごい勢いでソウが聞いてきた。


「あるわよー。そのまま食べる?おにぎりにする?」

「何してるにゃ? ふにゃぁー」


ユメがあくびをしながら起きてきた。


「おはようユメちゃん。色々作っていたのよ」

「ユリ、どっちも食べたい! おはようユメ」

「おはようにゃ。何か食べるのにゃ?」

「新生姜の佃煮を作ったからご飯を食べようと話していたのよ」

「おいしいにゃ?」

「少し(から)くて甘くて美味しいわよ」

「辛いのに甘いにゃ?」

「ユリの作る新生姜の佃煮は旨いぞ!」

「にゃー・・・少しだけ食べてみるにゃ!」


みんなで2階に行き、ご飯を食べることになった。

ユリは手早く味噌汁とだし巻き玉子を作り、塩鮭を焼いた。

その他の常備菜を出してできあがり。

ユメが色々手伝ってくれた。


「ユメちゃん、ソウを呼んでくれる?」

「わかったにゃ!」


ユリは小さめのおにぎりを何個か作った。

中身は、新生姜の佃煮と塩鮭で、海苔の巻き方で中身が分かるようになっている。


「手伝わなくてごめん」

「大丈夫よ。ユメちゃんがお手伝いしてくれたわ」

「手伝ったにゃ!」


「さぁ、食べましょう」


ユメはおっかなびっくりな感じて食べだしたが、少しだけ辛味があるものの、かなり甘口な味付けが気に入ったようて、喜んでおかわりまでして食べていた。


「美味しいにゃ!」

「旨いなぁ!時間かかるんだろ?大変だったよな。ありがとう」

「まあ、ついでだったしね」

「ついで?」

「ジンジャエールの素を作ったのよ」

「おお!」

「強炭酸の炭酸水で割ると良いわよ」

「何処に有るの?」

「ジンジャエールの素は厨房の冷蔵庫、強炭酸は後ろの冷蔵庫にあるわよ」


ソウは早速持ってきて飲むようだ。

急いで厨房に取りに行った。その間にユリが冷蔵庫から強炭酸のペットボトルを取り出した。


「ユリ、ソウが何か作るにゃ?」

「飲み物よ。少しもらって飲んでみたら良いわ。シュワシュワするから(から)く感じるかもしれないけど、(から)くはないのよ」

「にゃー?」


階段をかけ上がったのか、ソウは息を切らして戻ってきた。


「持ってきた! ユリも飲む?」

「少しね」

「ユメも飲むか?」

「少し飲むにゃ!」


ソウは大きめのコップを3つ持ってきて、少しだけ入れたものを2つと、1/5位入れたものを作り、冷えている強炭酸水を注いだ。

素が少なかったものは大丈夫だったが、1/5位入れたものは、炭酸を(あふ)れさせていた。


「うわー」


慌てて口をつけ飲んでいるソウを見て、ユメがあきれていた。


できたジンジャエールをソウが渡してくれた。


「ありがとにゃ」

「ありがと」

「素を作ったのはユリだけどな」


早速飲んだユメが少し不思議そうな顔をしてから首をかしげてもう一口飲んで言った。


「あれ?これ知ってるにゃ」

「ジンジャエールよ」

「市販のより旨いな!」

「ソウ、もう少し作ってにゃ」

「コップ1杯分作るか?」

「お願いするにゃ」


ソウは、先程作った自分の分と同じくらいをユメに作っていた。

今度は途中で一度混ぜたので、(あふ)れさせなかった。


「二人とも気に入ったようで良かったわ!ふふ」


「すぐ無くなりそうだな」

「又作るわよ」

「なら、安心して飲めるな!」


「それでね、ちょっとその辺を散歩にいきたいんだけど、ひとりで行くと帰ってこられなくなりそうで・・・」


あーユリは方向音痴だった。とソウとユメは思った。


「良いよ、行きたいところとかある?」

「一緒に行くにゃ!」


ユリはニコッと笑った。


「さっき作ったおにぎりを食べるのにちょこっと散歩したいだけだから」

「歩いていくの? 馬車用意する?」

「歩いていける場所にどこか良いところある?」

「んー、公園とか無いし・・・あ!花畑があるよ!」

「花畑?」


以前行った湖の事だろうか?


「本当に畑の花畑。出荷用の花の畑」


ソウの言葉に、それは凄そうだわとユリは思った。


「歩いていける?」

「荷物がなければ余裕だけど、折り畳みテーブル持っていくのはちょっと遠いかも」


確かにあのテーブルは地味に重たい。


「敷物とお弁当と水筒ならどう?」

「そのくらいなら歩いても大丈夫。4km位先だから」


「ユリ、何か持つにゃ!」

「ユメちゃんが持ってくれるならミニリュック持ってくるわね」

「俺が水筒持つよ」


一番重い水筒は、ソウが持ってくれるらしい。

ユリはミニリュック2つに、敷物を入れたユメ用と、お弁当と重ねられるコップを入れた自分用を用意した。

ポケットがたくさんついたおしゃれ系のミニリュックだが、ユメにはちょうど良いサイズである。


お店のお菓子は売り切ってしまったので、ソウとユメ用に焼いているパウンドケーキを少しだけ持ってきた。


2リットル入る保冷の水筒に冷茶を入れソウに持ってもらい準備完了!


「おしゃれより歩きやすい靴で用意した?」

「大丈夫よ。ジーンズにスニーカーだから!」


指差し確認の戸締まりをして出発した。

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