宝箱
ユリは早めに来て白玉粉を計量していた。
白玉粉はすぐには溶けないので、先に水につけておかなければ使えない。
15:00の開店前に全員戻ってきたが、ユリは、外おやつに冷茶とクッキーを出しに行っていた。
「珍しくユリが最後だね!」
「え、うん、そうだね」
ソウに最後だと言われたが、特に否定しなかった。
「ユメちゃん、外に黒蜜と黒猫クッキーが欲しい人がいるんだけど、あとで対応してもらえるかしら?」
「わかったにゃ!」
おやつ開始と共に、人がなだれ込んできた。
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おすすめおやつ
アイスクリームフルーツ宝箱 500☆
(全部で6種類!何が出るかはお楽しみ!)
ほうじ茶セット プラス200☆
(ほうじ茶のおかわりは無料です)
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「アイスクリーム8つください。あと、セットは4つ」
「え?8つですか?」
「1人2つずつ食べます」
「はい、少々お待ちください」
追加ではなく最初から2つ食べる宣言とは、ちゃんと違う種類を持っていかなければ。
ランダムに出していたが、ユリは中身を把握していた。
ソウがわざわざ分けておいてくれたからだ。
そして他のテーブルも、最初から1人辺り2~3個注文してきた。
さすがに1人で6種類頼む人はいなかったが、テーブルで全種類網羅するグループばかりだった。
店が少し落ち着いた頃、ユリは厨房に戻り、ゆるい求肥を作り始めた。
ソウとマーレイには、できたバニラアイスクリームを中デッシャーですくってトレーに並べ冷凍しておいて欲しいと言ってある。
「ユリ様、アングレーズソース終わりました」
「ちょっと待って、すぐできるから」
ゆるい求肥生地を片栗粉を振るったトレーに流すように伸ばし、少しだけ冷やしてから切り分けた。
「リラちゃん、アイスクリームの丸い方を下にして、求肥生地で包んでからココットに入れてください」
「はい!」
「あ、俺もやってみたい!」
アイス箱をマーレイに任せソウが包みにきた。
追加注文を受けて戻ってきたユメも作りたがったので、ユリが代わり客にアイスクリームを持って行った。
少し包むと気が済んだのか、ユメは黒猫クッキーを売りに戻った。
戻るときに、外で黒蜜と黒猫クッキーを売ってきたにゃ!と言っていた。
ユリはどんどんゆるい求肥を作り、みんな、どんどん包むのがうまくなっていった。
「ユリー、確実に6種類売ってくれって言ってるにゃ」
「私が対応するわ」
3人連れの客が合計6個希望だったので、確実に6種類なのだが、恐らく6種類だと思いますと言って販売した。
この後も、持ち帰り合計6個希望のグループが多かった。
売れ行きは順調で、特にもめる人も出なくほっとした。
「ユリー、黒蜜 冷蔵庫の中だけにゃ?」
「そうです」
「あと15個くらいにゃ」
「え!追加作ります。ユメちゃんありがとう」
ユリが大鍋に黒糖をいれていると、マーレイとリラが容器を洗って湯通しして用意してくれた。
「マーレイさん、リラちゃん、ありがとう。助かるわ!」
「ユリ様、黒蜜の容器、次の分で足りなくなるみたいです」
「あら、ボーンリーフさんに連絡しないといけないけど、連絡先が分からないわ。次の分が売り切れたらしばらく欠品ね」
今から作る上に次の分の話なので、現時点で450個以上はある。今までに使ったのが約860個で、充分残っているのだ。
次回のココットの納品日で間に合うだろう。
手早く黒蜜を作り、あら熱がとれたところで容器に詰めた。すぐに1つ漏れだして、最終的には3つほど不良品があった。
ほどなく冷蔵庫の保存分は売り切れ、まだ冷えていない黒蜜まで売ることになった。
お店のアイスクリームも、持ち帰りも好調で、17:00前にすべて売り切れてしまった。
ユリの予想よりも売り切れが早かった。
予約者の分は無事に販売できたので、もう良いかと思ったが、並んでも食べたい人たちがまだいるらしい。
少し多めに作ったフルーツ氷は残っているので、1回分だけ作ることにした。25個もあればなんとかなるだろう。
フルーツ氷をココットに入れ、先に冷凍した。
「なんで入れ物を冷凍するにゃ?」
「氷が溶けちゃうとアイスクリームに色が移っちゃうからね」
「にゃるほどにゃー」
黒糖アイスクリームを1回作って貰い、一度も冷凍庫で凍らせていない柔らかいアイスクリームのまま提供した。
15席しかない店内で、25個が売り切れた。
さすがに残ると思ったのに。
出来立てアイスクリームの美味しさを知らなかった人たちを覚醒させてしまったらしい。
さすがに提供時に17:30を過ぎていたので、更なる追加製造は要求されなかった。
店内に残る客から、明日も楽しみにしてる。と言われ、ユリは笑顔でお礼を言った。
お店を閉店させても、明日のアイスクリームがまだ作り終わらなかった。途中追加分を作ったためだ。
アイスクリーム本体は作り終わっている。量としてはいつもの半分だからだ。要は、求肥で包み終わっていないのだ。
とりあえず食事して、食べてから作ろうと言うことになり、食べたいものがあるか聞いてみた。
「何か食べたいものありますか?」
「美味しいのが良いにゃ!」
「なんでも良いです!」
「ユリ・ハナノ様が作られるものはなんでも美味しいです」
「ユリが作りやすいもので!」
「んー、じゃあ、スパゲッティーミートソースで!」
「良いねぇ!」
「手伝います!」「手伝うにゃ!」
「何かお手伝いできることはありますか?」
「玉ねぎとニンジンとキノコのみじん切り、挽き肉作り、トマト缶を開ける、お湯を沸かす、お茶、サラダ、お皿の用意、かな?」
「みじん切りします!」
リラが用意をしだした。
「挽き肉作るよ。どれ使って良い?」
ソウがミートミンサーをセットしだした。
「何したら良いにゃ?」
「キノコ切ってもらえるかしら?」
「わかったにゃ!」
ユメはマッシュルームを持ってきてゆっくり切り始めた。
マーレイはリラと一緒に野菜をみじん切りしていた。
ユリはお湯を沸かし、サラダを作って冷蔵庫に入れ、皿を用意して、スパゲッティーの乾麺を持って来た。
一番大きなフライパンに、切った野菜や挽き肉を入れ炒めだした。
リラとユメは横で釘付けで見いっていた。
ソウとマーレイは、トマト缶を開け、ミートミンサーを片付けていた。
挽き肉が解れるくらい炒めたらトマト缶を空け、コンソメを加え、たまに底からかき混ぜながら煮込んだ。
「リラちゃん、焦げないように、たまに混ぜてくれる?」
「はい!」
ユリは沸かした湯にオリーブ油と塩を入れ、スパゲッティーをパラパラと入れた。
横にいるリラがこちらをじっと見ながらも、手元の鍋を混ぜていた。
ユリはたまにかき混ぜながらスパゲッティーを茹で、ざるにあげた。
少しオリーブ油をからめ皿に分けた。
リラが混ぜていたミートソースの火を止め、味を確認してからお玉ですくって皿に分けた。
5人前のスパゲッティーミートソースができあがった。
「好みで、粉チーズをかけてください。あ、辛いのが好きな人は、辛味調味料もあります」
ユリとリラがテーブルに運び、ユメが冷茶を入れてくれた。
ソウとマーレイが冷蔵庫からサラダを持って来た。
いただきますの挨拶をして、みんなで一斉に食べだした。
「美味しー!」「美味しいにゃ!」
「やっぱりうまいな!」
「美味しいです!」
「良かった」
ソウは半分食べてから辛味調味料を足していた。
マーレイにも薦め、マーレイもソウにならって辛味調味料を足して食べてみていた。
ユメとリラは、粉チーズを少しかけて食べてみて、かけないところを食べてみて、ユメはもう一度かけたが、リラはかけなくて良いやと残りはそのまま食べていた。
ユリは何も足さずに食べた。
食事も終わり、残りのアイスクリームも求肥で包み、今日の予定が終了した。




