詩的
ランチにワインシャーベットをつけた。
オレンジシャーベットに変更できますと書き添えたが、誰一人変更する人はいなかった。
それどころか、ランチからワインシャーベットの追加をする人まで現れた。
明日分のアイスクリームは黒糖アイスクリームだ。ユリは早めにアングレーズソースを作った。
昨日の夜作ったフルーツ氷を2粒入れ黒糖アイスクリームを被せ、上にきな粉をふるって出来上がる。
恐らく明日は焼けないのでと、リラには目一杯クッキー(リラの華と黒猫クッキー)を作ってもらった。
ユリは気合いをいれてクッキーを焼いた。
ソウとマーレイがいるので午前中から作っているため、お店のランチが終わる頃には10回目が作り終わっていた。
出来上がりを数えたら252個ある。
普段1回作ると、21~22個出来上がるが、氷を入れている分出来上がる数が多いらしい。
ユリは製氷皿に、少しだけ氷を作った。イチゴとブルーベリーなら凍っているためすぐに作ることができる。ランチを食べているうちに固まるだろう。
みんなでランチを食べ、ドアの外に人影を見つけ、確認にいくと、案の定並んでいた。
ワインシャーベットは15回作って、312個、ランチで出たのが78個、残り234個だ。店売りに50個を想定して、184個までなら持ち帰りに販売できると思う。
外にいる人数を確認すると36人だったので、すぐに販売した。残り112個販売できる。
しっかり休み15:00に外を見るとやはり並んでいた。
イーゼルにおすすめおやつを書いた板を載せ、お土産だけの客に待ってもらった。
ところが、やはり店内で食べると言い出す人がかなりいた。
それでも買って帰る人が9人。
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おすすめおやつ
オレンジシャーベット 500☆(限定9)
赤ワインシャーベット 500☆(限定50)
できたて!(15分程かかります。持ち帰れません)
スパークリングワインシャーベット(限定56人前)
3.5人前35000☆ 7人前62000☆
持ち帰りシャーベット
オレンジシャーベット 500☆
赤ワインシャーベット 500☆(限定94)
5分以内に真冬箱に入れてください。
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「ご店主!スパークリングワインシャーベットとは、どのようなものですか!?」
「私はあまりお酒が得意でないのですが、お酒が好きな方には絶品だそうです」
「この価格、書き間違いなどではないのですな?」
「はい。これで儲けはほぼありません」
「なんと!」
「この、7人前というのは、いつもの入れ物で7つ分と言うことかね?」
「はい、その通りです」
「では、このテーブルに7人前を!」
「こちらは3.5人前と、赤ワインシャーベット3つお願いする」
「持ち合わせがぁー!わいん、赤ワインシャーベットを2つで」
「二人でも3.5人前注文して良いかね?」
「はい、構いません。取り皿は2つで良いですか?」
「それで頼む」
「あのー、連れではなくても3.5人前頼めますか?」
カウンター席からの注文だった。
「皆さんで了承されていればかまいません」
「では、カウンターに、3.5人前を!」
とりあえず人手が足りなくなった。
「あの、スパークリングワインシャーベットですが、店で作りますか?作ってみたい方いらっしゃいますか?お手伝いいただくと、2000☆引きになりますけど」
「割りきれないからちょうど良いか!作ります!」
最初に言い出したのは、3人で3.5人前を頼んだグループだった。
結局、7人前を注文した席以外、作ってくれることになった。
7人前は席でユメが作り、自分で作る席には、ユリとリラが説明しながら作った。
充填に10p必要です。と言うと不思議そうな顔をされたが、30分しか冷えないので、と説明すると、画期的だと感心された。
持ち合わせがなかった二人が羨ましそうにみていた。
7人前作り終わったユメが、何か言われて厨房へ取りに行った。
戻ってきたユメは小皿を二つ持ってきて、少しだけすくうと、持ち合わせがなかった二人に持っていった。
もらった二人は、分けてくれた紳士に頭を下げてお礼を言っていた。
親切な人だなぁ。
ユリは、頼まれたワインシャーベットを持ってきて、食べ比べるらしいテーブルに出した。
どちらもとても評判がよかった。
スパークリングワインシャーベットの味は、いままでに食べたことの無い幸福感に満たされる味なのだそうだ。
爽やかな青春を彷彿させる甘い想い出の味だった。とか、軽やかな夢を見ている少年の気持ちを思い出す。とか、ワインを語る人って、何でこう詩的なのかしら?
お酒の表現に少年ってどうなの?と思ったユリだった。
店内ではスパークリングワインシャーベットしか食べなかった人も、持ち帰りには赤ワインシャーベットを買っていった。
入れ替わってもワインシャーベットは良く売れた。反対に、スパークリングワインシャーベットは、入れ替わり後は持ち合わせの無い人が多く、ほとんど出なくなった。
まあ、確かに、あり得ないほど高額だしね。
明日分のアイスクリームは、ほぼソウとマーレイが作った。明日提供する前に、きな粉をふるおう。
ソウとマーレイのおかげで残業なしで終わることができた。閉店後食事をして、予約分以外出なかったオレンジシャーベットをみんなで食べて解散になった。
解散後、ユリは、皮付きの豚肉の塊をゆっくり茹でた。




