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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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大作

「リラちゃん、配膳ありがとう」

「少しだけドキドキしました!」


「そういえば、パープル侯爵って名前なんて言うのかしら?」

「たしか、パーシモン・パープルだったかな?」

「ソウありがとう」

「パーシモン・・・柿の木だったかしら?」

「そうだね」


「リラちゃん、背景とか、どこかにしっかり紫色があって、柿の木ってクッキーで作れる?」

「なんとかします!少し大きくなっても良いですか?」

「売る訳じゃないからサイズは構わないわ」



休憩明け、ソウはマーレイとバニラアイスを仕込み、潰さないように冷凍カットイチゴを加え、小さく焼いたパイを添えて仕上げるイチゴミルフィーユアイスクリームを作っていた。パイは提供時に添える。

持ち帰り分は無しである。


「ブルーベリーは中デッシャーでしたが、ミルフィーユは小デッシャーでお願いします。160です。ブルーベリーココット詰めは20・・・終わってますね。

ブルーベリーは5回でしたが、ミルフィーユは3回です」



リラはユメと一緒に黒猫クッキーを作り、ユリがお店に出ていた。


「ご店主!今日のアイスクリームは何のアイスクリームですか?」

「チョコとバナナです。バナナは南国のフルーツです。一緒に食べても美味しいのですよ」

「それは気づかなかった。もう1つもらえるかな?」

「はい、お持ちします」


アイスクリームも好評で、黒猫クッキーは出来上がり次第ユメが売り歩き、ユリは、ユメが店にいるときだけ厨房へ戻り、クッキーを焼いたり黒蜜を仕込んだりしていた。


手の空いたマーレイが器を220個洗い、湯通しもしておいてくれていた。

ユリが大鍋に黒糖20kgを入れているのを見て動いてくれたらしい。

更に、あら熱がとれたら瓶詰めをしてくれると言うので任せた。


ユリは、こんなにも頼れる大人が周りにいるんだと実感し、気持ちが落ち着いた。

ローズマリーが異例の行動をしてまで心配してわざわざ来てくれて、パープル侯爵は、ユリに気遣って自ら馬車を操縦して来てくれて、マーレイだって仕事としてではなくてもユリを気遣ってくれている。


やはり、商店街で騙され味方が居なかった時のことはユリの中でトラウマになっていたらしく、ネモフィラを信用したのに意思の疎通ができていなかったことをきっかけに、過労もあり気持ちが落ち込んでいたのだった。



黒猫クッキーはリラの華ほど複雑ではないので作るのが早かった。たまった鉄板を釜にいれるため、ユメが店番を交代した。


リラは頼まれた大作を作っていた。

リラの華の倍くらいのサイズで、柿がなった木と紫色のリボン、更に4倍サイズで、柿の木とローズマリーとラベンダーとマーガレットを描いた一枚の絵のようなクッキーを作っていた。女性の手に余るサイズである。

ユリはちらっと見て、その凄さに感心しながらも、壊さないうちにさっさと持っていきましょと思っていた。


ソウが買ってきてくれたので、材料の不安もない。

黒糖とブラックココアの生地を仕込み、バタフライピーの生地も仕込んだ。うっかり順番を反対にしていまい、洗い物が増えてしまったが。


生地の仕込みが終わる頃、リラが声を上げた。


「出来ました!ユリ様、焼いてください」


気になったのか、ソウとマーレイも覗きに来た。


「リラ、優秀すぎて凄いな」

「凄いわー!焼いたらすぐに持っていきましょ」

「俺行こうか?」

「一緒に行きたいけど良いかしら?」


ユリはソウに、馬車を操縦してもらおうと思っていた。


「一緒に行くにゃー!」

「お!よし、じゃあユメはクッキー持ってくれ」

「わかったにゃ!」


クッキーくらい自分で持つわよ? とユリは思ったが、ソウとユメでどんどん話が進んでいく。

とりあえず焼きましょうとユリはクッキーを釜にいれた。


クッキーが焼き上がり、運べるくらいに冷える頃、18:00になり閉店した。


クッキーを大皿に乗せ、食事の用意をしようとしたら、ソウにあまり遅くない方が良いと言われた。


「戻ってからご飯にするから、それとも先に食べてる?」

「待ってます。片付けもしておきます」


リラに待っていると言われたので急いで用意をして出かけようとしたらソウに腕につかまるように言われた。


なんだろうと思いながらも言われた通りに腕につかまると、クッキーの皿を持ったユメごと転移した。


ユリはくらっとして目をつぶり、次に目を開けたときにはパープル侯爵邸だった。


ソウはハンドベルを鳴らすと、馴れた様子で椅子に座った。

すぐにメイドが来て頭を下げ出ていくと、間も無く侯爵がやってきた。


「ホシミ様、どうされました?」

「ユリがお礼したいって言うから連れてきた」


あっけにとられていたユリだが、名前を呼ばれたことで気がつき、ユメから渡されたクッキーを侯爵に渡した。


「これ、作ってもらいました」

「これはクッキーか?素晴らしいな・・・」


パープル侯爵は先ほどソウが使ったハンドベルを鳴らしメイドを呼ぶと、家族を呼んできてくれと言っていた。


すぐにローズマリー、ラベンダー、マーガレットがやって来て、クッキーの素晴らしさに驚いていた。

するとユメがマーガレットに近寄り何かを渡している。

黒猫クッキーだ。

あれって、ユメちゃんの名刺なのかしら?

ついてきたサリーや執事にも渡していた。


「さて、渡したから帰るか」

「は、はい」

「じゃ!」


気軽な感じでソウは転移して店に戻った。


転移での移動を予想していなかったのはユリだけだったようで、戻ると「おかえりなさーい」と普通な感じでリラに言われた。


ちなみに家族クッキーは、パープル侯爵は保存したかったようだが、昼間、唯一置いていかれたマーガレットが権利を主張して全部食べられてしまったそうだ。

まあ、お菓子なのだから、鑑賞したあとは早めに食べるのが正解である。

柿の木のクッキーは密かに保存しているらしい。

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